231025モビリティショー6 人は靴、車はタイヤ
■ 料亭の女将は、靴で人を判断
料亭の女将は、靴で人を判断すると言われる。料亭は靴を脱いで上がる。すると女将はチラッと靴を見る。靴はあまり目立たないから、洋服にはお金をかけるが、靴は後回しとなりやすい。
でも、良い靴を履き、綺麗に磨いてあれば、「一事が万事」で、人の評価が決まるという訳だ。
まして、合わない靴だと、足が痛くなったり、足や脚、腰などにも支障がでる。
■ 私はタイヤをみて人を判断
タイヤも同様で、目立たないかもしれないが、極めて重要なものである。
私は仕事柄、交差点で止まった横の車のタイヤを、無意識のうちに見てしまう。溝がきちんとあり、タイヤやホイールが綺麗であれば、車の整備もちゃんとされているだろうと想像できる。
命を乗せて走るタイヤは重要だ。「タイヤは黒くて丸けりゃ皆同じ」と思いがちだが、その性能は選んだタイヤによって相当異なる。
■ 歴史を知れば本質が見えてくる。車輪とタイヤの発達の歴史
紀元前3700年頃、人類は物を動かすのに車輪を発明した。それは移動の世界に大きな進化をもたらした。
私見だが、大昔は、車輪は荷車に付帯した1部品ではなく、むしろ車輪に車体を合わせて造ったとの感を持っている。子供の頃大八車を引いていたことから、そう思うのである。
それが馬車にも使われ、今日の鉄道、自動車等へと繋がってきている。まさに足元を支えているのである。
ちょっと自動車タイヤの歴史を見てみよう。
1495年頃 コロンブスが、西インド諸島ハイチで発見した天然ゴムを西欧に伝える
1835年 ソリッドタイヤが発明される (ゴムのみでつくられた空気の入らないタイヤ)
1888年(明治21年)スコットランドの獣医師J.B.ダンロップにより、空気入りタイヤが実用化。
1898年 ミシュラン兄弟が、自動車に初めて空気入りのタイヤを装着し、自動車競技に参加
1913年(大正2年)英国ダンロップが神戸で、日本初の自動車タイヤ第1号製造
1917年(大正6年)ヨコハマタイヤ 横浜護謨製造株式会社としてタイヤ製造開始
1930年(昭和5年)ブリジストン タイヤ製造開始
■ 構造がソリッド→バイアス→ラジアルへ
当初の車は、ソリッドタイヤを使用していたが、自動車の発達とスピード化によって、タイヤも格段の進化を遂げた。
1968年頃までは、タイヤの構造がバイアスタイヤだったが、スピード化に伴いラジアルタイヤになった。
「バイアス構造」は、カーカスを斜め(BIAS)に配置しているのに対し、「ラジアル構造」は、カーカスがタイヤの中心から放射状(RADIAL)に配置されている。
ラジアル構造は、桶に箍(たが)をはめたようになるので、コナリングでも腰砕けの度合いが低く安定する。高速のスピードでも、タイヤの波打ち現象(スタンディングウェーブ)はほとんど出ない。
■ スノーからスタッドレスへの格段の進歩
雪道用のスノータイヤも進化した。
スノータイヤは雪道では良いが、アイスバーンになると効かない。そこでスノータイヤに金属のピンを打ち込んだスパイクタイヤが登場した。
このスパイクタイヤは氷結路では抜群の性能を示すが、反面、問題も多かった。
雪のない道路を走ると、バチバチとうるさい。金属ピンがあるから乾いた路面では逆に滑り易い。そして一番の問題は道路表面のアスファルトを痛め、そのアスファルトの粉塵を沿線住民が吸うので、健康問題が取りざたされた。
結果、1980年代半ばに、各地方自治体は軒並み足並みを揃えて「雪のない路面でのスパイクタイヤ使用禁止」とした。
実際の雪道を走ると、日陰は雪があっても、陽当たりの良いところは雪が解けている。その都度タイヤを替えるなどというのは、非現実的だ。
では、007のジェームス・ボンドのように、運転席からのボタン操作で雪道に差し掛かったら、スパイクを出し、雪が消えたところではスパイクピンを引っ込める方式も考えられるが、それは映画の世界だけの話である。
するとタイヤメーカー各社は、ピン(スタッド)を省略(レス)しても、スパイクタイヤよりも性能的に上回るスタッドレスタイヤの開発に乗り出した。
しかもこの開発は急がなくてはならない。
スタッドレスタイヤは、特殊な柔らかいゴムを使うので、当初は乗用車に装着しても直進安定性に問題があり、微妙にふらつくので、雪道を走るととても疲れた。
しかしほんの数年で性能は格段の進歩をはかり、快適に走れるようになった。
でも大型トラックやバスには無理だろうなぁ~と、多くの人が思った。
でも、必要は発明の母の言葉通り、スタッドレスタイヤは格段に進歩し、バス、トラックに装着も当たり前になった。
昔のタイヤを知る者としては、隔世の感がある。
■ ヨコハマタイヤブースは、里帰り気分
そして縁あって、私はヨコハマタイヤさんのスタッドレス研修会の主任講師として、全国を廻らせてもらった。
私は、縁の深いヨコハマタイヤさんのブースを訪れると、故郷へ里帰りした気になった。
ヨコハマさん、BSさん、ダンロップさん、その他各社さん、切磋琢磨してよりよき品を開発し、我々の生活向上に寄与して欲しいと願い、ブースを後にした。
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