北海道「静養滞在の旅」 エピソード10(最終回) 嬉しい人の来訪
始まりがあれば、必ず終わりが来る。
長いように思えた「何もしない10日間の旅」もあっという間に過ぎ、帰る日が来てしまった。
10日間が短く感じるのは、楽しかったからだ。
その間、いろいろな人が来訪してくれて、嬉しかった。
その一つが、友子ちゃんファミリーの来訪だった。
何十年ぶりの再会
友子ちゃんは、斉藤夫妻の長女だ。記憶にあるのは彼女が中学生の頃だ。私は友子ちゃんともう何十年と会っていない。でも彼女のことはよく覚えている。
でも彼女は、私のことを忘れているか、覚えていても「そんな人がいたなぁ~」くらいだろう思っていた。
私が滞在しているかもいホッフと、斉藤夫妻の住まいは300mくらい離れている。
私がホッフに滞在中、彼女は家族全員で、札幌から歌志内の実家に夏休みを利用して、里帰りしていた。
友子ちゃんファミリーが里帰りしていたのは聞いていたし、札幌へ帰る日も聞いていた。「一度会いたいなぁ~」とは思っていたが、まさか私から押しかける訳にもいかない。だから元気で暮らしてねーと心で思っていた。
だが、思いがけないことが起きた。
友子ちゃんファミリーが、「茶木さんに会いたい」と言って、ホッフに来てくれたのである。
これにはビックリすると同時に、こんなオジサンに会ってもしょうがないだろうに、と思う気持ちがありながらも、半分飛び上がるくらい嬉しかった。
友子ちゃんをみたとき、昔と変わらぬ爽やかな笑顔で「茶木―さ~ん」と言ってくれた。ただただ単純に嬉しかった。
そして「茶木さんに会わないで、札幌へ帰る選択肢はなかった。だから来ました」とも言ってくれた。
そんなことを言ってくれる人が、他にいるだろうか??? 嬉しさの極致である。
音楽は年齢をも超える
友子ちゃんの娘さんである“ほのか”ちゃんが、私のギターに目をやって近づき「このギター触って良いですか?」と言った。娘さんはギターが弾けるのである。
「勿論いいよ。でも弾くのならちょっと待って。今チューニングして音を合わせるから」と言って、私は昔ながらのチューナーを使って音合わせをした。するとその姿がカッコいいと娘さんが言うのである。こんな白髪のオジサンでも、カッコいいと思われることがあるんだ・・・と、またまた嬉しくなった。
娘さんはジブリの歌が好きらしく、それを弾き語りで歌い始めた。周りも歌う人、ハミングする人で盛り上がる。
私も弾き語りで下手ながらも知床旅情や、津軽平野を唄った。
娘さんの弾く曲にFコードがあった。普通はそれをバーコードという人差し指を立てる押さえ方をするのだが、彼女は違った押さえ方をした。
それで「えっ、今Fコードをどのような押さえ方をしたの?」と訊くと、別の押さえ方をしてみせてくれた。
娘さんは「私は手が小さいので、別のおさえかたをするの」という。
すると、私と娘さんは孫ほどの年齢差だが、二人は共通の話題で話が展開していった。
音楽に国境は無いとはいうが、音楽は年齢も関係ない。そう強く感じた。
時間はあっという間に経ち、友子ちゃんファミリーが札幌へ帰る時間になった。私は会いに来てくれてとっても嬉しかったことを伝え、笑顔で見送った。
旧知の渡辺さんの来訪
現在、かもい岳スキー場の運営会社の専務をされている渡辺君も、私が帰る前日に訪ねて来てくれた。
彼がまだ市役所の職員だった頃、よく一杯飲んだ。彼が新婚旅行でオーストラリアにいったとき、先住民の人が作った棒(音楽用)を2本プレゼントするために、東京まで来てくれた。
それを時々叩いて音をだしていたが、或る時1本が折れてしまった。でも私はそれを大事に持っていた。嬉しい思い出の品だったからである。
そんな話を二人で懐かしく話していたら、高かった太陽も、西に傾き始めていた。
旧交を温め合う嬉しさを感じた。
別れの日、再びジェーさん来訪
2023年8月18日、砂川駅発午前6時40分のJRで私は当地を離れる。砂川駅までは斉藤君が送ってくれる。前日に荷物をパッキングしてあるので、あとは当日シーツ等の洗濯物まとめておくだけだった。
その日の午前5時、思い出に浸りながら、一人で朝食を摂っていると、早朝にもかかわらずジェーさんがホッフに見送りに来てくれた。
ジェーさんの家とホッフは車で5分の至近距離とはいえ、なかなかできるものではない。
こんなにまで歓迎してもらい、人々の温かさに触れた嬉しさが、心の底からと込み上げてきた。
私にとって、世界のどのホテルのスィートルームよりも、この“かもいホッフ”の方が素晴らしい。
それは何といっても、素晴らしい人達との交流があるからだ。
午前6時、斉藤さんやジェーさんはじめ、この滞在で時を過ごした全ての人に感謝しつつ、私は当地を後にした。
「また会いたい」、そんな言葉を胸に秘めながら・・・。
北海道「静養滞在の旅」をお読み頂き、有難うございました。連載はこのエピソード10をもって終わりといたします。
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