内山弘紀のラリー国際見聞録 はじめに
Noteへの刊行によせて
オートライフクラブ(ALC) 代表 茶木寿夫
これは、国際ラリー経験豊富な内山弘紀氏のラリー国際見聞録である。
時代は1970年代~1980年代で、日本人も海外のラリーに挑戦し始めた活気ある時だった。
発刊へのいきさつ
敬愛する著者・内山弘紀氏は、博学多才な紳士である。
そして氏は、物書きのプロである。
その氏に、厚かましくも「私が主宰するオートライフクラブの会報 “ALCだより” に、ラリー国際見聞録を寄稿いただけませんか」と頼んだのは、2011年春のことだった。
「いいですよ」との返事にホッとしていたら、驚きは3日後にやってきた。
氏は連載11回分をたったの3日で書き上げたのである。流石と、舌を巻いた。
その原稿を、2011年6月のALCだより128号から、およそ3年半に亘り連載したが、2015年2月発行の第139回をもって全11回分を終了した。
この間、会員さんからは、「この人は凄い人だ」 「毎回面白く読んでいる」 「この人は一体どんな仕事をされている人?」など、反響が大きかった。
反響が大きいというのは、記事の内容と、氏への関心が高いと言うことだ。
それではと、連載終了を機に一冊の本に纏めておけば、後世の人のためになると思い、そして氏への感謝の気持ちを込めて刊行した。
こうして本になり国立国会図書館の蔵書の1冊となった。喜びは一入で、とても嬉しく思った。
だが近年このNoteが浸透するにつれ、時代に合わせてnoteでもマガジンにして刊行した方が、多くの方に手軽に読んで頂けるのではないか・・・との考えから、ここに掲載することとした。
快く同意して頂いた氏に感謝したい。
内山氏はプライベートラリーストのパイオニア
内山氏は、プライベート・ラリーストが国際ラリーに参加する道を開いたパイオニアである。
それまでは、トヨタの1957年の豪州一周ラリー、日産の1958年豪州一周ラリーや1963年からのアフリカのサファリーラリーへの挑戦があった。それらのラリーに日本人も参加していたが、それはあくまでも会社としておこなっていた一環として、日本人も参加していたのである。つまりプライベーターとしてではなく、メーカーチームの一員としての参加だった。
かてて加えてその時代は、個人が観光旅行などで海外旅行に行くことは法的に出来ない時代でもあった。
1964年(昭和39年)4月1日以降、渡航が自由になった。だがラリーにはおいそれとは行くことが出来ない。
なぜなら、ラリーの場合は、ラリーカーを造る事から始まり、その輸送、現地での引き取り、ラリー中のサービス、部品の手配など、気の遠くなるような膨大な関連作業がある。その分お金もかかる。言葉の問題も大きくのしかかる。
プライベートのラリーストが、それらを全てやろうとすると、どこから手を付けていいのか分からないのが現実であった。
ところが、誰か一人がその壁を乗り越えると、次に続く人がでてくる。その壁を最初に乗り越えたのが、内山弘紀氏である。
氏は日本初の本格的ラリーショップ“アブコ”の創業者であるから、ラリーのことはよくわかっていた。そして英語も解した。
また、日刊スポーツ新聞社の記者時代、海外からの各種のスポーツ選手とも接点があり、国際情報と文化にも造詣が深かった。
ラリーが分かり、英語が使え、国際スポーツ文化に詳しいと、三拍子揃った人物となった。そんな人は当時のラリー界では稀であった。
だから「内山さん、英国RACラリーに連れて行って下さいませんか」とか、「私のナビとして乗ってもらえませんか」とかの声が多く掛かるようになった。
こうして、氏はプライベーターの国際ラリーへの先達となったのである。その功績は多大である。
内山氏の魅力
私は、内山氏と一緒にラリーに出たことは無い。
だが、私は氏にある共通項を感じていた。それは次の4つだった。
私も新聞社にいたこと. (内山氏は日刊スポーツ新聞社、私は日刊自動車新聞社)
乗馬を嗜むこと
立場が違えどもラリーを職業としていたこと
本を著すること
そして氏がビジネス感覚に優れたことにも、大いに魅せられた。
そのような事から、個人的な付き合いが始まり、今日に至っているが、氏を深く知れば知るほど、敬愛の念が深まる一方だ。
考え方の柔軟性、馬術の能力、文章を書く速さと内容の面白さ、講習の上手さ、それらに接するにつけ、私はまだまだだと思う。見習う点、多数ありの心境だ。
と同時に、この人生において、内山氏のようなすばらしい人に出会えたことに感謝している。
氏独特の軽妙なタッチで描いた「内山弘紀のラリー国際見聞録」全11話を、存分にお楽しみいただければと思います。
付則
この本文原稿は、2011年に著されたものです。
記述表現はその時点のものです。それに多少の加筆修正等をおこない刊行しております。
よって現在の各国の交通・政治社会情勢と異なる場合もあります。
敬称は文が冗長にならないように、省略しました。
文言の説明
★ワークスチーム:自動車メーカーが会社の活動の一環としておこなっているもの。ファクトリーチームもほぼ同意語。
★プライベートチーム:個人が自分の責任と費用負担のもとに参加。プライベーターと称するときもある。
★SS:スペシャルステージの略称で、閉鎖された区間の速さを競うもの。所要タイムがそのまま減点となる。
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