231025モビリティショー2 「空へ」HONDAビジネスジェット
モビリティショーに行ったら、HONDAのブースに、HONDAビジネスジェットの胴体が置いてあった。 (上部の写真撮影:関根基司)
多くの人は「実物大の模型」と思ったらしい。私も一瞬そう思いかけたが、係員に聞くと「本物の機体です。翼とエンジンは外してありますが、それを付ければ飛べます」とのこと。
私の飛行機免許で、この飛行機を飛ばすことは可能だ。
だが乗ったことが無いので、どんな感じであるか確かめるのに良い機会と思い、室内に入れてもらい、操縦席にも座らせてもらう運びとなった。
一緒に取材していた旧知の松崎さんは、元定期便の機長であるから、一緒に乗り込んでもらい、感想を訊こうと思った。
今回はモビリティショーなので、移動に関する乗り物全ての観点からも、考えてみたい。
ビジネスジェット機の利点
このHONDAビジネスジェットは、大型の定期便飛行機よりもさらに上空を飛ぶ。
通常の定期便飛行機は高度約3万フィート(高度1万メートル=10㎞)を飛ぶ。
このビジネスジェットは、高度約4万3千フィート(高度1万3千メートル=13㎞)を飛ぶ。
つまり定期便の飛行機より、さらに富士山一つ分、上を飛んでいる。
上空に上がれば上がるほど空気密度は薄くなるので、空気抵抗が減る。だからスピードが出る。
その速さは、最大巡航速度約782 km/h (422 knots)
航続距離は2,265 km(1,223 nm=ノーティカルマイル)
定期便飛行機との大きな違いは、定期便飛行機はルートが決められているのに対し、ビジネスジェットは目的地に直行ルートで飛べることだ。
出発地をどこにするかで変わるが、2200㎞の航続距離があれば、日本全国はもとより、上海、北京、台湾、韓国のソウル等にも無給油で、ひとっ飛びできる。
国際ビジネス会議も、日帰りで十分可能だ。
日本ではトヨタ自動車がこの機を所有し、ビジネスに使っているとのことだ。
ビジネスジェットの良さは、なんといっても速く目的地へ直行できる点だ。そして機内で打ち合わせも出来る。
新幹線のグリーン車や定期便飛行機のファーストクラスに乗っても書類を広げて4人で打ち合わせは出来ない。
だが、 ビジネスジェットはできる。乗る人は高給取りだろうから、ビジネスジェット機は、まさに「タイム イズ マネー」となる。
因みにこのビジネスジェットは、売りだした頃は5億円だったが、今はレートの円安もあり10億円とのことだ。
ビジネスジェット機は、ビジネスツール
では視点を変えて、日本にビジネスジェット機は何機あるのか?
答えは59機である。(国土交通省データによる)
世界で一番多いのは航空王国アメリカで約22,000機。
次いでドイツの783機、英国の525機、フランスの482機、中国の464機、インドの235機と続く。
GDPではアメリカ、中国、日本、ドイツの順になるから日本はGDP第3位。その3位の経済大国日本がたったの59機。
いろいろな角度から考えてみて、日本にもっとビジネスジェット機があってもいいと思う。イヤ、こんなに少ない方が不思議だ。
普及の妨げとなった国民性
いままで日本でビジネスジェットが普及しなかったのは、国民性があると思う。
あんな高いものを飛ばしているのは、社長の道楽だ。だから製品の値段が高いんだ!・・・という感覚があるからだろう。
だから、R社も、S社もビジネスジェット機を羽田空港に持っていても、人目につかないようにしている。(航空関係者の話)
もう、そんな感覚から脱却しないと、国際ビジネスに後れをとってしまう。
現在、日本の労働人口は、6860万人である。
このうち自動車産業で働いている人は550万人。これは全労働人口の8%だ。
(自動車・部品製造資材、販売、運輸など。出展:日本自動車工業会)
モビリティ産業全体では850万人である。これは全労働人口の12.4%にもなる。
(上記の自動車産業550万人に、鉄道・航空・エネルギー情報通信・旅行 などを加えた数字。出展:日本自動車工業会)
https://www.jama.or.jp/library/publish/mioj/ebook/2023/MIoJ2023_j.pdf
この数字が示すように、モビリティ産業は、完全に日本の基幹産業だ。
その基幹産業がビジネスジェットも使わず、定期便を乗り継ぎ、時間をかけて現地についていたら、「時すでに遅し」となってしまう。
ビジネスジェット機の普及を望む。
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