ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡
前置き
今回は日経サイエンス23年2月号の「宇宙新時代」よりジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって分かりつつある初期宇宙の姿ついて書いていきます。
宇宙望遠鏡とは?
有名な宇宙望遠鏡にハッブル宇宙望遠鏡があります。ハッブル宇宙望遠鏡は地上から約600kmの軌道を周回して星々や銀河を撮影しますが、宇宙では大気の影響がないために明瞭な画像を撮る事ができます。このように大気の影響を受けずに撮影できることが宇宙望遠鏡の特徴です。
ディープフィールド観測とは?
1995年12月ハッブル望遠鏡は一見何も見当たらない領域を10日間連続で撮影しました。これは、「普段の測定では見えないほど弱い光の銀河や星でも長時間かければ見えるようになるはずだ」、というものです。
実際にハッブル望遠鏡は”何もない”と思われていた領域に120億年前に形成された銀河を発見するなど大きな功績を残しました。
このように「一見何もないところ」を深掘りすることで新しいことがらを発見をする、それがディープフィールド観測と呼ばれるものです。
ハッブル宇宙望遠鏡の限界とは?
先ほどディープフィールド観測で120億年前の銀河を発見したと書きましたが、ハッブル宇宙望遠鏡は「可視光線」しか観測できないという制約があるため初期の銀河の撮影ができません。
宇宙での観察では「より昔の銀河はより遠くにある」というものと「より遠くからの光は波長が伸びる」という性質があります。このためハッブル宇宙望遠鏡は赤外線まで伸びてしまった銀河の光を観察することができません。
これがハッブル宇宙望遠鏡の限界です。
ハッブル宇宙望遠鏡で観測された最も遠くの銀河は赤方偏移11のGN-z11であり、宇宙年齢で4億年に相当します。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とは?
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は2022年7月に稼働した宇宙望遠鏡です。
この宇宙望遠鏡の開発スタートは1985年にまでさかのぼる事ができます。ちなみにハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げされたのが1990年なので、なんとハッブル宇宙望遠鏡の打ち上げ前から開発がスタートしていたのです。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡が可視光線しか観測できず古い銀河の撮影ができないという課題を解決するために、「赤外線を観察できる」という事をコンセプトに開発が進められました。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がハッブル・ディープ・フィールドと同じような測定をしたところ、赤方偏移20という宇宙年齢1億8千年の銀河を見つけることができました。
更に別の測定では赤方偏移10(宇宙年齢5億年足らず)に天の川銀河と同程度のサイズの銀河を見つけることができました。実は現在の標準的な宇宙進化モデルでは、短期化にこのような巨大な銀河が生まれることが説明ができません。
標準的な宇宙進化モデルでの銀河のできかたは以下の通りです。
ビッグバン3分後・・・ヘリウムなどの軽い原子核が形成され始める
40万年後・・・最初の原子が登場する
1億年後・・・初代星が誕生する条件が整う。
10億年後・・・初代星は集合して原始銀河を形成し、やがて重量で引き合い最終的に合体して大きな銀河になる。
ウェッブ望遠鏡では「合体して大きな銀河になる前の小さな原始銀河がたくさん見つかる」という予測という予測をしていたが、宇宙初期に既に明るい大きくなった銀河が発見されるという結果となりました。
終わりに
このようにジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測を通して今までよりももっと古い銀河を見つけたり、宇宙ができてから思ったよりも早い段階で大きな銀河を見つけるなど新しい現象を発見することができています。
いかがだったでしょうか。今回はジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡についてまとめてみました。
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