【英国LLM留学】Fail(不可)を取った話#1
こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。
ぼくは、2023年にキングス・カレッジ・ロンドンのロースクールを修了しました(LL.M.)。
今回は、タイトルそのままなのですが、とある科目でFail(不可)を取ってしまった話です。
以前のこちらの記事を読んで頂いた方はいますか?
ぼくが成績について、講釈を垂れています。
KCLのロースクールで優(Distinction)を取るのは、手の届かない目標ではないみたいなことを書きました。
今回の話は、「どの口で何を言うねん」というツッコミをくらうようなものですが、これからイギリスの大学院で学ぶ方が同じ失敗をされないよう、他山の石にして頂ければと思います!
落とした科目その①:経済規制と金融犯罪
ぼくは、2学期に、Legal Regulation of Economic and Financial Crime(日本語に訳すと「経済規制と金融犯罪」でしょうか。)というモジュールを履修しました。
実は、入学時の履修登録では選んでいなかった科目です。もともと登録していた電子商取引法が、いざ受講してみるとちょっと思っていた内容と違っていたのとグループワークがキツそうだったのもあり、2学期に入ってから登録変更をして取った科目でした。
ぼくは、KCLのロースクールの中でもLaw & Technologyコースの生徒だったのですが、この科目を担当していた先生が元々そのコースの担当者をされていたこともあり、仮想通貨を絡めたマネロンの話や、市場操作に関する技術的フロンティアの課題など、興味深い話が多かったです。
なぜ落としたのか?
この科目は、5000 wordsのエッセイで100%の評価がなされるものでした。端的に、体調を崩してしまい期日にエッセイを提出できませんでした。
2023年4月初旬、家族で市内の動物園から帰る電車で、急激に気持ち悪くなります。家に戻って熱をはかると39度。そこから1週間寝込みました。
4月中旬になると熱は下がったのですが、依然として体調はすぐれません。むしろ、汗が止まらなくなり、眩暈がして立っていられないような状況になり、高熱が出ていた頃よりきつかったです。
エッセイの提出期日は4月下旬だったのですが、手が震えてまともにタイピングが出来ないし、このままだと提出は無理だろうと思い、病院に頼んで書いてもらった診断書を提出して、大学に延期措置の申請を出しました。
延期が認められるも、一向に戻らない体調
その結果、2週間の提出延期が許可されました。
しかし、延期後の提出期日が近づいても、体調は全く戻らず1文字も書けないまま、期日を過ぎてしまいます。
提出していない以上、点数は付きません。
ほどなくしてFailの通知をもらいました。
ぼくは医者ではないので素人の感想ですが、自律神経がちょっと乱れていたのかなと思っています。知らず知らずのうちに慣れない留学生活でメンタルをすり減らしていたのかも知れません。
結局、原因不明の体調不良は2か月弱も続きました。
最終的になぜ治ったのか分かりませんが、可能性があるとしたら、5月末に家族でベルギー・オランダに旅行出かけたことかもしれません。久しぶりの旅行でリフレッシュしたら、自然と治っていました。不思議ですね。
予約が取れない上に、たらい回しにされるNHS
こうして不可を取ってしまったぼくですが、診断書を取り直した上で再延長の申請を大学に出していれば、許可が出ていたかもしれません。
なぜ、ぼくがそれをしなかったかというと、NHS(イギリスの公的医療)の診察の予定がなかなか取れない上に、いざ診察に行ったら他の病院で検査を受けるよう勧められることが2, 3回続いて、たらい回し状態になってしまったからです。
この頃は、100メートルも歩けないほど弱っており、すぐそこの病院まで検査に行くのも一苦労でした。そのため、最終的には、診断書を得るところまでたどり着けず諦めてしまいました。
やっかいだったのが、ぼくの身体をいくら検査をしても異常が出ないため、「○○であるため、試験を受けられる状態じゃない」という診断書を書くことをお医者さんが躊躇したことです。
もし、ぼくにもう少し語学力があれば説得することも出来たのかもしれません。でも、残念ながらそんなネゴが出来るような体調ではなく、お医者さんは「検査しても異常は見られないから、××病院で△△の検査をしてみたら」と薦めてくるばかりです。当時は、白目になりながら、いろんな病院を梯子していた記憶があります。
ぼくはイギリスに来た当時から、プライベートの病院は利用せずに、NHSのみを使うことを予定していました。
そのため、この体調不良のときも、その自分ルールに従い、NHS通いを突き通しました。でも、もしお金をケチらずにプライベートの日系の病院に行っていれば、診断書のことでもう少し便宜を図ってもらえたかもしれないと思うときがあります。
不可を取ってしまうとどうなるのか?
KCLの大学院では(おそらく他のイギリスの大学院でも)、日本の学部のように不可を取ったら次回以降の学期で別の科目を履修して単位を取るということが想定されていません。
つまり、単位をどれか一つでも落とすということは、(少なくとも他の学生と同じ時期には)学位がもらえないことを意味します。
もし、KCLの大学院で不可を取ってしまい、焦ってネットを検索してぼくのページにたどり着いた方がいたとしても、安心してください!
こちらのKCLの学則(academic regulation)を見てみましょう。
画像をクリックすれば、リンクに飛べるはず。
なお、上記はぼくがKCLに所属していた22‐23シーズンのものですが、23‐24シーズンのものも公表されています。ほとんどの規定が変わっていないと思いますが、気になる方は、最新版を確認するようにしてください。
追試のチャンスがある!
学則4.59には、次のような記載があります。
このcore modulesとは、ロースクールにおいては、修了に必要な科目を言います。おそらく、他のKCLの修士課程でも同じ扱いのはずです。
つまり、不可を取ってしまっても、追試が行われるということです!
わざわざ学則を読み込んだロースクール生なんて、ぼくだけではないでしょうか(笑)
再試験
経済規制と金融犯罪の再試験、というかエッセイの再提出は、8月下旬に設定されました。エッセイのお題はそのまま変更なしでした。
この頃には、2学期の他の試験もとっくに終わっており、修士論文などを残すのみとなっていましたので、余裕をもって取り組めました。
結果は?
無事、粗点は70点ちょうどで、ギリギリでDistinction相当の評価を得ることができました。しかし、再試験で得られる点数は50点のキャップがかけられています。
そのため、ぼくの成績は、50点(Pass)となりました。
残念でしたが、自律神経がヤバかったときのことを思えば、再試験日までに体調が回復しただけでも良かったと思うようにしています。
教訓
ぼくがお伝えしたいのは、次のことです。
ここまで読まれて、気づいたがいるのではないでしょうか。
経済規制と金融犯罪は、落とした科目”①”に過ぎないことを。
そうです。実は、ぼくには、落とした科目②があります。経済規制と金融犯罪の場合は、体調管理の不十分さに落ち度はあれど、まあそういうこともあるよね、と言ってもらえる失敗談かと思います。
しかし、落とした科目②の方はちょっと笑えない失敗談であり、長くなりそうなので、記事を分けようと思います。
ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。
#2については、1週間後ぐらいにお届けできると思いますので、よければ、また読んでください。
イギリスの大学院への留学を検討しているどなたかの参考になれば、とても嬉しいです。
弁護士のイギリス留学に関するいろいろなことを書いています。
よければ、ぜひご覧ください!