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選ばれる本、選ばれない本

年末になると、様々なジャンルで「今年のランキング」などが公開されます。出版業界も、もちろん例外ではありません。リアル・オンライン問わず、書店で読者に選ばれた本が、燦然と光輝きながらランクの上位に誇らしげに並び立ちます。売行のランキングだけでなく、他にも、例えばプロの手によるセレクションもあります。普通に読んでいるだけでは気がつきにくい輝きを秘めた本や、時代の中で必然性を持ち未来の必読書と成り得るような本。そんな本が、読者との出会いを待って並びます。

よく出来たランキングやセレクションは、実際に読まずとも、眺めているだけでも楽しいです。売れてるランキングを見て「なんでこんな本が売れてるんだ(言外に、こんな本よりもっと売れてしかるべき本があるはずだ、といった意識があるからだと思います)」みたいなことを仰る方でも、一年を振り返るような売行ランキングを見ると、そこに時代の息吹や空気みたいなものを感じて「なるほどなあ」と唸ることも少なくないはず。

書店の棚や平台にも似たようなものを感じます。特に個性派と呼ばれる書店では「品揃え」は、まさにセレクションの妙とも言えるもので、お店にファンがつくのも分かる気がします。それとは別に、大型店の店頭、特に店内の陳列のメインとなる売れ筋を集めた平台などは、「今が旬」のイキの良さがあり、これもまた楽しめる方は多いはずです。

最近は、オンライン書店も、TOPページでの新鮮さや、特集などによる「品揃え」を演出するために工夫を凝らしてきました。以前から言われている「検索に強い」「オススメなどで関心のつながる本への誘導」などだけでなく、リアル書店の良さを取り込もうとしているのを感じます。そのうち、AIで「あなたへのオススメ」とかも始まるでしょう(リアル店舗でもAIでのオススメは実験を開始しているようです)。

さて、ここまでが前振りです。長くてすみません。

様々な理由で選ばれる本がある、ということは、選ばれない本がある、ということでもあります。

ランキングやセレクション、他にも例えば様々な受賞作品、そうやって「選ばれる」本は、よく考えてみると、年刊七万点と言われている沢山の本の中の、ごく一部です。本当に、ほんの一部。その他の「選ばれない」本は、そういうところで光を浴びることがありません。選ばれない、ので。

大きい話をすると、出版社というのはあらゆる意味の「選択」という機能と切っても切り離せません。出版社は著者を選んで執筆を依頼します(自費出版は別です。念のため)。印刷会社を選んで印刷・製本。流通に際しては逆に取次や書店や図書館に選ばれる立場になります(大手は別。これもいちおう念のため)。そうして選ばれ並んだ先で、読者に選ばれ読まれます。出版されているすべての本を読み尽くせる読者はいません。七万点ですから(速読術なら、とか無しね。念のため)。

最大の選択者は、やはり読者です。選びに選び抜かれた個性的な品揃えの棚の前で、読者は悩みに悩んで選びます。一冊になるか、数冊になるか(棚全部とかアラブの大富豪みたいなのは……、念のため)。

そうして選び抜かれた本が、読者に「面白かった」でも「役に立った」でも「勉強になった」でも「蒙が啓かれた」でも、とにかくなんでも「何かが残った」と言えるような本であることを信じて、出版社で働く人間は、本を作り、売り、知らしめているはずです。

さて、ここで冒頭に戻ります。一年の締めくくりに盛り上がるランキングですが、多くの本はそこに載りません。世間の印象に残るぐらい売れるというのは、本当に大変な話です。また、渋いセレクションも、かなりの狭き門と言えるでしょう。

本の洪水の中で、発見してもらうとか選ばれるというのは、非常に困難な時代になりました。書店店頭で入れ替わっていく新刊の七万点での競り合いだけじゃないんです。過去の名作は図書館で読めます。電子化されて再び息を吹き返したり長く売れ続けたりということもあるでしょう。Webで無料で読めるコミックや小説も増えています。それら全ての場合において、本は選ばれ続けています。それは、まったく同時に、「選ばれない本」も常に発生しているということでもあります。

まわりくどくてすみません。結局、何が言いたいかというと、「ランキングやセレクションに選ばれない本も沢山あるよ」と言いたい、のです。わりと声を大にして。

で、そういう本の中にも、「本当はもうちょっとなんとかしたい」という本があるはずなんです。「実はこれ、オススメなんだよ!」って言いたいというかなんというか。

ということで、昨年に引き続き、「出版社が悩んで選ぶ今年のオススメの一冊」を集めた「我が社の一冊 2017」というのをやっています。ぜひ、ご覧ください。面白いですよ。

我が社の一冊 2017
http://honno.info/wagaichi/

※「我が社の一冊 2017」ですが、決して「選ばれなかった本の敗者復活戦」ではありません。「今年の我が社の一冊はこれだったなあ」という意味でのセレクションです。出版社の参加はまだまだ受け付けておりますが、「我が社の今年の一冊と言えばこれだけど、売れちゃった(話題になった)からなあ」と言って遠慮することはありません、「売れた」「話題になった」本も堂々とオススメしてください。というか、むしろ、そういう本こそ参加して。よろしくお願いいたします。

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