Facebookで、「出版社の営業による書店店頭の「場所取り」に意味がなくなってきているのでは」という意見を見かけて、感じたことを書こうと思ったら長くなったのでこちらに上げます。場所取りが有効に思えないのは、書店という流通チャネルでの売上が足りなくなってきたということなのではないかと思うのです。
Facebookで、「出版社の営業による書店店頭の「場所取り」に意味がなくなってきているのでは」という意見を見かけて、感じたことを書こうと思ったら長くなったのでこちらに上げます。
自分は「場所取り」は相変わらず有効だと考えています。場所取りが有効に思えないのは、書店という流通チャネルでの売上が足りなくなってきたということなのではないかと思うのです。そのうえで、以下のように考えています。
1.広い範囲で売れるアイテムを扱ってきた大手出版社は、書店減少の影響をもろに受けていますが、場所取り(店頭での露出のための充分な施策)をしっかりと行ったところで、それで確保できる売上では足りないという状態になりつつあるはずです。矛盾するようですが、「店頭での露出を確保し続けるための継続的なアイテムの供給」のために、一点あたりの刷部数が減り、「会社としての露出は確保できているが、アイテム毎の露出はむしろ減っている」という現状も(このあたり、ネット作家の「大手から出したのに売れなかった」的な怨嗟の声とも絡んできている問題かもしれません)。
2.書店以外のチャンネルで期待しているような大きな売上を確保するのはなかなか難しいと判断した中堅どころ(雑誌持ってないところ、と考えていただければ)は、むしろ「場所取り=店頭での露出確保」に力を入れ、一定の効果を上げています。ミリオンまで届かずとも書店店頭でしっかり売れているのはこのあたりです。それでも、「書店ルートでの売上だけでは足りなくなる」「ヒットが出ないときつくなる」という危機感は、かなり強く持っているので、書店ルート以外に大きな利益を生み出す何かを模索しているようですが、なかなかこれといった手を見つけられていないのが現状かと。
3.大手・中堅の「場所取り」に押し出される形で店頭での露出が減った専門出版社の多くは、図書館に活路を見出そうとしています。ご存知の通り、図書館の数は増えています。が、購入予算はどうでしょうか。それと、ここにもじんわり「書店以外の売上を模索する中堅どころ」が浸透しつつあります。絵本とか急に出したりしてるのって、あれ、図書館狙いですよね(あと、児童書は唯一店頭でなんとかなっているジャンルなので、今まで以上にチカラを入れ始めた書店チェーンが増えているという事情もありますが)。
3’.専門出版社の一部は、電子書籍に活路を見出そうとしています。が、専門の中でも学術系の出版は「オープンアクセス」つまり、無料での公開の影響を受けつつあります。インターネットやWWWは、そもそも論文の無償公開にはうってつけというか、そういうものをめざして発展してきたという歴史もあるので、このあたりは必然的な流れなのかもなあ。個人的には知の共有が無償で行われることに反対はないのですが、出版社で働いている人間としてみると無償での共有は怖いですね。根っこが善意だし正しいし。多分、一番怖い。
4.以前から活動していた小零細出版社の多くは、上記の流れを受けて店頭での露出を確保できない状態が続いているために、書店店頭という市場での存在感が薄れつつあります。もう、全然ですね。そのため、紙であれ電子であれ宣伝であれネットの世界に活路を見出そうとしているところが少なくありません。ですが、それは一歩間違うと大手のオンライン書店に依存することになりかねないうえに、今まで以上により直接「読者」に対して働きかけるということが必要なんですが、皆、そんな難しいこと簡単にできると思っているのか?
5.最近活動を始めた小零細出版社の多くは「店頭に置かれない」「図書館が買ってくれない」「(予算の問題で)媒体に広告を出さない」が前提となっています。だからこそ、「置いてくれる書店」などでの細かい売上を積み重ねることに敏感で、手売りイベントやネットでの露出にも積極的です。草の根的な販売手法は、ある意味、先祖返りなのかも知れません。けどなあ、「好きだからできる・やる・がんばる」の世界になりつつあるのは、ちょっとどうかなあ。そう思うのは、オレが仕事あんまり好きじゃないし怠け者だからかも知れないけど。
後半、感想とボヤきが含まれていますが、こんな感じです。