"The Top 10 Publishing Trends for 2024"を読んだ感想
こちらの記事を見ての感想です。
自費出版やセルフパブリッシングのオーサー向けの内容ではありますが、自分が最近考えたり実行していたことに近くて唸るというか「結局(規模は違っても)みんな同じようなこと考えてんだな」と笑いそうになりました。
以下がこの記事で挙げられている項目です。(DeepL翻訳)
1. 品質がこれまで以上に重要に
2. 作家はブランドとコミュニティを築く
3. プロモ・スタッキングがスタンダードに
4. 人工知能が書籍マーケティングに採用される
5. TikTok広告市場の成熟
6. 著作権保護と不正防止がより重要に
7. 作家は長期戦に再注目
8. サブスクリプションモデルの人気
9. ソーシャルメディア上で論争が続く
10. 統合が進む出版業界
この一覧を見てとりあえず「プロモスタッキングって結局なに?」と思ってもう少し調べてみたら、「単品(もしくはシリーズ)について掲載期間の短い広告を様々な媒体で同時多発的に運用すること。主に(販売)ランキングを上げることを目的とし値引きと組み合わせて行うことが多い」とありました。
これ、自分は昨年末に同じようなことを考えて勝手に「分散広告」と呼んでいました。分散投資ならぬ「分散広告」。自分が取り組み始めていたのは動画媒体ですが、「複数媒体に一気に掲載することでリーチを最大化する」よりも「媒体ごとに異なる特性を持つユーザーに働きかけることで『ここがダメでもここではイケる』を作りたい」という気持ちからの取り組みです。なので分散広告。実際、動画媒体ごとのユーザー層はかなり異なるようです。
直接的なセールスではなく認知の拡大による何らかのランキング上昇的な効果を狙っているところもまさにでした。TikTokなどの動画メディアになんとかねじ込むのもしかり。ロングセラーを引き揚げたいというのも別項目に合致。
リンク先の記事では「オーサーの皆さんはうちのサービス使うと簡単だよ!」みたいなことも書いてありました。確かに小規模の広告を同時多発的に多方面で展開する(分散広告(プロモスタッキング))は、正直面倒です。予算的にも限られるだろうしクォリティも言い出すときりがない。新刊でドッカンドッカン売れているものを押し出すならこんな面倒なことをやる必要はなくて金と手間をかけてマスにドカンと働きかけたらいいわけで、そもそも分散広告(プロモスタッキング)は低予算低クォリティが前提になるはずです。自分の作品に思い入れのある著者で「金なら出す」なら別かもしれませんが。それも限度はあるでしょう。
となると、低予算低クォリティ省エネ(効果もかなり小さめ)を前提に実施するしかありません。分散広告(プロモスタッキング)とはそんなもんだと割り切れるか否か。
ここで触れておかねばならないのが、低予算低クォリティ省エネを実現可能なアプリ(サービス)です。要は広告や動画を作るのにAdobeのソフトを使わないという選択。つまり、Canva一択ということになります(私はCanvaからお金をもらっておりません)。
Canva、画像だけの時は特に魅力を感じなかったんですが、(低クォリティの)動画制作に取りかかってみると有り難みを痛感しました。FacebookのリールやYouTubeのショート動画やTikTokでよく見かける低クォリティ量産動画はどのツールを使って作られてるんだろうと思ったらCanvaでした。めっちゃ簡単です。フリーの素材はあんまり多くないけどそれでもサクッと使えるので本当に助かります(くどいようですが私はCanvaからお金をもらっておりません)。そういえば「副業で稼ぎましょう、動画編集とか」の動画編集激安副業(一本作って3千円とか)もCanvaでした。低予算低クォリティ省エネ大量生産には欠かせないサービスになっているようです。こう書くとひどいサービスにも聞こえるかもしれませんが、最低限のクォリティはクリアできます。なので使われているのだと思います。ちなみにデザインのプロも素人も「つるはしを売る」方向に舵を切ったみなさんが一様に「いい感じで」というのは面白い発見でした。確かにCanvaで作るといい感じに仕上がるんですよ。いい感じ。
記事の感想に戻ります。
記事の別の項目では、TikTokがメタ(Facebook・インスタグラム)・アマゾン・BookBubに対抗できる媒体になるのではないかといった視点が紹介されていました。TikTokの重要性と可能性について異論はないのですが、ここで重要なのは対抗馬として挙げられている、メタ(Facebook・インスタグラム)・アマゾン・BookBubです。
まず、BookBubってなんだということでまた調べます。ChatGPTによると以下の通りです。
BookBub is a service that provides readers with personalized deals and recommendations on ebooks.
要は読者と本との出会いを生み出すためのサービスとのこと(無料のサービスという意味合いも含まれるようです)。そういう意味では自分が動かしている近刊検索デルタなどもBookBubなのかもしれません。国内の例だと出版社が実施しているnoteでの試し読みなども範疇に含まれそうです。どちらかというと電子書籍向けのサービスといった趣ではありますが、紙電子問わず「書店」というタッチポイントの減少が止まらない日本でも似たようなテーマへの関心は高いのではないでしょうか。その割にここに向けたプロモーションという話はまだなのかもなあ。
それはともかく、気になったのは他のふたつです。やっぱりメタ(Facebook・インスタグラム)とアマゾンなんだ。なるほどなあ。
まず、先にアマゾンですが、これは本に限らずここ最近より重要になってきた「リテールメディア」としての意味合いを含んでいるはずです。つまり小売(マーケットプレイス)としてだけではなくメディアとしてのアマゾンの重要性です。実際、日本でもアマゾンへの出稿を考えていたり増やしていたりする出版社は多いのではないかと。アマゾンに広告を出すということは書店のメタファーで言えば「平台に並べてもらう」とか「レジ前に積んでもらう」に近い意味合いになります。しかも案外安い。なので、これはよくわかります。
もうひとつのメタ(Facebook・インスタグラム)です。インスタグラムはともかくFacebookはどうなのかと思う出版関係者は少なくないはず。なんかこうユーザー層も新聞並みに高齢化してるしどうなんだろうねという感じ。
ですが、一歩引いて考えてみると日本人の平均年齢はそろそろ50歳に近づいているわけでユーザー層が高年齢化するのは新聞もFBも必然といえば必然です。若い人がそもそも少ないのです。そのうえで、40歳50歳で老眼の読者層をターゲットにしないといけない、そう考えると新聞もFBもその層がターゲットなら悪くなさそうです。ただし、ユーザーが絞り込まれすぎて老若男女幅広い層に働きかけられないという意味ではまったくその通りです。ネット広告の悪いところというか苦手なところですが、絞られ過ぎなんですよね。新聞はまだもう少し幅が広そうなのでマスに訴えかけたい出版社が新聞広告から離れられないのはわかる気がします。蛇足ですがLINE広告は絞り込みが苦手な代わりにユーザーが老若男女に幅広いので思いがけない効果が得られそう。昨年試して「これは昔の新聞の反応に近い」という手応えを感じました。いい感じ。出版物の単品広告が効くかどうかはともかく、新聞広告の代替候補としては有りかもしれません。
また記事に戻ります。
「品質がこれまで以上に重要に」についてもまったくそうだと思いました。「書店の店頭で手にとって選ぶ」という機会が減ってくると今まで以上に評判やランキング等が重要になります。それは力技で店頭に並べる以上に難しいはずです。電子書籍の販促の苦労を見ていると実感します。同時に今までにないプロモーションの手法や媒体も出現しています。とはいえ、最後は「品質」、これなのかなあと改めて強くそう思います。熱意や関係性で売れない本を市場に飽和させて売上を最大化するといった手法はこれからますます難しくなることでしょう。私自身も肝に銘じないといけません。
蛇足です。noteの見出し画像はCanvaやAdobe ExpressのAIを使って作成できるようになっています。そうなんです、CanvaではAIを使えるのです。「AIを使って〇〇のポイント動画を100本作る!」みたいなハウツーではCanvaを使っていることが多いです。そういうレベルでの低コスト低クォリティ省エネ大量生産が可能なサービスなんですよ。これに高クォリティで対抗するのはキツイと思うなあ。なんかこう色んなことが変わりそうです。というか変わっています。そして、「広告宣伝は低コスト低クォリティ省エネ大量生産でいいから商品そのものは(かけられる範囲の)手間暇金かけて高品質をめざしたい」ですね。心の底からそう思います(かけられる範囲を越える過剰な手間暇金は普通にダメだと思います。何事にも限度はある)。
※見出し画像はChatGPTに描いてもらったBookBubのイメージです。
※自分がCanvaでちまちま作っている低クォリティの短い宣伝動画はこんな感じです。全然見られてません!