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経営の神様、その存在を信じるものは救われる
私が20年に渡るサラリーマン生活に別れを告げて、独立した26年前、
その独立を後押しして頂いたというか、私が展開する製品の製造委託先の
K社長とは時間があれば杯を交わしながら色々な話を交わしていた。
K社長は私より一回り以上歳上。
昔は全国的に有名になった健康食品を取り扱って、社長として一世を風靡していたらしい。
しかしながら、何らかの法令違反で製品の一斉回収に会い、天国から奈落の底へ。
奈落の底から這い上がりつつあった頃、私が勤務していた会社に売り込みを掛けその時対応したのが私だった。
沢山ある売り込みがある中で、K社長の売り込みもその中の単なる一つに過ぎないと思っていたが、何回か会う内にその話術というか技術的な知識、研究者との人脈の多さなどに触れ、段々と引き込まれる私がいた。
ただ、K社長の存在が私の中で単に大きくなっただけで、それが当時の私の会社のビジネスに結びつくことは無かった。
出会いから2−3年後、ひょんな事から私の独立のきっかけとなった製品作りに関してK社長の存在を思い出し、連絡を取った所からまた新たなお付き合いが始まった。
連絡を取った時、K社長は新しい会社を立ち上げ、自分より遙かに歳上の研究者を社長にして自分は専務として実質の経営を行っていた。
私としてはK社長の会社の技術を利用して独自の製品を展開したかったので話は早かった。
製造委託契約を結んでから、私は私の研究者としての知識を存分に活用し、
販売先を確保して独立後直ぐに業績は伸びていった。
私の会社の伸びに応じて、私からの発注が主であったK社長の会社も伸びていった。
その頃のことだ。
何かに理由を付けて銀座の料理店で杯を重ねていった。
杯を重ねる度にK社長からは遊びから仕事、経営、所作振る舞い・・に至るまで色々な事を学ばせて頂いた。
その中でも最も大きな教えは、「経営の神様」が存在するという話だ。
K社長は程良く酔っ払った時には必ず、赤ら顔ながらもしっかりした口調で
「都坂さん、、経営をしていると必ず経営の神様が現れてくるんだよ。
経営が順調なら順調な程、経営の神様は調子に乗るなよ!と言ってコツンとする。
経営に行き詰まったら行き詰まる程、経営の神様は救いの手を差し伸べてくれる。」
と私に熱く語ってくれた。
恐らくK社長の長い人生の中で実際に学んできたことなのだろう。
その後、K社長は急逝されてしまったが、以来私の経営人生の中で、何度も経営の神様が現れて、ある時には「調子に乗るなよ!」とコツン、ある時には「ほら、この新しいハシゴを上がってみなさい。」と手を差し伸べてくれた。
今現在の私の状況を顧みると、いつ経営の神様が現れてコツンとされるか分からない状態だ。
調子に乗りそうな我が身を諫めて、コツンとしてくる神様が現れないようにしたいと考える日々である。