俺に会いにゆく。
12月27日,2019年,鎌倉−。
一本の電話とその後のたった一通のやりとりで、京都行きが決定した−。
あれから1年−。
12月26日,2020年,神戸−。
年末年始はどこもかしこも混雑するので『年末年始』っぽく過ごさないのが好みの俺。というのもあるし、王様の権威を示すために日にちを引っ越したりなんだりして各月の数字がバラバラになったグレゴリオ暦になんの未練も期待もないので、ふつーに過ごすというのが、私の例年の習わしである。
今年はというと、今ままでの『年』とは全然違う時間を過ごしたために、急速に変わった自分のフィーリングをフィールするべく、年末年始感も出しつつお出かけしようと思い立ち、すでに神戸にいる。晴れていて気持ちいい。というか、布団を乾かせるので嬉C。
9時に出社して17時に退社をする。そんな生活を繰り返していたら、去年までの自分をすっかり忘れた。一晩眠れば大抵のことは水に流せる性格というのは、つまり、忘却のセンスが良いということだ。他人から自分の話を聞くのが面白かったりする。そんな自分なので、今回の、【俺に会いにゆくツアー】に至った。
過去に訪れたことのある場所へ行くと、風景や匂いや音がトリガーになって記憶が蘇る。ゆっくり思い出すんじゃなく、スイッチでパッと点くライトみたいに、一瞬で思い出す。何をやっていたかも、何を感じていたかも思い出す。各地に過去のセーブポイントがあって、其処に行くと、セーブしていたデータが取り出せる。そんな遊び。そんな治療。
この一年は、卒業生と新入生の狭間だった。卒業したあと次に入学するまでの、あのそわそわ感のようなものを胸に抱き続けた。義務教育を終え私立高校に通って3年、フーラフラして2年、会社に勤めて2年、裏社会人として社会に漂泊して7年、そして、今年の1年。
(違ったなあ、今年は本当に違ったなあああ。あのビジネスホテル大嫌いの俺が、結構好きになっちゃうくらい違ったなあああ。あと太ったなああ。)
まとめ
例年と異なる1年を京都で過ごし終えた嘉向徹(30才)は、胸に抱き続けた違和感を柔和に感じるべく、車を走らせる。昨年の今頃は大量のお米を渡すために列島を横断し鹿児島は種子島を訪れていた。あの時の自分、どんなこと考えてたんだっけかなあ。思い出すということは、今思うということだ。1年カンパニーライフを送った自分に、お疲れ様を込めて、ざっくり南へ。
(「お礼と言って渡していただけたら」って、手渡しだと思ってたんだな俺...)