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【往復書簡】思いの果て

約一年寝かせた手紙を読み返し、書く。

彼がSNS上から姿を消して、約三ヶ月が経った。すっと身を引いた様は、ネットでの姿形など、もともとないようなものだと思わせる。夏が現れるのと同時に春が消えゆくように、それはとても自然な流れであった。

前のやりとりから1年の時が経ち、私は北斗の拳ではなく、花の慶次〜雲の彼方に〜を読んでいる。命のやりとり、それは寸分の違いで生き死にが決まること。生きるだけが人生じゃないさ、と戦国の世を描いた漫画である。

保科さんがサムライっぽいのをいいことに、漫画を読みながらよく重ね合わせている。

「生きるだけ生きたら 野垂れ死にます」とか「利いた風な口を聞くなぁ〜!」とか「天下人は天が決める」とか「死すべき時死ねぬことはつらきことよ」とか「鉄砲で殺すには惜しい男よ」とか「戦さ場にて相間見えようぞ」とか、こんなセリフは保科さんが言うに違いない、と。


さて、夏の甲子園が佳境です。昨日付けで、高野連が大会運営費用を集めるクラファンを発表。会長から「高校球児の夢の実現を果たすために、力をお貸しください」とメッセージが。やはり、夢を駆ける少年と、ルールを守るオトナたちの間に大きな溝があるように思えてならない。力を出すことを抑えているのはオトナだろう。

球児たちにも他のやりよう、力の出しようはきっとある。でも、それでもと一心不乱に追いかけた甲子園だ。あの場所が彼らにとっての思いの果て、ある種の死に場所なのかもしれない。

選択肢の少ない方が幸せだと、これしかないと思えることが喜びだと言ってきて、今日。俺はいくつかの場所を行き来しながら、いくつかの暮らしを片足ずつ突っ込むようになった。支えが増え安定かのようなそぶりもあるが、それと同時に熱情もまた分散している。

保科さんはどうかな。より一層の一点集中を、より一層の一点突破を胸に、戦さ場を駆けているだろうか。

この夏、40日の夏休みを敢行する。果てたき場所を再確認したいと思う。

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嘉向徹28歳、11月24日生まれのサジタリウス。推薦で受かった大学を入学前に自主退学。以来、数々の職業的なものを転々とし、目下人生勉強中。好きな言葉「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」。心身ともに至って健康。愛車のハンドル握り今日もゆく。