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NY駐在員報告  「イントラネット(その2)」 1996年5月

 先月に引き続き「イントラネット」について報告する。

グループウェア

 組織内あるいはグループ内の情報を共有し、メンバーのコミュニケーションを円滑にすることによって生産性を向上させようという発想は、イントラネットに始まるものではない。グループウェアと呼ばれるソフトウェアの狙いは、まさにそこにある。ロータス・デベロップメント社のNotesやノベル社のGroupWise、マイクロソフト社のExchangeなどがグループウェアの代表的な製品だ。
 4カ月前のレポートで、グループウェアを「グループが一緒に働けるようにデザインされた情報システム」と紹介したが、その定義を明確にすることは難しい。同じようにグループウェアと呼ばれていても、製品によって備わっている機能は異なっている。したがって、万人が納得する定義はないと考えた方がよい。
 そうは言っても、そこには共通のアイデアや特徴がいくつかある。まず第一にグループ内の情報を共有する仕組みを持っていることであり、第二はグループ内のコミュニケーションをサポートする機能があること、そして第三がグループ内の共同作業、調整を容易にすることを目的にする機能を備えていることである。これらの機能を実現しているのが、電子メール、電子掲示板、電子会議システム、グループカレンダーと呼ばれるようなスケジュール調整ソフト、定型的な事務処理を自動化するエレクトロニック・フォーム、ワークフローなどのモジュールである。

 パーソナル・コンピュータは、個人の知的活動を強化・拡張する道具として生まれた。もちろん今のパソコンは、ユーザの代わりに何かを考えてくれるわけでもないし、レポートを自動的に書いてくれるわけでもない。しかし、利用法に習熟すれば、明らかに紙と鉛筆と電卓で仕事をするよりはるかに能率はよくなる。パソコンは個人の知的生産性を向上させる道具である。このパソコンがネットワークで相互に接続されると、今度はグループの生産性を向上させる道具になる。一般的に、仕事は個人の中で完結するものではなく、様々な形で同僚、部下、上司と情報のやり取りを伴う。打ち合わせ、会議、伝言メモ、レポート、電話連絡などが情報交換の場や方法になっている。これらの中で、電子化できるものを電子化してしまえば、グループとしての生産性は向上するのではないか、そういう発想がグループウェアの原点である。つまり、グループウェアとは、ネットワーク化されたコンピュータをグループとしての生産性向上の道具にするためのソフトウェアなのである。

 グループウェアに使われている基本的な技術はそう新しいものではない。10年前、あるいは20年前でも似たようなシステムは構築可能だっただろう。では、なぜ最近になって急にグループウェアが注目を浴びるようになったのだろうか。理由はいくつか挙げられる。まず、ネットワークというインフラが整備されたこと、パソコンなどのハードウェアの性能が向上しかつ価格が安くなったこと、ロータス社やノベル社などグループウェアを供給している企業による宣伝効果やグループウェアを取り上げる新聞雑誌の記事の増加などである。しかし、最大の要因はやはり、競争力強化のための組織のダウンサイジング、リストラ、リエンジニアリングの流れにあると思う。グループウェアは、組織改革のツール、ホワイトカラーの生産性向上の鍵として登場したのである。

グループウェア vs.イントラネット

 マイクロソフト社がこのグループウェア市場に参入したことによって、グループウェア市場を争う役者が揃ったと言えるだろう。しかし、注目されているのは、グループウェア製品同士の競争よりむしろグループウェアとイントラネットとの戦いにある。多少の異論はあるだろうが、グループウェアが提供するほとんどの機能は、イントラネットで実現できる。

 何人かの専門家は、Notesのようなグループウェアは、かつてのメインフレームによく似ていると指摘している。グループウェアは、特定のメーカーの技術でできており、高機能だが複雑になりすぎた製品だからである。この類推では、イントラネットがメインフレームに対するクライアント・サーバー・システムである。つまり、特定のメーカーの技術(グループウェア)は、競争の激しいオープンな技術(イントラネット)には最終的には勝てないという結論になる。たとえば、96年1月13日号のエコノミスト誌の"Enter the Intranet"という記事には、「今や多くの人がNotesは死んだと信じている」という刺激的な文すら登場する。

 もちろん、まだNotesは死んではいないし、この市場に参入したばかりのマイクロソフトも積極的にExchangeの売り込みを行っている。また、ノベル社は96年8月に最新版GroupWise5.0を出荷する予定にしている。ロータス社はイントラネットとの競合を否定し、現時点で約350万人いるとみられるNotesのユーザ数は、97年までに2000万人を超えると予測している。しかし、ロータス社が記者発表の際に何を言おうと、イントラネットを競争相手として意識していないとは思えない。たとえば今年の初めに発表された最新版Notes 4.0のサーバー側のソフトにはホームページを作成するためのInterNotesが無料でついてくるし、夏までにはJavaを取り込むという計画もある。また、Notes4.0のクライアント側ソフトの価格を155ドルから69ドルに引き下げたのはインターネット用のブラウザに対抗するためだとみられている。ちなみに、この値下げによって、平均的な企業におけるNotesの導入コストはユーザ1人当たり約200ドルから約120ドルに下がったと考えられている。

 グループウェアとイントラネットをめぐる議論には様々な意見がある。まず、グループウェア擁護派の意見をみてみよう。主な意見を挙げると次のとおりである。

「セキュリティ面でIntranetは劣る」
「更新が頻繁に行われる情報の共有はWWWでは難しい」
「現状では特定業務にあったアプリケーションシステムを構築するならNotesの方が優れている」
「グループウェアにはイントラネットで提供されないリプリケーション機能などの機能がある」

 これに対し、イントラネットを支持する意見は次のとおり。

「グループウェアは高くて使いにくい」
「イントラネットの方が構築が簡単」
「イントラネットはプラットフォームを選ばない」
「イントラネットの技術の方が進歩が早く、安くて使いやすく機能の高い製品が生まれてくる」
「イントラネットであれば、他の優れたソフトに簡単に乗り換えられるが、グループウェアだと他のソフトへの乗り換えが困難である」

 この結果、良識的な専門家は「単純な情報共有と電子メールならイントラネットを、複雑な業務処理アプリケーションの開発まで考えているならグループウェアを採用すべきだろう」という意見か、「用途に応じて両方を使いこなせばよい」という意見になる。両方を使えばよいというのはあまりにも安易な意見だと思われるが、実際にそうしている企業もある。産業用電子機器の流通業者であるMarshall Industry社はNotesとイントラネットの両方を利用している。Notesのユーザは約1000人、イントラネットのユーザも数百人いる。

 この対決は、どうなるのだろう。グループウェアはインターネット技術との融合を図りつつあり、一方のイントラネットはグループウェアの機能を取り込みつつある。例えば、前述のとおりNotes4.0にはWebのホームページを作ることができるInterNotesがついてくる。一方、ネットスケープ社は95年にグループウェアを開発していたCollabora社を買収して、グループウェアの技術を吸収している。また、グループウェアと同じような機能をイントラネット上で実現するソフトウェアをNet.Genesis社、WebFlow社、Arachnid Software社、Radnet社などが開発している。

インターネットメール vs.LAN用メール

 電子メール機能は、グループウェア、イントラネット両方の重要な構成要素であるが、こちらは明らかに競合関係にある。一般的に、インターネットメールは、LAN用メールに比べて信頼性が低く、電子メールの管理機能が不足していると言われている。例えば、相手がメールを受け取って開封したかどうかの確認もできないし、メールアドレスのディレクトリをサポートしていないため、アドレスを知らない人にメールを出そうにも、アドレスをオンラインで調べることができない。

 一方、LAN用メールはインターネットとの接続に問題が発生するケースがある。プロトコルが異なるために、ゲートウェイでプロトコル変換ソフトを使うのだが、これが時に問題を引き起こす原因になる。電子メールは社内だけの連絡に用いるわけではない。電子メールの利用者が増えるにつれ、外部とのコミュニケーションツールとしての重要性は増して行くだろう。LAN用メールの信頼性がいくら高くても、外部とのメールのやり取りにトラブルが生じれば、メールシステムとして信頼性があるとは言えないだろう。

 インターネットメールはセキュリティレベルが低いと言われているが、LAN用メールと言えど、その道の専門家なら盗聴は難しくないので、機密を要するメールはPGPなどの暗号ソフトを利用して保護するしかない。インターネットメールの管理機能の不足問題も、新しいディレクトリの標準をサポートするソフトウェアの誕生で解決されていく。例えば、TeamWare社のInternet Messaging Serverは、メールの着信確認が可能で、X.500に準拠したディレクトリをサポートしているし、インターネットのブラウザソフトで圧倒的なシェアを誇るネットスケープ社は、LDAP (Lightweight Directory Access Protocol) のサポートを呼びかけている。ちなみに、LDAPはX.500のサブセットで、ミシガン大学で開発され、95年にインターネットの標準開発を担当するIETF (Internet Engineering Task Force) 検討中である(現在ベータ版が同大学のサーバーから入手可能)。ヒューレット・パッカード社、IBM社、ロータス社、ノベル社、サン・マイクロシステムズ社などがこの案に賛成しており、マイクロソフト社もネットスケープ社の呼びかけには応じていないが、独自にLDAPをサポートすると表明してい

 こうした状況を考えると、電子メールを社内だけではなく、外部とのコミュニケーションにも使うのであれば、インターネットメールが主流になっていくのではないだろうか。

イントラネットの効用

 イントラネットの効用については、3カ月まえのレポートにも書いたが、再整理してみよう。

(1) コスト削減
 まず、第1に極めて経済的である。特に地理的に事務所や支店が分散している企業にとっては、そのメリットは大きい。例えば、社内ニュースや社内電話帳、社員向けのお知らせ、製品の価格表などを印刷して、国内の支社や支店、あるいは海外の事務所や子会社に配布するコストと、イントラネットを利用してこれらの情報を配布・共有するコストを比較すれば、明らかにイントラネットの方が安上がりになるだろう。また、情報の更新も適宜行えるので、印刷物の情報が古くなって起きるトラブルも避けられる。コミュニケーションのコストもインターネットを経由することで、電話やFAXよりはるかに安くできる。
 グループウェアやLAN用メールに比べても、経済的である。まずシステムの構築費用が大幅に安くなる。例えば、Lotus Notes4.0のクライアント側のソフトは69ドルに値下げされたが、インターネットのブラウザソフトは50ドル以下である。企業内LANをインターネットに接続し、WWWのブラウザソフトを導入している企業にとっては、事実上追加的投資はゼロである。また、IDC社の最近の調査によればLotusNotesのインプリメンテーション費用の平均は24.5万ドルであるが、WWWを使ったアプリケーションなら数万ドルもあれば十分だという。薬品メーカーのEli Lilly社のイントラネットを構築したコンサルタントであるJohn Swartzendruberは、既存のコンピュータを利用したとはいえ、約3000人の社員が利用するイントラネットを構築するのに8万ドルで済んだと述べている。

 通信回線費用もインターネットの利用によって安くなる。例えば、東京の本社とニューヨークの事務所を社内ネットワークで接続するために、太平洋を横断する64Kbpsの専用回線を借りると、年間千数百万円のコストがかかる。これを、東京、ニューヨークともに最寄りのインターネット・サービス・プロバイダーに接続する方式にすれば、プロバイダーに支払う接続料を考えても3分の1以下にできる。LAN用メールやグループウェアを利用する場合でも外部との連絡用にインターネット接続している場合には、東京ーニューヨーク間の回線費用は丸ごと節約できることになる。

(2) 柔軟で、発展性があり、プラットフォームを選ばない
 イントラネットで用いられるインターネットの技術は、基本的にオープンである。したがって、企業間の競争が激しく、また技術進歩も速い。当然のことながら、コンピュータの機種、OSの種類、アプリケーションソフト選択の幅が極めて広くなる。ほとんどプラットフォームを選ばないと言っても過言ではない。サーバーのOSですらUNIX、Windows NT、OS/2、MacOSから選択できる。WWWのサーバーソフトもセキュリティ機能の無い500ドル程度のものから、エレクトロニック・コマースに使われているセキュリティのしっかりした3000ドルクラスのものまである。いうまでもなくクライアント側の選択肢はもっと広がる。より優れたソフトが出てくれば、データだけ移行してそれに乗り換えることもできる。

(3) シームレスな環境
 内外のネットワークが技術的に同じであることによって、多くのメリットが生まれる。まず、ゲートウェイでのトラブルが減少する。外との電子メールの交換が多い企業にとっては、これはとても重要なことではないだろうか。

 第二に、ユーザ教育が楽になる。ユーザにはインターネットの使い方さえ教えれば、内部のシステムも利用できることになる。内部用のDBを検索するときもインターネットと同じWWWのブラウザでよくなり、電子メールは内部も外部も意識する必要がなくなる。これは社員教育上、とても好都合である。

 第三に、社外の情報も社内情報と一体として扱える。つまり、内部用のWWWからインターネット上のホームページにリンクをはることによって、外部の情報を社内システムに利用することができる。外にある情報をうまく利用することによって、社内システムを何倍にも魅力的にできるだろう。

イントラネットのセキュリティ

 イントラネットのWebサーバーには内部用の情報が蓄積されることになる。したがって情報の盗難や破壊には細心の注意を払う必要がある。

 ASIS (American Society for Industrial Security) が最近発表したデータによれば、産業スパイによる被害は、92年から323%も増加しており、1件当たりの被害額は2600万ドル、米国企業は毎月20億ドルの損害を被っていると推計している(ASISが325社を対象に行った調査によれば、113社が93年から95年の間に約700件の事故にあっており、計52億ドルの損害を受けている。ASISの推計値はこの調査をベースにしている)。

 もちろん、産業スパイの手口は、コンピュータへの不正侵入(クラッキング)だけではなく、電話の盗聴、スパイの送り込み、賄賂による相手社員の抱き込みといったものも含まれている。しかし、イントラネットが社内の重要な情報共有の道具になり、プロジェクトがイントラネットを媒体にして進むようになれば、間違いなく社内Webはスパイ活動のターゲットになるだろう。イントラネット用として売られている多くのWeb用ソフトにはファイアーウォール機能が付いていないので、この点は十分に注意しなければいけない。

 また、機密を要するメールは暗号化する必要がある。ニーズはあるので、使いやすい暗号機能付きのメールソフトが近い将来一般的になるだろう。

 少し話はそれるが、日本企業のこの分野に関するセキュリティ意識は極めて低い。データの暗号化ソフト、暗号装置、あるいは暗号機能、秘話機能、スクランブル機能を備えた電話やFAXの日本市場はかなり小さいのではないだろうか。米国のセキュリティ関係機器の市場は、30〜40億ドルだと言われている。もちろん国防総省を含む政府市場がかなりの割合を占める。データ通信用では4割前後、音声用では9割程度が政府向けだと言われている。AT&T社から分離独立したルーセント・テクノロジー社は、電話機と電話線の間に接続して音声を暗号化する Security Telephone Deviceを1295ドルで、電話にもFAXにも利用できる装置を2000〜3000ドルで、電話会議用のセキュリティ・システムを8160ドルで販売している。ニューヨークのいくつかの日系企業にこうした電話の利用について尋ねてみたが、利用しているところは1箇所もなかった。極めて重要な情報も暗号機能(秘話機能、あるいはスクランブル装置)の付いていない電話やFAXで伝えているのだろうか。ことさらに不安をかき立てるつもりはないが、第三者に知られたくない情報を扱うのであれば、セキュリティ機能の付いた電話やFAXを導入し、数カ月に一回は、オフィスや交換機に盗聴器が仕掛けられていないかチェックすることをお奨めする。

SAP R/3

 SAP R/3というソフトウェアをご存じだろうか?販売、物流、会計を扱うソフトウェアとしては、世界で最大のシェアをもつクライアント・サーバー型の業務パッケージソフトである。SAP AG社は72年にドイツで設立されたアプリケーションソフトメーカーであり、95年5月22日のInformation Weekによれば、94年ソフトウェア販売額ランキングで世界第5位である(ちなみに、トップは言わずと知れたマイクロソフト社で、2位はコンピュータ・アソシエイツ社、3位がオラクル社で、4位はノベル社、6位がロータス・デベロップメント社である)。従業員数は約5000人で94年の売上げが11億ドル、95年は約19億ドル、世界40カ国に約5000の顧客を持っている。
 このSAP社の最大の商品が、生産・販売・物流・会計・原価・固定資産等の管理を行うSAP R/3と呼ばれるソフトウェアである。同種のパッケージソフトの中では群を抜いて売上げが多く、95年でSAP R/3の売上げは約14億ドル、シェア59%である。同社が発表しているライセンス数の推移をみると92年は100、93年約900、94年2400、95年3000と急速に伸びている。米国ではFortune500に載る大企業の30%はこのソフトを利用していると言われている。

 SAP R/3もまた、リエンジニアリングのブームとともに普及してきたソフトである。このソフトを販売する企業は、SAP R/3をリエンジニアリングの鍵となるシステムだと紹介している。

 さて、このソフトを導入するために必要なコストを当てていただきたい。もちろん、どのモジュールを使うのか、ユーザはどのくらいかによって価格は異なるのだが、販売・出荷・物流・会計の主要なモジュールのみで、ユーザ数は500だとしよう。
 この規模だと、ソフトのライセンス料金だけで日本円に換算して7000万円から1億円になる。「ライセンス料だけで」と書いたのは、このソフトはライセンスを受けてすぐに使えるタイプのソフトではないからだ。SAP R/3の導入のためには、十分な準備と従業員の訓練が必要となる。現在の仕事の流れを分析し、導入の手順を決める。多くの場合、仕事のやり方をSAP R/3に合わせて変更することになる。このため、米国では一般的に経営コンサルティング企業やコンサルティング能力のある大手のコンピュータメーカーなどを通じて販売されている。そしてこのコンサルティング料は、通常ライセンス料の3倍は必要だと言われている。これにトレーニングの費用も合わせると、ざっと4〜5億円になる。ちなみに、米国においては、SAP R/3を導入するために必要なコストは500万ドルから1000万ドルと言われている。

 SAP R/3は優れたソフトウェアであるが、このように極めて高価である。"Frontiers of Electronic Commerce"の著者であるRavi Kalakota とAndrew Whinstonは、このSAP R/3が提供するモジュールですら、JavaアプレットとWebの技術を用いればイントラネットで実現できると述べている。イントラネット上でSAP R/3の機能を実現するシステムを構築できれば、これは大変な市場を得ることになる。もう、誰かがどこかで開発を始めているかもしれない。

進化するイントラネット

 イントラネットの技術の基本はインターネットの技術である。したがってインターネットでできることはイントラネットでもできる。インターネットの新技術ならイントラネットに取り入れることができる。これはイントラネットも進化するネットワークであることを意味している。

 JavaやVRMLが注目されているが、イントラネットを進化させる技術はこれだけではない。たとえば、イントラネットにもサーチエンジンは有効だろう。ネットスケープ社のEnterprise Serverの場合には995ドルで検索機能を内蔵させることが可能だし、同じく955ドルで検索エンジンであるCatalog Serverを追加することもできる(Catalog Serverの場合は、複数のWebサーバーの検索が可能である)。マイクロソフト社のInternet Information Serverにも検索機能を追加できるし、検索速度の速さを誇るDEC社の検索エンジンAltaVistaのソフトも販売されている。

 既存のデータベースシステムとイントラネットを接続するためのソフトもいくつか開発されている。Webのページから既存のデータベースを検索するには、通常CGI (Common Gateway Interface) を用いる。データベースを検索するCGIスクリプトを記述するのは簡単なことではないし、アクセスの多いサーバーではCGIスクリプトの実行のためにレスポンスが遅くなる。これらの問題を解消ないし軽減するソフトがいくつかある。例えば、ExperTelligence社のWebBase Pro、Micro Strategy社のDSS Web、NetScheme Solutions社のInterMart Toolkit、オラクル社のWebSystemなどである。この分野は需要が多いので、さらに多くのソフトが発表されるに違いない。

 既に紹介したが、Net Manage社はイントラネット内でグループディスカッションを可能とするForum Serverという製品を発表している。定価は1000ドルであるが、96年6月までなら495ドルで購入できる。使われている技術は、インターネット上のネットニュースをサポートしている技術と同じである。

 Progressive Networks社は、イントラネット用のReal Audioを販売している。これを使えばトレーニング用の資料の中に、社長のスピーチや音を入れることもできる。社長のスピーチが社員教育にどれほど役立つかは明らかではないが、音はトレーニングの内容によっては非常に有用だ。マニュアルの中に「マシンがせき込むような音を出すときには…」と書くより、実際の音を聞かせた方が訓練の効果はあがるに違いない。

 先月のレポートにも書いたように、InternetPhoneなどのソフトを利用すれば格安の長距離電話ができるし、CU-SeeMeなどのソフトでテレビ会議が、StreamWorksなどのソフトでビデオ・オン・デマンドが実現できる。こうした技術をどう使うかは知恵と工夫しだいである。

 インターネットが世界の英知を集めて進化し続けるとともに、イントラネットも進化していく。イントラネットは、インターネットと同様に、一過性のブームではなく、組織内の情報システムのパラダイムを変革する大きな波になるだろう。

【参考文献等】
ComputerWorld, Dec.18, 1995〜May 6, 1996
"Getting your company's Internet strategy right" Fortune Magazine March 18,1996
"Here Comes the Intranet", Business Week, Feb. 26, 1996, p.76~84
"The Web Within", PC Magazine, Apr. 23, 1996, p.101~158
"The Web Within", Information Week, Mar. 4, 1996, p.45-51
"The Net Rules", Information Week, Jan. 29, 1996, p.15
"Enter the Intranet", The Economist, Jan.13th, 1996
http://www.strom.com/pubwork/group.html
http://www.collabra.com/articles/overview.htm
http://www.lotus.com/bible/
http://www.strom.com/pubwork/intranetp.html
http://sparc.xbg.com/Pubs/Newsreleases/95report.html
http://www.intranet.co.uk/intranet/intranet.html
http://www2.process.com/news/intrawp.htp
http://www.ora.com/www/info/research/business/results.html
http://www.brill.com/intranet/
http://www.forrester.com/
http://sparc.xbg.com/Pubs/inet2.html

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