RESOは、Real Estate Standards Organizationの頭文字を取ったもので(発音する場合は「リソ」)、不動産業界において技術標準を策定することを目的とした、米国の非営利団体です。
名称について
Standardsは標準(規格)の複数形なので(標準仕様群というか一式というか)、直訳すると「不動産標準(化)組織(団体)」みたいになりますが、日本語でうまく簡単に表現できないのが面倒です。
日本ではこういう複数企業が参加する団体は「協議会」とか「コンソーシアム(共同企業体)」なんていったりする傾向がありますが、どれもちょっと違う気がするので、ここでは「RESO(という標準化団体)」で通します。RESO(Real Estate Standards Organization)は「Consortium」ではなく「Organization」ですし、日本ではNPO(Non-Profit Organization)のことを「非営利団体」といったりしますからね。
目的
RESOの目的は、不動産の技術を標準化(技術標準を策定)すること。
*MLSについては>「米国の不動産業におけるMLS(multiple listing service)とは何か」を参照。
RESOは、現在までに、RETSという標準フォーマットとプロトコルや、データディクショナリー、各種ID、Web APIの仕様を策定してオープン・スタンダードとして公開しています。
これが米国での不動産情報流通の根幹をなす技術であり、米国における「不動産テック」の保守本流というかすべての基底というか一種の無形の情報基盤になっていると言えます。
(この、ごく基本的な意義とその重要性をず〜っと理解できない日本の不動産業界とテック界隈の人達って一体・・・?)
歴史
1999年に、全米リアルター協会(National Association of Realtors)- 通称NAR(日本であえていうと全国宅地建物取引業協会みたいなイメージ) が中心となって、他の業界関係者も巻き込んで標準化作業を始めたことにさかのぼります。
余談ですが、当時は、XMLは普及して既にメインストリーム化していたものの、「REST」なんて概念も普及してなく、Webサービスとしてはマイクロソフトなどが推していたXML-RPC系統の「SOAP」が最新テックでしたね。
そんな時代なので、「日本の不動産情報を標準化すべきなんでは?」と、2002年に自分が日本の不動産業界に提言した内容は「XML」と「HTTP」で、みたいな今で言うREST風のものでした。(当時書いた文章は読めたもんじゃない・・・若かったなぁ)
その後、2000年代なかばぐらいからWebサービスで「REST」が普及してきた感じです。(日本でも、オライリー本の「RESTful Webサービス」が出版されたのは、2007年)
2010年頃までにはREST のWeb API が主流となり、世の中のブログブームによってブログ投稿APIやRSS/Atomフィードの普及でこれらテクノロジーが一気に身近なものに・・・(熱い時代でした)。
余談終わり。
2011年、非営利団体のRESOが設立(法人化)され、NAR(全米リアルター協会)が中心となって行ってきた不動産情報流通の標準化作業が、独立したRESOへ移管されました。NARでの作業部会が分離独立した形です。もちろんNARも全面的にバックアップしています。
会員
NAR(不動産業界団体)をはじめとして、大小様々のブローカー(不動産業者)、不動産物件検索サイトの大手から不動産関連テクノロジー企業、各MLSベンダー、今どき「不動産テック企業」として話題のZillowやCompass、などを含めて、まさに不動産業界と関連サービス企業の全員大集合状態です。
(自分も参加したい・・・)
RESOの標準規格
現在のRESOでは、RETS時代の仕様はレガシー仕様となり、deprecated(非推奨)となっています。
ただし、特に各項目を定義したデータディクショナリー(Data Dictionary)などは今でも広く使われており、現在の不動産情報のデジタル流通において情報基盤となっています。他にも関連するIDX、VOWと言った仕組みがあります。
現在RESOでは、API仕様の「RESO Web API」、項目定義の「Data Dictionary」、各種IDの仕様を定めた「RESO Unique Identifiers」をメンテナンスしてます。
RESOは米国の組織ではありますが、これらの標準規格は米国内に限定したものではなく、同様の取引慣習やMLSがある他の国、例えばカナダなどでも使えるような仕様に意図されて作られています。
ここにレガシー規格としてすべて残されています。
「米国版『不動産ID』、RESO UPIの事例を紹介」で詳しく書きましたので、そちらを参照ください。
項目定義です。共通言語の単語集、みたいなイメージ。
専用サイトのWikiサイトを作ってて、そこで見れるようになっています。
日本
日本にはRESOのような標準化団体は存在しません。
関連:「『不動産ID』の仕様策定も標準化団体を設立してそこでやるべき」
その他:「標準化が進まない日本〜理由は『自分が損をしてでも人の足を引っ張ろうとする日本人』? 」、「日本の不動産業界の発展を阻害する元凶『不動産流通推進センター』の問題点まとめ」、「エコーチェンバー現象:なぜ不動産業とIT・デジタル化・DXにまつわる話しにはデタラメが多いのか」
*RESOの日本語の情報がなく、適当なリンク先となる説明が欲しかったので、「不動産情報デジタル標準化の覚書」からの抜粋に、あらたな情報を加えてウィキペディア風にまとめてみました。