全宅連の「不動産情報提供のあり方研究会」の報告書を読んだらこれまたダメダメだった件

昨日は、「日本の不動産業界団体による、失敗IT事業の数々をウラ話しを含めて一挙公開」を書いたのですが、さすがにこのひどい状況、誰かが何か言っていないのか、と思ってさらに深堀して調べて見たのです。

すると、全宅連のサイトの深いところに埋もれていたのが、この「不動産情報提供のあり方研究会 報告書」(PDF)。令和3年(2021年)3月のものなのでちょうど一年前のですね。

これまた大層な名称ですが、読んでいきましょうか。

令和元年(2019年)6 月 17 日に、全宅連内に『業務改善・会員支援プロジェクトチーム』が設置され」、「ハトマークサイト等流通システムのあり方検討会」にて、大きく 2 期に分けて検討することとされた。

「まず、令和元年度をフェーズ 1 として、ハトマークサイト、民間ポータル、不動産流通機構等、不動産情報の流通システムに係る検討の基礎資料の収集等に充てることとし、続く令和 2 年度をフェーズ 2 として、外部有識者等を交えた検討を行い、その成果もって理事会に報告することとされた」

アホです。

まず、「資料集め」に一年「外部有識者による検討」に一年報告書をまとめるのに一年。まる3年かけて出てきたのがこの報告書。

この時点で、何がダメなのかわからないのであれば、ハトマークサイト運用など、今すぐ止めるべきです。

他の物件検索サイトの運営なんて、意思決定に年単位なんてかけません。常々日常的に情報収集していて適時のタイミングで意思決定をしているわけですよ。外部有識者だの理事会で検討、なんて悠長なことしませんよ。

基本が違うことを分からんのかね、と。

それこそ物件検索サイトの運営なんて、20代の若いプログラマー達を雇って、彼らに権限を委ねて、色々と任せて自由にガシガシコードを書かせるだけで・・・

もうね、アホ過ぎて話にならんのです。

そもそも、営利企業と違って、市場原理というか競争原理も働かず、クソサイトを放置しても誰も責任を取らずに給料が貰える業界団体や天下り団体では「良いもの」なんて作れません。これ常識。まずはそこを認識するところから始めようか、みたいな。

さて我慢して続けて、挙げられているハトマークサイトの課題、というのを見てみましょう。

利用面の課題
ページビュー数が少ないと評価されている
利用者数が少ないと評価されている
物件数が少ないと評価されている
反響が獲得できないと評価されている
アットホーム利用会員(ATBB)からの物件情報に依存している

やっと分かったかwwwwwwwwwww

去年書いた「ハトさん』、多すぎ問題」や「国交省が主導した『不動産ジャパン』が大失敗をした理由」で、「閑古鳥が鳴いている」と詳しく書いた通りであります。

すべてがダメダメなんですよw

19年かかって、いまさら気がついたのか、と。全宅連のトップはどんだけ現実と乖離しているのか・・・。

続けて運用面と機能面の課題。

運用面の課題
宅建協会ごとに参加方式が異なるため、全国統一的な運用ができない
サイト名称が全国統一されていない
宅建協会ごとに、傘下会員業者に対する利用促進に温度差がある
宅建協会ごとに、消費者に対する周知啓発に温度差がある
費用対効果が低いと評価されている
■広告費が民間ポータルサイトには圧倒的に劣る
■全宅連及び宅建協会における会員への利用促進、消費者への周知啓発が不十分である

機能面の課題
■限られた予算のなかで継続的な機能向上を行う必要がある
不動産物件情報ポータルの運営会社がサイト運営を行っている
■莫大な資金力をもつ民間ポータルサイトと常に比較される
■ハトマークサイト以外からもレインズに登録できる
■平成 26 年(2014 年)に開設した BtoB サイトの物件数は増加傾向にあるが、機能向上の余地がある

もうね・・・

気づくの遅すぎ

他にも色々と言いたい事は山ほどあるのですが、次へ行きましょう。

この「ハトマークサイト等流通システムのあり方検討会」での報告を踏まえて、「不動産情報提供のあり方研究会」なる学識経験者を招いた研究会を組成し、計3回の議論を行ったと。

この研究会の構成メンバーを、個人名を省略して肩書だけ引用すると、以下のようになります。

武蔵大学社会学部教授
東京大学大学院経済学研究科特任教授
全宅連副会長
不動産総合研究所所長
情報提供委員会委員長
情報提供委員会副委員長
情報提供委員会副委員長
弁護士

これね、ITの専門家が誰もいないの。

ITの事なのに、ITのド素人の集まり。不動産のド素人が業法を改正しようとするようなものやん?

社会学部の教授とか不動産業社長とか弁護士しかいないの。

アホでしょ、いやアホすぎて、アホとしか言いようがないのです。

せめてウェブサイト自分でHTMLから直書きして作って仕事としてサイトを運営したり、プログラミングをして色々と作って売ったことがあるような、まともな知識と経験のある参加者は居るのでしょうか。

多分、いない

しかも、業界団体の「情報提供委員会委員長」とか言っても、自分でアットホームやホームズと言った物件検索サイトに登録してたり、レインズを使ったり、なんてしないでしょ。事務員や営業に任せてるに100バカス。会社の経営と業界団体のことで手一杯で不動産の仕事すらしていないと思われ。日常的に使ってないと分からないよ。

いや、参加者が悪いのではなく、このメンバーを選んだ全宅連がアホなのです。

そもそも技術が分からなければ、実際のところ、技術でどこからどこまで可能なのかということすら分かりようがないでしょうに。

アホすぎで、ここで壁に頭を打ち付けて、キーボードとパソコンを窓から放り出したい所なんですが、もう少し進めましょう。

「議論要旨」という事で3回にわたる研究会での検討事項の要旨が羅列されています。一部引用します。

・1 年後、2 年後を見据えた新しい Web 書式システムとの連携が重要
会員業務支援ツールとしての新システム構築が必要である
・47協会が統一感をもったハトマークサイト構築が必要である
・入口を 1 つにし、ハトマークサイト経由での物件登録件数の確保を検討すべき
・宅建協会の協力を得るには将来的な財政基盤を勘案して検討すべき
・公益法人としてのハトマークサイト運営が重要
・物件情報量の少なさの課題への対処方法
・利用促進のカギは、会員業者の負担軽減と物件の回転数の増加である
・行政との連携、協力による利用促進を図るべき
・情報の登録と書式作成システムの使用の効果的連動策の検討
・地域性の視点も考慮すべきである
物件登録と書式作成システムの連動、一本化方策の検討が必要
・データや情報の流れを今後どうしていくかについての検討が必要
Web 書式作成システムの利便性向上を踏まえた議論が必要
Web 書式作成システムを活用した大手との対抗方策の検討

こんな感じで3回グダグダとあるのですが、色々とダメ過ぎて、何から手を付けたら良いのか分かりません。

まず、業界団体が会員向けの業務支援システムの開発、なんてアホだと詳しく書いた通りでありまして・・・参照>>「日本の不動産業界団体による、失敗IT事業の数々をウラ話しを含めて一挙公開」。

にも関わらず、業務支援システムの開発を言い出しています。またぞろ東京都宅建協会(協同組合)での大失敗を繰り返すつもりだろうか・・・

もうね、本当に頭痛がしてきます・・

列挙してある内、ほとんど8割方が、トンチンカンすぎる斜め上の話しか、抽象的な一般論を列挙してあるばかりであります。しかも「議論が必要」とか「検討を」みたいな投げやりな話しばかり。

技術と不動産業界の両方が分かる人じゃないと、どこまでが実現可能でどんな制約があって、どうすればよいのか、なんて分かりっこありません。

とりあえず、まずは優先度をつけて、コアとなるやるべき事を抽出すべきでしょう。

一々読むのもだるくなってきます。

ただ、唯一、下記の部分だけは、「おっ」、となった点です。

データのつくり方のみを決めて、違うソフトを使っていても流通するように標準化するというのも一方策
入口部分は共通で何らかのシステムをつくり、民間ソフトと組合せて使うという方法もある

これは、ひょっとして物件情報のフォーマットと通信プロトコルを標準化して、それを使ったAPIを実装して、「民間ソフト」からも登録更新が出来るようにする、という事を言って居るのでしょうか。

もしそうであれば、それこそ、まさに「不動産情報デジタル標準化の覚書」で書いた20年前から提言していることで、是非やるべきです。それさえやれば、各不動産会社のそれぞれの物件管理システムから物件が自動で連動されて集まるんだから。

やればよいのに。

多分ですが、これを言ったのは誰か特定の一人で、その他のメンバーは一体なんのことやらチンプンカンで話しも通じず、誰も理解せずにそのまま話はスルーされて終わった、というのが想像出来ます。

期待薄だなぁ。

ただ、それ以前の話しとして、運営体制から何から間違っているし、「『ハトさん』、多すぎ問題」で書いた通り、まずは、一つにまとめろよ、という話しが先でありまして・・・

それすら出来ないのであれば、いっそ全部やめて手を引くべきです。本当に。

「会員向けの業務支援システムの開発」だのと絡めるだとか、「Web 書式作成システム」と連動だの、トンチンカンなことばかり言っていたり、「レインズのように 4 ヶ所(エリア)に分ける」だとかとてつもなく馬鹿過ぎることを書いてあるし、「データは重要」とか馬鹿でも言えるようなことや、卓上の空論(嫌いな言葉だけど)ばかりで、読んでいて、ウンザリするばかりであります。

もう、ヤダ。

いっそ、プログラミングが出来るニートでも呼んできて作ってもらった方がよっぽどマシ

本当にアホ過ぎて、付き合ってらんないです。

・・・けど、不動産業界が良くなって欲しいので、我慢して苦労してここまで書きました。

あとは誰かに任せた。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?