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読書会の記録: チャット形式で探る安部公房『箱男』の魅力
2024年12月14日10時から、恒例の読書会を開催しました。今回の課題本は、2024年に生誕100年を迎えた安部公房の『箱男』です。今回は対面ではなく、オンラインドキュメント上で行う「チャット形式」を採用しました。私を含め3名が参加し、「作者はあなたに何を言おうとしているのでしょうか?」というテーマをもとに自由な意見交換を行いました。
多角的な議論:匿名性と自由
話し合いでは、作品のテーマや構造に関して多角的な意見が交わされました。主な議論の焦点となったのは、「匿名性と自由」「箱という象徴の二重性」「覗くことと見られることの関係性」です。
ある参加者は、箱男を現代の匿名性や抑圧と結びつけて解釈し、狭い空間が心理的安堵感をもたらす点に注目しました。一方、別の参加者は、箱がネット社会における匿名性や安全地帯を象徴していると指摘し、リスクを負った箱男と擬似的な匿名性を持つ現代人の対比に着目しました。
覗く行為と箱の象徴性
特に盛り上がったのは、箱がカメラやレンズに見立てられる点に関する議論です。D少年がアングルスコープを用いて行う覗き行為が、箱の象徴性に結びつくという意見が出され、覗く行為が匿名性や無責任さと結びついている可能性が指摘されました。また、「箱から覗いているかぎり、どんな風景も見飽きることがない」(新潮文庫版、66ページ)という表現からは、写真家の視点や生き方を批評する側面が読み取れるという新たな視点も共有されました。
チャット形式と作品の親和性
今回の読書会形式そのものに関して、オンラインドキュメントを用いたチャット形式は、『箱男』の自由で断片的な語りと親和性が高いとする意見があり、読書体験と作品の特質が融合する形となりました。この形式が新たな発見や議論を促進する一助となったのは、印象深いポイントです。
まとめ:『箱男』の再発見へ
多様な視点から自由に意見を交わした今回の読書会は、『箱男』の難解さと魅力を深く掘り下げる場となりました。私自身も作品に対する理解をさらに深める必要性を感じました。この読書会で得られた議論は、再読の際の大きなヒントとなりそうです。『箱男』の奥深い世界は、まだまだ探求を必要とする広がりを持っています。
<概要>
・日時 2024年12月14日10時~11時半
・場所 オンラインドキュメント
・課題本 安部公房『箱男』