未知の国 カザフスタン競馬(Казахстанские скачки)
日本から韓国ソウルを経由して約8時間。中國大陸の西端、新疆ウイグル自治区を抜けた先に見えてくるのが、世界で最も広大な内陸国カザフスタン。ほどなくして、標高5,000m越えの山々が連なる天山山脈の麓に、同国最大の都市アルマトイの街並みが姿を現す。
今や世界的名手として名を馳せ、日本でも短期免許でおなじみバウルジャン・ムルザバエフ騎手の故郷がここです。今年は、元カザフ調教馬KabirkhanがドバイミーティングでGIを制し、カザフスタン競馬の存在が、海外競馬ファンの間でも大きく取り上げられるようになりました。今回、謎に満ちたカザフスタン競馬に迫るべく、ダービーデーに照準を合わせて同国を訪問。その実態を記したいと思います。初回は、カザフスタン競馬の基本的な概要についてご紹介いたします。
カザフスタン (アルマトイ)へのアクセス
現在、日本からカザフ最大の都市アルマトイへの直行便はなく、第3国を経由しての入国となります。筆者は、関西国際空港より韓国・仁川空港を経由して、エアアスタナ・アシアナ航空のコードシェア便にて渡航。
他に、中国・北京やウルムチ(中国南方航空)、マレーシア・クアラルンプール(エアアジアX)などを経てアクセス可。カタール・ドーハやトルコ・イスタンブールからも乗り入れ可能ですが、移動時間・航空券価格などを比較するとあまり現実的ではありません。成田からだと、ウズベキスタン航空を利用してタシュケント経由がスムーズでしょうか。
新疆ウイグル自治区・ウルムチからは、陸路(長距離バス)でアルマトイ入りすることもできます。
カザフスタン競馬の位置づけ
カザフ人にとって競馬とは、古からの伝統競技でもある、走行距離10km~50kmにもおよぶマラソンレースBaige (Бәйге)が主流で、サラブレッドによる競馬への関心は、国内的にそう大きいものではありません。
カザフスタンのメイントラックであるアルマトイ競馬場は、ソ連構成下時代の1930年に開場と、その歴史は100年近くにも及びますが、国際競馬統括機関連盟(International Federation of Horseracing Authorities: IFHA)やアジア競馬連盟(Asian Racing Federation: ARF)にも加盟していないため、国・競走の国際的な格付けを受ける土俵にもたっておらず、サラブレッドによるフラットレースの世界では発展途上の国です。そのため、記載されているレースの格付けは、全て主催者によって独自に設定されたローカルグレードとなります。
主要競走とレース体系
カザフスタンジョッキークラブ統括の下、競馬開催は毎年5月から11月まで年間10~11日ほど行われています。2023年に出走経験のある馬は約130頭。
規模は小さいですが、その半数弱が地元カザフスタン産馬で、残りは北米やロシア産が多数を占めます。北米からはキーンランドのセリで安価で買われ渡ってきた馬などもいて、Kabirkhanもその1頭。古馬にはイギリスやフランス、ドイツ、ロシアなどからの移籍馬なども数多く、振り返れば2017年のカザフスタンダービー馬Make Memories(英2戦0勝)はイギリスのジョン・ゴスデン厩舎、2021年のカザフスタンセントレジャー馬Man Of Peace(愛1戦0勝)は、アイルランドのエイダン・オブライエン厩舎からのそれぞれ移籍馬です。
重賞競走では北米を中心とした輸入馬や移籍馬が圧倒的に強く、カザフスタン産馬は、地元馬限定競走へ出走することがほとんどです。また、近年は開催がありませんが、4年ほど前までは純血アハルケテによる競馬も定期的に行われていました。
日本馬との関わり
残念ながらカザフスタン国内で出走経験のある日本産馬はいませんが、種牡馬としてアドマイヤラスカル、ジェニアルの2頭がカザフスタンにてスタッドインしてます。(アドマイヤラスカルは既に他界)
また、日本で活躍した競走馬の血を引く馬も僅かながら存在し、中にはカザフスタンのクラシックホースなど活躍馬も出ております。
活躍馬筆頭は、なんといってもローゼンカバリーを母父にもつ牝馬Dauria。
2016年にカザフスタン1000ギニーを制するなど、ローカルGI2つを含む国内重賞3勝をあげています。
↓Dauriaが優勝した2016年のカザフスタン1000ギニー映像
カザフスタン競馬の情報収集
カザフスタンの国語はカザフ語、公用語はロシア語であるため、ほとんどがロシア語による記述ですが、翻訳機能が発達した現代。10年前と比較すれば、ホームページやSNSでレースに関する情報収集は容易に行えます。
◾️ホームページ
https://hippodrom.ru
ロシア競馬、カザフスタン競馬の情報収集には必須のデータベースサイト。ロシア・カザフスタン国内の出馬表・結果はもとより、一部のレースは最長1980年代まで補完されているなど、情報量は圧倒的。フリーの掲示板(Forum)も設置されていて便利。
◾️各種SNS
①Kazakhstan Jockey Club
・Youtube(2024〜)
・Instagram
開催日前後は、ストーリーなどで告知・レポートが多数あがります。
②ライブ中継
Sport+Qazaqstan
アルマトイでの競馬や、Baigeの模様もライブ中継。
③写真
オフィシャルカメラマンВладимир Пронин氏のHP
日本競馬とも少なからず縁もあるカザフスタン競馬。
次回は、実際に目の当たりにしたアルマトイ競馬場、そしてカザフスタンダービー開催の模様をご紹介しようと思います。