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国語記述全問解説【2023年東大寺学園中】
第二問 論説文
問1(設問)「この母と子の会話は非常に基本的な会話ですが、ここでの特徴的なことは一体何でしょうか?」とありますが、この「母と子の会話」において「特徴的なこと」とはどのようなことですか。本文を踏まえて五十字以内で説明しなさい。
設問の分析
「この母と子の会話は非常に基本的な会話ですが、ここでの特徴的なことは一体何でしょ
① ②
うか?とありますが~本文を踏まえて…
③
設問要求の整理
① 「この母と子の会話」の内容を明確にする
②③本文を踏まえてどういった点が特徴的であるかを把握する
解答手順
まずは親子の会話の内容を押さえると、それは文章の冒頭に出てきた「ママ、あれ、なあに?」にという問いかけに対して「あれはブタよ」と返した部分である。これが①の要素ということは容易に把握できる。次に、筆者は傍線において、この親子の会話を「基本的な会話」だが「特徴的なこと」(②)と言っている。
「本文全体を踏まえ」とあるので、〈中略〉までを読んでいくと、そこに留学生と日本人学生のやり取りが出てくる。今回はそのやり取りと比べることで「特徴的なこと」を明らかにしていく。二つのやり取りの違いは以下のとおりである。
親子でのやりとり→「ブタそのもの」について話している
留学生とのやりとり→「すでに知っている存在を「日本語で何と言うか」を尋ねる
つまり、ここでの「特徴的なこと」とは、多くの物を問う質問が「日本語での呼び方」に対するものであるのに対し、この親子のやり取りは物自体にあったということを言いたいのだということが分かる。「ブタそのものについて述べての会話」という部分をどう抽象化するかだが、直接自分の言葉で言い換えても点数にはなるが、あくまで③本文をふまえてという条件があることから、言い換え表現が出てこないかと考えながら読み進めると傍線②の二行手前に「いつもものごとの本質そのものと直接結びつけてとらえていた」と自身の言語学習と重ねて述べているので今回はそこを活用する。以上より答えを作成すればよい。
(例)対象を日本語で何と表すかではなく、物事の本質そのものと直接結びつけてとらえた会話であったということ。(50字)
問2(設問)「多くの人は自分の頭を白紙状態にできない」とありますが、「白紙状態にできない」でいる人は、どのような方法で外国語を学ぼうとするのですか。本文をふまえて三十字で説明しなさい。
設問の分析
多くの人は自分の頭を白紙状態にできないでいます。これは、それ以上、他の言語を学ぶ~
① ②
設問要求の整理
② これが言語を学ぶ際の話であることを押さえる
① 筆者がにはそれが可能であった理由を押さえる。
傍線部の次の一文を読むと、これが言語学習における話であることが分かる。筆者の言語学習法について書かれているのは問一でも触れた〈中略〉から子の傍線まで。
この設問にもある通りに「本文をふまえる」のであれば、問一に出てきた親子の会話のやりとりのような言語習得が筆者の主張の軸であり、それが頭を白紙状態にして言語学習に臨むことであることは押さえられる。今回は多くの人がそのような言語学習ができない理由を問われているので、筆者の行動と対比で考えていけばよい。
すると中略以降の内容で、筆者の言語学習が紹介されており、その中で「わたしは、外国語を習得しようとしたとき、自分自身の母語を基準にはしませんでした。外国語を聞いたり読んだりしたことを、いったん自分の母語に置き換えながら考えるということもしませんでした。」とあるので、ここの対比から解答を作成する。
(例)母語を基準にし、学ぶ言語を自分の母語に置き換えて考える方法。
第三問 物語文
問3(設問)「思い出して心に刺さる」とありますが、それはなぜですか。(六十字)
設問の分析
思い出して 心に刺さる とありますが、それはなぜですか。
① ②
設問要求の整理
① 何を思い出したのかを明らかにする
② そこに込められた父の心情をとらえる
③ 心情の理由説明なので「何に対し(①)」「どう思ったか」をベースに仕上げる
解答手順
まず①の思い出した内容を整理する。本文36~42行目までの内容を要約すればよい。すると思い出した内容は「蓮と遊んでいた時に自分は本当は好きなシラサギのことをキモいという蓮に合わせて自分も本心を隠して同調したこと」だとわかる。
次に②心に刺さるという表現に込められた心情を明らかにする。文脈からこの経験がマイナスの思い出であることはわかる。透はシラサギを見るたびにその時の思い出が嫌な経験としてよみがえるわけである。したがって心情を図示すると次のようになる。
蓮と遊んでいた時に自分は本当は好きなシラサギのことをキモいという蓮に合わせて自分が本心では好きだと思っていたシラサギのことをキモいと同調して言った
↓ (心情X)
シラサギを見るたびにその時の思い出が嫌な経験としてよみがえる
以上よりそこて感じている心情は後悔のようなものであることが分かる。したがって解答は次のようになる。
(例)蓮と遊んでいた時に自分の本心をいつわり、本当は好きなシラサギを悪く言う蓮に同調した自分の姿を今も悔いているから。(五十六字)
問5(設問)「それ」とはどのようなことですか。(八十字)
設問の分析
それがわかるくらいにはぼくは成長している。でも、ぼくの不安が父さんの心配と
① ②
して、先回りして矢印を作っている、その感じが嫌だった。
③
設問要求の整理
① 指示内容を明らかにする
② 「ぼく」が感じとったそこに込められた父の心情をとらえる
③ 父の行動に対する「ぼく」の心情を踏まえる。
解答手順
まずは①「それ」の指示内容を明らかにする。「それ」は直前部の「父さんにとっては、きっと、お昼のご飯を用意しておくのと同じようなつもりだったんだろう」であることはわかる。次に同じという内容だが、それは嘘をついてまで蓮と違う部活に誘導したことだろう。つまりここでは次のようになる。
透を蓮と引き離すために嘘をついて陸上部に誘導したこと
=
お昼ご飯を用意しておくこと
ここで、「お昼ご飯を用意しておくこと」がどういったことを示しているのかを考える。親が子供にご飯を用意することは「当然」であると同時に「成長のために必須のこと」である。したがってここでは透と蓮から引き離すことは父にとって息子の成長のためには必須であり、かつそれは当然のことであると透が受け止めている(②)と読み取れる。そのうえでこうした父のふるまいに対して透は③のように「その感じが嫌だった」と思っているので、父の行動をマイナスにとらえていることを加味して解答を仕上げていけばよい。
(例)透を悪い方向へと向かわせる蓮と引き離すために息子に嘘をつくことに、父は子の成長を願う親として当然であり、その行為に何もうしろめたさを抱いていないということ。 (七十八字)