知識問題の点数が上昇するアナログ的な思考アプローチ

知識問題は知識がないと解けないの?



突然ですがみなさん、次の問題に挑戦してみて下さい。

次の1~5の各組のA・Bに入る二つの漢字を組み合わせると、別の漢字一字ができます。その漢字をそれぞれ答えなさい。1 他石の( A )とする  面の( B )が厚い2 夜を( A )に継ぐ   去る( B )は追わず3 ( A )死に一生を得る 墓( B )を掘る4 時は( A )なり    ( B )中八九5 ( A )をときめく   立てば歩めの親( B )(2022年灘中 1日目)


いかがでしたでしょうか。これは2022年の灘中(1日目)入試で出題された問題なのですが、この問題には灘中学校を目指す子ばかりでなく、中学受験を考える多くの受験生にとって必要な適性を測る要素が含まれています。僕がこの問題を通して測ることが出来ると思っているのは、「知識問題への向き合い方がデジタルかアナログか」という部分です。(中学受験ではあまり見かけませんが)現代文の文章ではしばしばデジタルとアナログをその本来的な意味としてデジタル=0と1の間にある誤差を切り捨てて認識すること、アナログを0と1の間の揺らぎに注目することというように使うのですが、ここでのデジタル/アナログはこの文脈のお話で、知識を問うような問題に出くわしたときに「知っているか知らないか」というデジタル的な思考で向き合うのか、「知らないとしてヒントをたどって正解に近づくことはできないか」と考えるアナログ的な姿勢があるのかという意味で用いています。僕は後者の「アナログ的な姿勢」が国語に問わず中学入試では非常に大切だと思っているのです。

知識問題で「正解に近づく」というアナログ的アプローチ


さて、冒頭の問題でデジタル的アプローチの場合とアナログ的アプローチの場合を見ていきたいと思います。1~5の問題のうち、多くの教材で網羅されている1、3、4は知識として押さえておきたいところ。ここを落とすのはデジタル/アナログというお話ではありません。ポイントとなるのは2、5のような問題にどのような姿勢を取るのかという部分です。恐らく受験生の中でも2の「夜を( A )に継ぐ」と5の「立てば歩めの親( B )」という表現を知らない子は少なくないと思います。そんなときに知らない=捨て問として諦めてしまうのがデジタル思考、よく考えれば類推によるアプローチの可能性があるのではないかと考えるのがアナログ思考です。

まず、2の問題であればBの「去る者は追わず」は知っていたいところ。その前提で考えるのであれば、Aに入るものは「者」という漢字と組み合わせてできる漢字ということになるでしょう。ここからアナログ的な思考アプローチとしては次の二つがあります。

①「夜」という目的語と「~に継ぐ」という述語から夜とつながる妥当な名詞を考えて「者」と組み合わせていく②「者」という字との組み合わせで自分が知っている漢字を書きだしてAに当てはめて妥当なものを探す

どちらでも構わないのですが(個人的は算数が得意な人は①、社会が得意な人は②が多い印象)、①であるならば、夜と結びつくということで、連想や対義語のイメージから「朝」「日」「昼」などを考えます。そしてそのうち「者」とつながることができるのが「日」なので合わせて「暑」にたどり着くといったところでしょうか。あるいは②を取るのならば、「著(6年)」「暑(3年)」「煮」「都(3年)」「諸(6年)」「署(6年)」「緒」あたりが頭に浮かぶかもしれませんがそのうちAに当てはまるものは何かと考えれば「暑」と類推することが可能です。

同じく5の場合も「今をときめく」からAに入るのは「今」であることを押さえた上で①ならば「立ち上がった姿を見て歩いてほしい願う気持ち→親心」と類推する、あるいは②ならば「含」「吟」「念(4年)」「貪」あたりが浮かび、その中から当てはめるという方法で「念」にたどり着けます。

もちろん断言はできませんが、1日目と2日目の出題の仕方などを踏まえれば、灘中学校の先生は「受験生が解けない捨て問」としてこの問題を用意しているのではなく、「広く知識を知っているor知らなくても何とかたどりつこうとする生徒に加点したい問題」であるのではないかと僕は考えています。そしてこの「何とかたどりつこう」という意識は(仮に純粋な知識を問う問題であったとしても)多くの学校の問題で役にたつものです。

「知らないから終わり」から「知らないをスタート」に


未知の問題・難しそうな問題に出会うと瞬間的解ける/解けないを判断して、後者と決めつけたらそこで心を閉ざしてしまうというような問題に対する姿勢の生徒さんを今まで多く見てきました。しばしばそれは「やる気」「好奇心」「積極性」「地頭」といった抽象的な言葉で片づけられてしまいがちなのですが、じっくり時間をかけてアプローチの方法について帰納的に伝えていけば身につくものであるというのが僕のスタンスです。(そして非受験学年のうちに身についていると学習効率の底上げにつながる)

もしみなさまのお子様が上で述べたようなデジタル思考で悩んでいる場合は上記のような問題を用いて、アプローチの仕方を言語化して示してあげると、長期的に大きな効果があるかもしれません。興味のある方は是非実践してみて下さい。

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