勉強コラムvol.05東大の過去問に学ぶ!?テスト対策と深い学びの重要性
It probably did not strike these early photographers as strange that only the permanent things appeared in the photograph; for them only the permanent was “real”.
「おそらく、動かないものしか写真に写らないことは、初期の写真家にとって奇妙なことではなかったはずだ。彼らにとって、建物のような動かないものだけが「現実」だったからだ。」
銀版写真で撮影された、表紙の絵を見てください。
真昼のパリの街中なのに、人が誰もいない。
みなさんは人が写っていないことが奇妙に感じませんか?
現代を生きる僕たちにとって、写真はとはボタン一つで何でも写せる装置です。
しかし、写真が発明されたばかりのころは、そんな手軽に撮影できるものではありませんでした。
発明されたばかりの頃の写真は、撮影に長い時間がかかりました。
そのため、当然人や乗り物のような動くものは写真に写りません。
当時の人々にとっては、写真とは「動かないもの」を写す装置であり、そこに人が写っていないのが普通だったのです。
冒頭の英文は、昔東京大学で出題された問題から抜粋したもので、文化や時代背景の違いによって人々の認識は異なるということを述べられています。
写真が発明されたばかりの人にとって、動建物や背景しか写っていないのが当たり前で、むしろ人がジャンプした写真などが写っている現代の写真こそ「奇妙」に見えるのです。
Clotaire Rapaille教授は『THE CLUTURE CODE』という本の中で、たとえばフランスでは「太陽」は男性を、「月」は女性をイメージする言葉であるのに対してドイツではほとんど真逆に認識されるというように、特定の言葉や現象がある文化の中でどのような認識をされているかを分析しています。
ある言葉に対するイメージ(CLUTURE CODE)は文化によって異なり、それを理解することが言語学習には重要です。
中学生・高校生の生徒さんが最後まで悩む知識の一つに分詞形容詞というものがあります。
例えば次の問題を見てください。
They won the game easily. The coach looked ( ) with the result.
① please ② pleasing ③ pleased ④ to please (佛教大学)
この問題は③が正解なのですが、多くの生徒さんが②で間違えます。
後半の部分を和訳すると、「コーチはその結果に喜んでいるように見えた」となります。
「喜んでいる」だから能動形っぽい[pleasing]で②が正解ではないのか?と考えたいところですが、実際には受動態のような形をとる[pleased]が正解となります。
なぜ直感的な感覚とは真逆のものが正解になるのか?
そこにはCLUTURE CODEが関係しています。
気持ちを表す単語が多い分詞形容詞ですが、これらの単語の理解を複雑にしている原因は、日本人と英語圏の人々の持つ「気持ち」に対するイメージの違いにあります。
たとえば日本語の助動詞「れる」「られる」には「受身」「可能」「自発」「尊敬」の意味がありますが、「自発」は気持ちと関連した言葉で「自然と~する」という意味を持ちます。
この助動詞の意味から、日本人にとって「気持ちは内からこみ上げるものである」というイメージがある事が分かります。
一方で、英語圏の人にとっては、気持ちとは「周囲に影響されて生じるもの」です。
「わくわくする」というのは周囲から影響されてわくわくしただし、「驚いた」なら周囲に驚かされたといった具合です。
「アメイジングスパイダーマン(The Amazing Spider-Man)」という映画がありますが、あれはスクリーンの中を縦横無尽に駆け巡り、観客に「あっ」というような驚きを与えてくれる蜘蛛男が活躍する物語なのです。
決して「びっくりしている蜘蛛男」のお話じゃありません(笑)
こんな風に日本語と英語の持つ「気持ち」に対する認識の違い(≒CLUTURE CODE)を理解することで知識の理解は何倍も膨らみます。
より深いレベルで「理解した」と思うには、表面的な知識で終わることなく、より掘り下げた説明が不可欠なのです。
単語や公式を覚えることは大事ですが、それが目的になっていませんか?
心当たりがある方はぜひここまで掘り下げてみてください。