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風の道を探す。
むわっと暑い日の中に、すうっと涼しい風が流れる瞬間。好きです。
そんな良い場所、良い瞬間が、実はあちこちある気もします。
そんな「風の道」を知っていたら、いつも心地良く生きられそうです。
気持ち良い方へ歩く猫のように🐾
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あれは多分3歳くらい。
幼い僕はお墓参りに行った先で、ふと家族を離れたのです。
たしかそれで、爽やかな風が木漏れ日を揺らす場所に立っていた。
晴れた夏の日に、向こうの山の緑がよく見えて、気持ち良いなとそこにいた。
気持ち良い、すら思っていなかったかも。
虫の音、少し遠くに家族の声。景色は青、白、緑で風のなか。
時間にして10秒か30分か。
親戚のおばさんが僕を見て「風の道を知っていますね」と言ってくれたのでした。
何だか印象的な、それだけの記憶。
何度も思い出すささやかな光景だから、ますます特別が深くなる。
風。気になる存在です。
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あの僕が今の大人の言語力をもっていたら。その世界や日常を何と言って表すでしょう。
当時の僕なりに見ていた真実は言葉にならず零れたけれど、あの頃の感じに身を浸していたい気分の今です。
「あなたのため」と言いながら自分の利益を潜り込ませもせず、三方よしとか言うでもなく。
純粋に、もっと言えば透明でいたい。
それは「風」の感覚じゃないかと思うのです。
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「透明になれたら」と、教員時代よく思っていました。
目の前のその子を知らないと教育はできない。なのにその子の前に立てば何らか影響してしまう。
その姿しか自分は知れない。
「その子そのもの」は絶対に見えない。
自分の影響があって出ている姿に対して「もっとこうしよう」「これが良いね」という危険。
それは本当にその子のためか。自分はいなかった方が良かったのではないか。
透明に、意識されない存在になれたら。そしたら「その子そのもの」が見られて、本当に伝えるべき言葉が見つかるんじゃないか。
何度もそう思ったから「透明でいたい」が深まったのです。
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自転車も車も歩きも良い。坂道だって、雨の日だって。
歩けば頭が働いて考えが進むし、景色や風も楽しめる。
風の道を感じたら知らない道を入っていくのも良い。
自転車と車と歩きを使い分ける。良い時間の送り方な気がする。
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扇風機だってクーラーだって、ずっと当たったら冷えてしまう。
風は永続しないからこそ気持ちが良い。
一瞬くらいで良いのです。すうっと爽やかになるだけで。
会う人、行く場所に良い風を吹かせて、後には透明な心地よさだけ残して。
それで十分なのかもしれません。
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毎日の日記も続けて3年になりました。
暮らしのできごと、考えたこと思ったこと、こう考えれば良いかも…
それを暮らしのエッセイとして連載したい。
そう思うようになりました。
日々の中に、自分の中に、こんなにもたくさん感じられるものがある。
僕らの日々こそ、それだけですごいのです。
なるべく感じきりたくて、日記を書いています。
大したことなくて、わざわざ話すほどでもなくて、SNSにも載らなくて、
仕事や新しい取り組みの眩しさに負けがちだけど、本当は話したいこと。
自分しか自分のすべてを知らない孤独。
それを交わせたら、とずっと思っています。
返信しなくて良い交換日記のような、いっしょにいるから言える独り言のような。
人には言えるけど自分にはかけてあげられない優しい言葉のような。
今週の日記から一つとりあげて書く週刊エッセイ。まずnoteに書いてみます。
よければお付き合いくださいませ。