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ラビット、ようやく復活。
2023年6月5日、南阿蘇ツーリングの帰りに愛車・ラビットS301(サンマル子)のエンジンが壊れてしまいました。
お迎えした時から元気よく動いていたエンジンで、しかもトルコン式AT機構の不具合やATフルード液漏れもなかったので「壊れてもないエンジンを分解する必要はない」という考えでそのまま走らせていたのですが、筆者にとって初のラビットでもあったのでまだまだ経験値不足という事もあり…こういう不測の事態を迎える覚悟はできていました。
そもそも、旧車で阿蘇や由布岳の山並みをガンガン走ってツーリングしていれば「何も起こらないだろう」なんて甘い考えは持てないのですが。
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この時はまだ修理が長期戦になるとは考えてもいなかった
ともあれ、壊れたものは直すのみです。
早速分解し、まずは故障の原因の特定とエンジン再起動を試みます。
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で、エンジンはあっけなく再起動に成功したのですが…
全く吹けませんし、点火も不安定です。
しかしながらキャブレターの不具合は認められず、火花も飛んでいます。
もしや圧縮抜け???と思い、腰上も分解。
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実は、サンマル子のエンジン初号機には0.75mmオーバーサイズピストン(社外品)が組み込まれており、しかもお迎え時点でピストンもピストンリングも摩耗・損傷していたのです。
(旧車あるあるですし元気に走ってたので気にしませんでしたが…)
前回エンジンが止まった際には軽い抱きつきのような症状が起こってピストンに少なからぬダメージが入ってしまったので、ひょっとしたらもう圧縮しきれてないのかな…と思ったのですが、この時点ではまだ圧縮はしてくれていました。
とはいえ懸念材料ではあります。
しかし、0.75mm以上ものオーバーサイズピストンを入手できる見込みはほぼありません。
ここで筆者は、2つの選択肢を取らざるを得なくなりました。
〜〜〜〜〜
①ボーリングされていないシリンダー&ピストンへ換装
②輸出仕様の150cc腰上へ換装(軽二輪化)
〜〜〜〜〜
最も無難なのは①でしたが、そもそも探すのに時間を食いそうだったのと、当時はたまたま程度の良い腰上が見つかりませんでした。
そこで②を実行すべく、150cc腰上を販売していた(現在は取扱終了)ラビットハウスさんに相談してみたのですが…よくよく考えた上で決断する必要がありそうでした。
結局②は一旦保留とし、他の箇所のオーバーホールを進めながら①を実行するかどうか考える事にしたのです。腰上の換装自体は簡単なので。
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とりあえず、サンマル子の問題点のひとつであった「微妙に足りない発電能力」を回復させるべくステータを外します。
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ステータ裏側にあるコイルの接点部がかなり汚れています。
この時点でわかったのですが、クランク部のオイルシールが破れており、一次圧縮抜けが発生していました。その影響でコイルもアーマチュアも汚れていたので…発電能力低下の原因はコレだと思われます。
とりあえず清掃しましたが、ひとつ注意点があります。
上画像のステータ裏側コイルの絶縁体は何と「紙」なので、何も考えず荒っぽくゲシゲシ掃除すると絶縁体が破れて大変な事になります。接点部分を丁寧にお掃除してあげる必要があります。
また、ステータのブラシも摩耗変形していたり動きが悪くなってましたので全交換。
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続いて、腰上を再組立するためにベースガスケットを自作します。
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2ストエンジンはこういう分解修理が比較的楽なので助かります。
長く付き合いやすいエンジンだともいえますね。
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その後腰下も割って、クランク周りのベアリングとシール類を全て新品交換して組み上げ、再起動してみたのですが…
どういう事でしょう。点火はしても調子が悪いのです。
勿論ポイント調整とかそういう基本的な事はやってみましたが、何か違和感を感じました。
しかし悲しいかな、考えど考えど原因特定ができず。
安直に「原因がわからないままエンジン換装等を行い修理完了」という愚は冒したくなかったので、筆者は頭を抱えてしまいました。
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あれこれ考えたり試行錯誤してたら、本格的に夏がやってきました。
しかもプライベートでも色々あったので、サンマル子修理にばかりかまけてもいられなくなってしまいました。
一方で、せっかく始めたツーリングをやめる訳にもいきません。
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ともあれ…暗い空気を吹き飛ばすには旅を続けるべし!
という訳で、サンマル子の頼もしい相棒ことYB-1(わび子)の出番です。
先代にあたるホンダ・バイトに装着していた大型リアキャリアをわび子用に改修、元々V-Maxに付いていた(だからYBにはちょっとデカい)フロントバイザーと併せて装備し、ツーリングを続行しました。
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2023年の夏は猛暑でこそありましたがツーリング日和に恵まれ、筆者とわび子はちっこいエンジンをプンプンいわせて九州のあちこちを飛び回りました。
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片や、サンマル子の不具合特定は膠着状態に陥っていました。
クランクケースのベアリングもシールもガスケットもド新品なのに何故…
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そうこうしてたら、後からやってきた火事で丸焼けの「バイクの焼死体」ことBS41スーパー(ブリ子)の方の作業は駆動ローラー回りを除いてトントン拍子で進み…
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エンジンかかっちゃいました。
余りに勢いよく掛かってしまったので強制空冷ファンに薬指を巻き込まれかけ、指先を潰してしまった程です。
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文字通り「夏なのに生き殺し状態」なサンマル子が余りにかわいそうだったので、私用でレンタカーを借りて別府の温泉閣へ行った際にサンマル子のウインカーブザーだけを持っていき、パーツだけですが温泉閣に帰還させてあげたりもしました。
これ、ホンダCD125T用なのでラビットのパーツではないのですが。
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今更書くまでもなく、温泉閣カフェのコーヒーは最推しの味
サンマル子にとって温泉閣は初ツーリングの際の目的地であり、思い出の地でもあります。
泊まった際に軒先に停めさせてもらってたら観光客から旅館の飾り物だと勘違いされたのも、今となってはよき思い出です。(よくない)
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で、気が付いたらもう秋になっていました。
わび子とのツーリングは非常に捗り、事故に遭ったりもしましたが持ち前のタフさですぐに復活。本当に頼もしいバイクです。
それでも、筆者の心の中にはサンマル子も一緒にいました。
わび子とサンマル子は名コンビ。
いつか再び、この道をサンマル子でも走る!そう誓いながら。
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更に、サンマル子と旅する「相棒カメラ」として、久々に新しいフィルムカメラをお迎えしたりもしました。
フジペット35という1950年代末の古い35mm判カメラで、簡素かつかわいい外観に似合わず意外としっかりした作りで写りも侮れず、ちゃんと基本的な撮影技術を理解して撮ればびっくりする程素敵な絵が撮れます。
(以前所有していました)
筆者はバイク同様クラシックカメラも不動品を直して使うのが好きなので、勿論このフジペット35も不動品を自ら修理したものです。
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一方、サンマル子に代わってわび子が繋いだツーリングの日々は、筆者のライフスタイルを着実に「ツーリングと日常が一体化した暮らし」へと近づけてくれました。
例えば、大分ツーリングを通じてその良さを知った「かぼす」。
かぼすは汎用性が極めて高い調味料である一方で非常に栄養バランスにも優れ、中でも優れた疲労軽減作用は、何かと疲れ気味だった筆者の救世主となりました。
輪切りにしたかぼすを絞って果肉ごと浸したかぼすウォーターは今や筆者に欠かせぬ愛飲ドリンク!仕事もツーリングもかぼすエナジーで元気一杯。
ツーリングの目的に「かぼす補充」が加わった程です。
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このラビットエンジンを何度割った事か…
研究用に買ったジャンクエンジンや形式の異なるエンジンを参照したり調べたりしながら、「不具合の原因はひょっとしてクランクなのでは?」というひとつの考えに辿り着きました。
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今回は単なる修理ではなく、筆者がこれから長らくラビットと付き合っていくための重要な勉強でもあります。だから、何度でもバラして何度でも組めるように消耗品は余分に買っておきました。
経験値とは、実際に手を動かしてこそ得られるものなのです。
若干のお金は掛かりましたが、その程度の覚悟なくして旧車には乗れません。
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で、クランクです。
というのも…サンマル子のエンジンには「半端な」分解歴があり、過去にクランク軸を叩いて抜こうとした痕跡があったのです。ひょっとしたらそれが原因でクランクに微妙な歪みが発生していて、圧縮抜けやエンジン停止(一時的なクランクロック)の原因になったのではないか?と筆者は考えた次第です。
クランクは叩けば歪みます。
増してや、このS301B型エンジンはクランク軸と同軸で駆動・変速のみならず点火タイミングの制御を行い、更にクランクのバランスウエイトがロータリーバルブを兼務しているのです。つまり「クランクが全て」と言っても過言でないようなエンジン。
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という訳で慎重に再組立を行い、今度は組み上がったエンジンを回して歪みを計測してみると…
悪い意味でビンゴ。歪んでいました。
サンマル子は前回のエンジン停止の際、一次圧縮抜けを起こしたのみならずクランクの歪みにもトドメを刺されてしまっていたようです。つまり要交換。末端を叩かれているので修正に出すより交換が手っ取り早いでしょう。
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原因がわかったら早速パーツ調達!
幸運にも某オークションに出品されていたBH4型エンジン(初号機と同型)を即落札したのですが…
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何と幸運にもノーマルボア!つまり長く使えるという事です。
しかもこのエンジン、分解歴がない上に余り走ってなかったようで…バラしてパーツ取りに使う前に、一度動かしてみたくなりました。
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で、エンジンの主要部分は新しいエンジン、点火系やトルコン等は今までメンテしてきたサンマル子のものを使うという「合体」を行い、とりあえず動かして今後どうするか考えてみる事に。
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新エンジンはあっけなく起動し、下から上までブンブン元気に回ってくれました。もし仮にシールからの混合気やオイルの抜けがあれば、躊躇なく交換すればよいだけの話です。
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その後何度か仮試走を行ってみましたが問題なし。
やはりクランクが原因だった…と結論づけて間違いないようです。
そう考えると、ピストンに付いていた傷のいくつかもクランクの歪みに起因したピストンの異常挙動によるものだったのでしょう。
ラビットはシンプルだけど奥深い…まだまだ学ぶ事が沢山あります。
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ともあれ、試走は成功裡に終わり…サンマル子は復活しました。
本当はエンジン初号機を直したくて、そのために時間を掛けていたのですが、クランクが歪んでいては素人にはどうしようもありません。
原因がわかっただけでもヨシ!としました。
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長い長い入院期間。
正直な所かなり焦っていましたし自身の無力さを嘆きもしましたが、技術と「眼」を体得する時はバイク修理に限らずいつもこんな感じです。
地味で、地道で、SNS映えもせず、ただ足掻くのみ。
お金も時間も掛かる。
それでも自分でやっているのは、ひとえに「バイクが好きだから」に他なりません。
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その後、サンマル子には新しいフロントカウルを付けてあげました。
元々付いていたカウルは過去記事にも書きましたが状態がかなり酷く、何箇所かの重要な固定部分が腐り落ちたり過去の強引な分解(破壊)で捻じ切られており、強度的にもルックス的にもいつか交換すべきパーツでした。
あと、この新しいカウルは新エンジンと同一個体のものなので、これでエンジンも寂しくないだろう…という思いもあります。
これにてラビット旅は再開です。
まだまだ旅は続きます……