ヤマハYB-1の名前の由来
きっと今日も全国各地で元気に白煙とオイルを撒き散らしているであろうYB-1(2スト)ですが、その名前の由来については諸説あります。
なお、2022年8月1日時点におけるWikipedia日本版では…
「元々は1955年にYA-1のエンジン排気量を130ccに拡大したYB-1という車両を、ヤマハ発動機発足後初のオートバイとして発売しており、この時使われたYBの型番を現在も用いていることになる。」(原文ママ)と記載されていますが…
まず、1955年に発売された方のYB-1の「YB」についてですが、これは単純に、ベースモデルにしてヤマハ初のバイクである「YA-1」の次に出たから「YB-1」になったのであって、要するにAの次はBという、それだけの話です。
なお、このYB-1は排気量127ccの軽二輪仕様で、近年で言えば125ccに対する150ccバイクのようなものです。
続いて1996年に発売された方のYB-1の「YB」は、ベースモデルとなった「YB50」に由来するものである事は(公式アナウンスこそありませんが)ほぼ間違いありません。
そもそも1955年発売のYB-1とは、排気量や系統も含め赤の他人なのです。
何か両者を関連づけるエピソードとかないかな?と思って探してみましたが、当然ありませんでした。
YB50の「YB」は「ヤマハのビジネスバイク」という意味です。
これは1970年代初頭に、それまで排気量区切りで型番を分けていたヤマハが車両のカテゴリ別に型番を分けるようになり、その名称整理・変更の流れの中で生まれたものです。
同時期、それまで「YA7」と呼ばれていた(とってもおおらかで楽しくて元気に走る)125cc実用バイクもYB50同様に「YB125」と名称を改めており、ヤマハの名称整理・変更が排気量の区分を超えた大掛かりなものだった事が伺えます。
という訳で、YB-1の「YB」の部分に関しては謎が解けたようですが、
問題は「1」です。
そもそもYB50は1996年時点で約24年間販売されており、到底「1」を付けられる状況ではありませんでした。YB50一族の歴史を「7ボーンフレーム初代」にあたるF-5シリーズまで振り返っても直接関連しそうな情報がなく、正直頭を抱えたのですが…
ふと、80年代後半〜90年代前半に掛けて、ホンダが「シリーズの原点回帰」「心機一転」的なニュアンスで幾つかの定番シリーズに「○○-1」と銘打って、大々的に売り出していたのを思い出しました。
当時過熱気味だったレーサーレプリカブームの中で、CBRへと進化したCBシリーズを原点回帰させんとばかりに登場したがタイミング早過ぎたのか売れなかったCB-1。
後に中型・大型ネイキッドのベンチマークとなり、長らく大定番として君臨した「Project BIG-1」の産物ことスーパーフォア。
NS50F、NSR50と過激さを増す中で、いきなりコンセプトを変えて登場し、ユーザーフレンドリーなNSシリーズとして大人気マシンとなったNS-1。
ライバル他社の動きとはいえ、1990年代前半はバブル経済が崩壊して日本全体が足払いを食らったような状態になっており、何かと「原点回帰」「心機一転」が求められる空気ではありました。
あくまで個人的推測の域を出ませんが、当時のヤマハが「バイクの原点回帰的な50ccマシン」に「1」の名を与えても、何ら不思議はありません。
話は脱線しますが、「○○-1」というネーミングで原点回帰や心機一転を表現する…というアプローチは、そもそもホンダが始めたものではなく、ネーミングの手法としてはそれ以前から存在したものでした。
比較的わかりやすい例を挙げると、いきなりゴージャスで派手になった「仮面ライダースーパー1」(1980)があります。
既に沢山の先輩ライダーが存在する中で敢えて1を名乗ったのは「1980年代における1号ライダー」という意味なのだそうで、まさに心機一転にして原点回帰だといえます。
また、1という言葉には「ナンバーワン」「オンリーワン」「一番」「一等賞」といった力強く統一感のあるニュアンスも含まれており、非常にインパクトの強いワードだともいえます。
必ずしも「1を付ければいい」という訳ではありませんが、YB-1が「1」を名乗る事自体には違和感は感じませんし、バイクに似合った良いネーミングだと思います。
名前もマシン自体も「バイクの原点回帰」を強く感じさせてくれるYB-1。
これからも、原点を感じさせてくれる走りで日々を楽しんでいきたいですね。
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