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ラビット、原付からバイクになる。③【完結篇】〜新たなる力、新たなる旅!の巻

前回までのあらすじ
筆者の愛車・ラビットS301(サンマル子)はツーリング用途で多用している都合上、エンジン内部パーツ等の消耗パーツの調達性や今後の長期的運用を考えた末…以前より計画はしていた「150cc化改修」を結局行う事に。
 
改良型エンジンを組み上げる傍ら、車体の中型バイク登録が完了。
ゴールはもうすぐ。作業は佳境に入る…!

先日無事に中型バイクとしてのナンバープレートを取得し、法的には公道復帰を果たした状態となったサンマル子ですが…肝心のエンジンがちゃんと動いてくれないとお話になりません。
しかも、今回の150ccエンジンは筆者が初めて手掛けたラビットS301用チューンドエンジンであり、走らせてみないとわからない未知数な要素が多いのもまた事実。
果たしてどうなるか?


攻撃型150ccエンジン「コ式二四型」の誕生

過去記事でも触れましたが、2023年にサンマル子のエンジンが初めて壊れた時から「ラビットS301エンジンの150cc化」については検討と計画を進めてきました。
 
そもそもラビットS301の海外輸出仕様(S402)はエンジンをボアアップさせた150cc仕様であり、元となった125ccエンジンにも、150cc化に対応できる程度のキャパシティが備わっています。
とはいえ、ボアアップすれば色々と余裕がなくなるのも否めません。増してや2ストエンジンなので、キャブレターからの混合気を一旦クランクケース内に吸い込み下降するピストンで圧縮する「一次圧縮」の行程についても、よくよく考察する必要があります。

ともあれ、内燃機屋さんでボーリングしてもらったシリンダーに中華ピストン(加工済品)を仮挿入して相性を確認してみます。
ピストンがピストンなので正直な所加工精度を信頼できず、シリンダーとのクリアランスは若干ゆるめにお願いしていたのですが、内燃機屋さんの素晴らしいお仕事のお陰で、それでも程よい塩梅のタイトさが保たれており、とてもイイ感じです。
こういう所にプロの確かな経験値やスキルが現れるんだな…と、思わず唸ってしまいました。
 
なお、過去記事でもちょっと書きましたが…
このTS125用激安中華ピストン、そのままラビットに付けたら(個体差はあるでしょうが)高確率で短期間か一撃にてブッ壊れる中華クオリティな代物なので…エンジンについての必要充分な知識と理解と経験、ピストンの工作精度確認・加工技術をお持ちの方が「自己責任で」使う類のブツです。
 
安直にやると格安どころか逆に高くつきますのでご注意下さいませ。

ラビットS301B型のエンジンの吸気バルブ形式は「クランクウェブロータリーバルブ」というもので、キャブレターからの吸気を「クランクケース内壁に密着して回るでっかいクランクウエイト」で解放したり遮ったりしてコントロールする、シンプルかつ合理的ではあるのですが…クランクケース周りを組む際に結構タイトな精度が求められるメカニズムです。
パッと見クランクケースリードバルブ式に似ていますが、リードバルブは備わっていません。
 
今回組んだエンジンではインテークマニホールド→クランクウェブに至る吸気経路(左右クランクケースと一体)の形状を大幅に変更し、ある程度の回転域でのアクセルオン時に「ドカッ」と吸気の塊を吸い込む意図で加工しています。
これはボアアップに伴う吸気量と流速の増大に対応したものです。
 
他にも、キャブの一部内壁やインテークマニホールド内壁にも流速アップに対応した乱流(スワール)発生を狙った加工ないし形状変更を入れており、エンジンの方向性としては総じて「ほんのり攻撃型」と言えます。
 
あとピストン質量が変わった(スズキ用ピストンだから当然だ)ので、その分クランク側のウエイトを僅かながら削り、それなりに動的バランスを保っています。
クランクウェブロータリーバルブ形式のめんどくさい所は一次圧縮の効率を上げると動的バランスが崩れエンジンの振動が増しがちな点で、ラビットS301Bのエンジンはクランクに鉛製ウエイトを仕込む手法でこの問題に対応しているのですが…ピストン及び吸気経路形状・サイズ等が変わったため再調整した次第です。
 
結果を先に書きますと、試行錯誤の末「ちょっと振動増えたかな」程度まで振動を抑え込む事に成功しました。(特にツーリング用途だと)割と軽視できない要素かな?と個人的に思います。

新エンジン「コ式二四型甲

という訳で、約1年に渡る研究と試行錯誤の末…
遂に完成した「コ式二四型」チューンド150ccエンジン。
25年振りに組んだバイク用チューンドエンジンにして、ラビットの本格的エンジンチューンとしてはデビュー作となります。
 
実際は上記した以外にも細々した箇所に手を入れているのですが、ラビットS301のエンジンの良さや味わいは極力活かしたいので、いわゆる魔改造の類にまでは踏み込んでません。
このコ式(攻撃型)エンジンはこれからサンマル子で改良熟成を進めていき、次に控えている3速ミッション搭載のS301Bをスクランブラー+ラリーマシン化するための布石とする予定です。
 
なお…攻撃型などと微妙に中学生めいたワードを使ってますが…
元はといえば、今回の中華ピストンを用いたボアアップ手法を紹介してくれた同志N氏や今回ボアアップの素材に使ったジャンクシリンダーを物々交換でくれた某Lさん(ラビット女子?)達とファミレスで飯してて、たまたま某北朝鮮の某コンギョの唄の話題が出て脳みそにコンギョが鳴り響き、その流れで命名しただけなので…実は非常にしょーもない命名経緯のエンジンです。

スズキ GP125(1978)
画像は1979年モデル。

今回のエンジンチューンにあたり乗り味のベンチマークとしたのは、奇しくもTS125用ピストンと同じくスズキ車である「GP125」です。
 
以前ちょっとお借りした事がある(上画像はその時のものです)のですが、ロータリーバルブの特性である「ゾーンで感じるパワーバンド・トルクバンド」のメリハリが凄くしっかりしていて、2ストエンジンにおいて一般的に語られるピーキーな味わいとはまた異なる面白さを堪能できました。
 
GP125とラビットS301Bとではエンジン構成もバルブ形式も別物(GPはロータリーディスクバルブ式+ホリゾンタルキャブ横付け)ながら、吸気タイミングや流速や一次圧縮のバランスを変えることで、ラビットにおいてもトルクバンドのメリハリを増し、常用速度域での走りの味わいを(ラビットらしいおおらかさを残しつつ)より楽しくする事に成功しました。
 

ATフルード充填器について

ラビット専用ATF充填器「通い妻2号

で、いきなり話は変わりますが、サンマル子のエンジンはトルコンATなので、今回のような分解組立を行う際はその都度トルコン用のATフルードを抜いたり詰めたりする必要があります。
増してや…ラビットのトルコンはどら焼きを横にしたような形状の円盤型で内部にエアが溜まりやすく、トルコン充填時のエア抜き作業が結構面倒です。
トルコンにエアが多く溜まると駆動伝達効率が低下するのみならず、エンジンに要求される回転数も上がって燃費もエンジン負荷も増してしまい、良い事がありません。
 
という訳で、筆者は100均で販売されている調味料用の容器を小加工して「ラビット専用ATフルード充填器」をでっちあげました。トルコンユニット本体のATフルード充填・排出・エア抜き用ドレンの口にぴったりフィットし、リザーブタンク経由ではなく直接トルコンに(エア抜きしながら)フルードを注ぎ込むためのものです。
こういうDIYも、ラビット暮らしを快適に過ごすための楽しみのひとつです。

前回こわれたエンジンの今後

残念ながら10月に壊れてしまったエンジン2号機は、コドコマ後夜祭のための人吉遠征に始まり、南阿蘇通いやラビットキャンプを筆頭に大活躍してくれた、思い出の多いエンジンです。
このエンジン、実はお迎えした時点でそんなに走ってなかったので腰下は素のままで、そう考えたらよくもまあ元気に頑張ってくれたものです。感謝しかありません。
 
という訳で、このエンジンもエンジン初号機同様に「コ式エンジン」へモディファイする事にしました。今後はサンマル子の予備エンジンとして活躍します。
(今回組んだコ式エンジンは初号機ベースです)
エンジン置いた際に貴重なリアブレーキシューを割ってしまいましたが…
 

試走段階、そしてツーリングへの復帰

ラビットは日々の暮らしの中でこそ輝く

ともあれ…新しいエンジンは至って順調に組み上がり、NoteやSNSのネタに困った位あっさりと起動してくれました。
アーマチュアや点火系統は以前と同じものをそのまま移植しているので、アイドリングも点火タイミングも非常に安定しており、調整の必要がなかった程でした。
今回組み合わせたトルコンATユニットは、最初に使っていた個体のフリークラッチを(8月に阿蘇・大観峰にて固着した教訓を反映し)改修したものです。
 
最初は近所をポンポン走って各部の微調整や不具合チェックを地道に行い(デバッグ工程)、2024年の暮れが迫る12月30日、エンジンの慣らしも兼ねてツーリング活動へ復帰しました。

唐津のおやつといえば、魚ロッケとからつバーガー

トルコンATの特性上、慣らしでエンジン回転数を上げられなくとも一定速度まではじんわり加速してくれますので、慣らし運転は意外に快適です。
変速ショックがないのも、慣らしにおいて好ましい要素です。
 
年末でゴミゴミしている道を避け、わざと山間部を経由してパワーアップに伴う登坂能力向上を検証したりしつつポンポン走ってたら、いつのまにか唐津にいました。
(ライダーあるある)
 
これはもう「からつバーガー」食うしかないな!
という訳で、ちょっと久々のからつバーガー。
相変わらずおいしいけど、なんか以前よりジューシーさや香ばしさが気持ち薄れたかな?と思わなくはありません、が…ご時世がご時世ゆえ今のおいしさを楽しむ事にし、再び慣らしの旅へ。

コレガレ〜

そして、気が付いたら佐世保にいました。
慣らしでも何でも、走る口実があれば走ってしまうのがライダーというイキモノです。
 
とりあえず年末休みの午後をのんびり満喫するため、アクセス良好だけど絶妙な隠れ家感がライダーの感性をくすぐるライダーズカフェ「コレガレ」さんに顔出し。

オーナーのシモダさんやカフェ担当のCoffeRiderさん、ライダー仲間の方々とのんびりだべっていたら…SNS上でたまにHNを見かけるライダーさんが何やら筆者が育った長崎某エリアの地元民しかわからないネタを話していたので話に混じってみると
 
何と、まさかの幼馴染でした。
実にジャスト30年振りの再会。うれしい年末サプライズです。
 
「お前バイク乗っとったんか!!!」
と互いに仰天し再会を喜び握手。これからは、ライダー仲間としても楽しく交流できればと思います。こういう予想外の出会いもあるから、ライダーは面白いですしやめられません。

サンマル子の雨降らせっぷりは150cc化しても変わらず

談笑したりおいしいサンドイッチを頬張ったり外の入江をボヘーッと眺めたりと色々やってたら、いつのまにか20時前。
 
そして帰ろうとしたら、外は雨でした。
雨中ツーリングは阿蘇で散々やったので雨男ラビット呼ばわりされた以外どうという事はありませんが、150cc化したサンマル子の初陣に相応しい感じのオチだといえます。

ゾンビはいません

あと、今回は2024年の走り納めでもあるので、九州北部にその名を轟かすのみならずアニメ「ゾンビランドサガ」で変な知名度をも得るに至った老舗の焼鳥屋「ドライブイン鳥」糸島店に立ち寄り、おいしい鳥めしで今年のツーリング活動を締めくくりました。
時間があればお店ご自慢の焼き鳥も堪能したかったのですが、閉店時間までそんなに時間的余裕がなかったので…今回は鳥めし(定食)のみ。
 
ちなみにドライブイン鳥は「オタクの聖地」である以前に元々大人気なお店で、伊万里にある本店へ並ばず入店するのは至難の業。
しかし!この糸島店やゲーム会社との協業で生まれた佐賀店はそこまでヘビーに混む事は少ないので、伊万里本店ならではの雰囲気や味へのこだわりがない方や鳥めし目当ての方は、これらの支店を狙ってみるのもオススメです。
(福岡市内にあったマークイズももち店は残念ながら閉店しました)
 
ともあれ、楽しい慣らしの旅はこうして無事に終わりました。
 

モノクロで日常やツーリングのスナップを楽しむ。

今回の記事内画像や最近のSNS投稿画像を見てお気付きになったか違和感を覚えた方がいらっしゃるかもしれませんが、最近、日常やツーリングでのスナップフォトをモノクロ撮影へと切り替え(戻し)ました。

筆者はかつて機械式フィルムカメラにドハマリしていた期間が長らくあり、その頃は自家現像のしやすさとフィルム代節約、彩度に惑わされない構図やトーンの組立てのしやすさ、単純な美しさといった理由からモノクロ写真を多用していました。
西洋絵画由来の技法のひとつ「グリザイユ技法」(モノトーンで構図とトーンを組立て、後から彩色する技法)に長年親しんできたせいも多分にあります。
 
とはいえ、振動の多い旧車でのバイクツーリングに精密機器であるデジカメを持参するのには色々と課題があり、筆者のかつての愛機・リコーGRも内部への埃の混入をどうしても防ぐ事ができずじまいで終わってしまい、自ずとスマホ(iPhoneSE2)でのスナップがメインとなります。
しかし、iPhone純正カメラアプリを筆頭とした多くのカメラアプリだと、モノクロ写真を撮るには「一旦カラーで撮影し、その後フィルターを掛ける」手順を踏む必要があって煩雑ですし、それはスピード重視のスナップショットにおいて致命傷です。
また、操作のUIもシンプルでありながら撮影に必要な機能や表示はキチンと備わっているものが望ましく、モノクロ撮影をサクサク楽しめるアプリの少なさに悲しみを覚えました。面白いのに…

やはりライカ。流石はライカ。

そんな筆者のワガママに応えてくれたのが、ライカ公式カメラアプリ「Leica LUX」でした。
 
このアプリは無料版だと使える機能が限定されるのですが、そもそも簡素なカメラ機能しかないiPhoneSE2との組合せであれば全く問題ありません。
素早い起動に加え見やすいファインダー画面、簡単に行える露出補正が素敵です。もちろん起動直後から直ちにモノクロ撮影可能で、モノクロスナップをサクサク撮って楽しめます。
但し、無料版でも使えるエフェクトや有料版限定で使える擬似ボケ機能・ライカ製各種傑作レンズのエミュレート機能はちょっと処理がわざとらしい感じだった(新しめのiPhoneにて別途確認済)ので、個人的には無料版でも充分良いかな?という印象です。
 
興味のある方には素直にオススメできます。

これからのサンマル子とラビット旅。

色々ありましたが、これにてサンマル子は「150cc中型バイク」として新たな人生を歩み始める事となりました。
 
本項執筆時点でエンジン慣らしのため300km程度乗った印象としては、阿蘇や由布岳の急な登りで失速しがち(通称:ウミウシモード)な問題は今回の改修で消滅しており、元々が200cc級エンジンへの搭載を前提に設計されたトルコンATユニットのボアアップエンジンとの相性の良さを随所で感じる事ができました。
そもそもラビットS301とトルコンATユニットとの組合せは初期型(S301A)の時点で検討されていたのですが、パワーとトルクの不足が原因で製品化にまで至らず、エンジンとマフラーの改良でパワーアップしたB型になってようやく採用された…という経緯があり、ここからは推測なのですが「125ccエンジンだとB型でもパワー的にギリギリ許容範囲レベル」だったのではないか?と考えています。
だから、経年に伴うダメージでパワーダウンした現在のS301BH(トルコン車)の登坂能力がおしなべて悲惨なのでは?とも。あくまで推測ですが。
 
逆を言えば、150ccエンジン+トルコンATの組合せは色々とベターな選択なのかもしれません。
登りでの鈍足はおろかゼロ加速でタヌキにすら負けた今までが冗談だったかのように余裕風を吹かせ始めた新生サンマル子に乗り、そう感じています。
あと、最も懸念していた燃費悪化は、慣らし運転である事を加味しても杞憂だったようです。
 
で、これにてサンマル子はハードウェア的に「ほぼ完成」です。
まだまだ車体強化やショック変更、マフラー改良etc.やる事は多いのですが、バイクとしての基本的なフォーマットについては現状で満足しています。
あとはのんびり改修を重ねながら、2025年以降も引き続きツーリングやキャンプをどんどん楽しんでいきます。

やはりラビット…もとい、サンマル子との旅が至高の癒しです。
 
2025年も、どうぞよろしくお願いします。

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