「審査」と「指摘」って言葉が上から目線に聞こえるのかも、という話
猿の惑星って、まだ続編つくるんだ。
さっそく愚痴なんですが
先日、審査結果の指摘を出したところ
構造設計者から「構造計算に使う階高には梁下げを考慮しない」旨の回答が来ました。
はぁ?
しかも2件立て続けに別の設計者から同じ回答が来たんですよね。ちょっと深堀してみましょう。
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そもそも構造階高とは。
構造計算において梁は線材(一本の線)に置換したものをモデルとします。
断面図で見て梁の中心に線材を仮定するので、線材は梁天端から梁せい/2だけ下がった位置となります。
このように線材モデルに置換した時の梁から梁の距離を構造階高とか呼んだりします。
ここまでが超初歩。
さて鉄骨造でデッキプレートを用いた際に梁天端はFLから130とか下がることが良くあります。
ここで梁天端がFL-130、梁せいが600とすると梁の中心は
FL-130-600/2=FL-430
これが構造上の梁の位置ということになります。
ある階の意匠階高が3000とした時その階の見上げの梁と見下げの梁が同じレベル設定であれば
3000-130-600/2(見上げ)+130+600/2(見下げ)=3000
と意匠階高と構造階高は偶然にも同じになりますが梁下げは-130だったり-145だったり階によって異なることは十分起こり得ます。差異は微小ですが。
また、最上階の見上げ梁はデッキではなく梁下げ無しだったりすると
3000-600/2(見上げ)+130+600/2(見下げ)=3130
で3000と比べると5%異なる結果です。
いわんや最下階RC梁。
5%が大きいか小さいか、余裕度の取り方にも左右されるので何とも言えないですが、構造階高は意匠階高ではないことがご理解いただけるかと思います。
さて最初の話に戻りまして
私は審査の指摘で「各階の梁下げを考慮していない」を指摘したのですが、戻ってきた答えが「梁下げを考慮しない」でガックリきたわけですよ。
10年くらい審査業務に携わっていますが覚えている限り考慮しないと堂々と言う人は居ませんでした。四号とか木造は知らんけど。
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超初歩・初歩から少し歩を進めて。
構造モデルの取り方は上記が教科書通りなのですが
ある程度は概算で(いい加減に)やっても問題ないだろうことが慣例となっています。
『実務から見た鉄骨構造設計』の中で「階高は骨組みの構造階高を取るのが原則である。~それでは手間がかかるため実務的には簡略化した方法で~各階の梁せいの差は大きくても5cm以内である。したがって~ほぼ等しくなるので~」と言葉に言葉を重ねたうえで
意匠階高をそのまま構造階高とみなす旨が記載されています。
※現在の電算プログラムなんか影も形も無い頃の記述であって
余計なこと書きやがって、という気持ちも有りますがこの時代があったことも事実です。
他にもRC造の共同住宅だとバルコニー側は梁下げ無し、廊下側-50とかも良くありますが-50は無視することも慣例です。100mmが限度かなぁ。
更に余談ですが
柱は余力を持たせて梁がギリギリ設計になることは良くあります。その場合、構造スパンはキッチリと細かく設定して構造階高はいい加減でも良し、という考え方もあるでしょう。
何が言いたいかというと
構造モデルを正解に近づける努力は必要だと思うものの
極論、余力さえ有ればなんとかなる
ということです。
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本題はここからです。
今回の私の指摘に対して
①よい回答
梁下げ考慮は一般的に行われていることであり考慮するよう修正する。
②普通の回答
梁下げを考慮した場合との階高差異は微小であり、余力は十分に取っているため問題ない。
③普通より劣る回答
梁下げを考慮しない解法も存在するため考慮しない。
④悪い回答
梁下げ考慮なんて今まで言われてない、指摘が細かい、ムキィー
設計者お二人いましたが、③と④でした。
疲れるわぁー
③の人は事前申請で考慮してたクセに本申請で考慮してこなかったんだけど
なんの心境変化があったことやら。
④の人は結局修正してきたんですけどね修正の仕方が間違えていて、コイツ本当に構造階高が分かってないや、という印象でした。
デッキが梁の剛性に効いてるからデッキ天端で~うんぬん、などと供述しており余罪も含めて慎重に捜査しています。
私としては、
ある程度の余力もあるのでなんとかなる、だが指摘をしないわけにもいかない、指摘をした時点で修正が間違えていてもこちらの責任ではない、
等々を考えまして
もう勝手にしてください、って感じで終わらせました。
設計者にも色んな人が居ますよね。
方針を聞いただけなのに「何が悪いんだ」と怒鳴る人とか。
修正を要求したわけじゃないのに、って思うんですけど
ここで審査側にも色んな人が居まして
細かいところを・構造に関係ないところを絶対に修正しろ、みたいな人も居ます。
そういった審査者に当たったことがあると、指摘=設計にケチ付けた、みたいな気持ちが直結しちゃうのかもしれないですね。
人間には技術力の高い低いのx軸と人間性の良い悪いのy軸、細かいか大ざっぱかのz軸があって
それが設計者と審査者の両方に同様にあるかと。
それが審査項目で複雑に絡み合うので
まぁ一筋縄ではいかないですよ。どっちの立場も。
あぁ、プライドの軸もあるか。面倒くせぇ。
ただ少なくともムキィーってなるのは人間性が敗北していると思います。
理由を言葉で言えば終わるのに。ヒトに進化してくれ。
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