構造審査よもやま話 第3話 〜結局、使い慣れたものが一番〜

のどもと過ぎれば後は野となれ山となれ





前回、仕様規定の話を書いていて思い出したことがあったので本日は一般的な仕様規定の話

仕様規定とは簡単に言うと守らなければならない法律、です。



そこそこ大手のゼネコンの構造設計者さんなんですが、「梁主筋必要量の仕様規定を満足していませんよ」という指摘を出したところ

「計算しているから仕様規定が微小に満足していなくても問題ない」

ときました。きやがりました。


ちゃんとした方だと思っていたんだけどなぁ…



ただ、これ見落としでも技術力の話でもなくて、実際に私も設計者だった時、この感情は持っていたかと思うのです。


どういうことか、深堀してみましょう。


~~~~~~~~~~

先ず前提として、この話は普段どういった規模の建物を取り扱っているか、で
かなり常識というか思い込みというか、立ち位置が変化します。

4号、木造、ルート1・2ですと感覚が違うかと思います。

限界耐力と時刻歴も除いておきます。耐久性等関係規定の話は混雑するので省略します。法律論なので注意書きが多くなります。例外もあります。ただし、もあります。詳細は各令・各告示に従います。あとでスタッフが美味しくいただきます。

~~~~~~~~~~



私はゼネコンで構造設計者だった時、その会社の設計手法・設計思想に沿って設計してました。

当たり前ですね。


ルート3で設計するのが標準で、例えば小梁なんかは会社が標準の小梁断面を一覧にしているので
ここは一覧の中からB1を選ぶ、こっちはB2、どうしても納まらなければ標準外を自分で作る、
って感じでした。

(実際は、H違いでB1A・B・C、B1からB15くらいまで用意されてて。
施工まで含めての話で、「B1」って言うだけで300*600、上下3-D22、D10@200って誰しもが共通で思い浮かぶと
設計から図面屋、現場監督、型枠・鉄筋屋まで話が早く間違いが少ないシステムでした。

退職してから十年以上なのに思い出せたわ)


そうなると、仕様規定って意識しないで設計できてしまうんですよ。仕様規定を満足しているのがもともと用意されてるから。

かつ、このような会社だからなのか、構造だからなのか、法律には疎かったです。法令集とか設計実務で開いたことありませんでした。


法律に疎いのは今も設計者全般に言えますが。語弊ありますが。


時たまで仕様規定「ルート1とルート3の方向別採用は、両方向とも定着40d ※ただし計算による」くらいもありましたが
「じゃ両方40dにしとけばイイじゃん」という空気だったかと。ただし書き計算にかける労力を他のコストカットに分けたほうが効率良し、の感覚でしたかね。


厳密に考えると・大枠で考えると、例えばカットオフ長さなんかは付着の仕様規定のただし書き計算と言えるのでしょうか。

ただ当時は仕様規定を計算していた、との意識は全くありませんでした。


~~~~~~~~~

一般的な話として
上記のように仕様規定には計算して逃げられるものと逃げられないものがあります。

必ず守らなければならないものと、計算してOKなら守らなくてもよいものと。


また視点を変えると、ルート1・ルート2・ルート3、と計算は深くなる方向なのですが、ルート1ではルート3ほどの深い計算はしないから仕様規定でガチガチに縛っておく、というのが法の思想です。

ルート3ならCo=0.2で良いが、ルート1なら0.3、とか分かりやすいでしょうか。



なんとなくの感情ですがルート3やってれば全て良し、という気持ちは理解できるものがあります。

というか設計者だった時はその気持ちでした。


もちろん今は審査側として、仕様規定の柱主筋0.8%をルート3計算で適用除外する設計者とかも居るので
色々な思想があるなぁ、と思いながら見ています。

そんな設計者もやはり法律に疎いので、ルート3の適用除外で最大級の風と雪を検討してなかったりもしますが。


(単に柱をもっと絞れるだけでは?)(D16でも入れて0.8%にすれば良いのに)
筆者は自由な設計意思を尊重しています。



~~~~~~~~

さて話を大元に戻しまして、見落とされがちな仕様規定の一つに

RC梁の主筋量は、0.4%もしくは必要鉄筋量の4/3倍のどちらか小さい方以上

というものがあります。読みづらいですね、でもこういう書き方なんです。

この仕様規定自体の解説は省きますがRC基準の逃げられない仕様規定です。


問題になるのは主に基礎小梁です。

0.4%入れるのが現実的でなければ検定比0.75に抑えるしかないか、と。


ちなみに想定される問答

設計「布基礎だから問題ない」
審査「(通常の小梁計算してたクセに)        では地反力で設計して0.4%と4/3確認してください」

設計「RC基準は法律ではないので問題ない」
審査「(梁の検討をRC基準以外でなんてできないクセに)
梁の検討をRC基準で行うならRC基準の仕様規定に従ってください」

設計「直接地盤に支持させるので問題ない」
審査「では小梁下部をじゅうぶん転圧させる旨を構造図に明示ください」

設計「仕様規定だから微小に満足してなくても問題ない」←new!!
審査「ア〇か。
(仕様規定という言葉をご理解ください)」




実態の話としては

上に書いた通り地盤がある程度支えてくれるのでそもそもの設計応力が小さくなるんだと思います。

設計応力小さくなれば必要鉄筋量も小さくなるので4/3倍もクリアできる、ので本当の意味での問題ではないのかな、と。


ある程度、が、じゅうぶん転圧、なら100%だと思いますが、それなりならそれなりかと。

それなり、って調査も証明も出来ないですよね。なので質疑にしています。

転圧だって言ってくれれば私はOKにしてます。






実際に転圧するかは知らんよ、知る由もないし。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?