~仙台圧勝~ J1 第2節 湘南ベルマーレvsベガルタ仙台
明治安田生命J1リーグ第2節 湘南ベルマーレvsベガルタ仙台 2020.7.4
ゴールが決まった瞬間の体の底からくる喜び。試合が終わってからの余韻。これだわ。この感覚だわ。
133日のベガルタの試合。133日ぶりのベガルタレビューやっていきます。
~個人タスクから読み解く4-3-3~ J1 第2節 湘南ベルマーレvsベガルタ仙台https://note.com/torres9_vega/n/n073ee0f3a295
前回仙台の個人タスクにのみ焦点を当てた記事を書いたので、今回はそれと被る部分はありつつも、両チームの駆け引きについて書いていきます。
試合前両チーム状況
湘南ベルマーレ(13位)
開幕節浦和戦では石原のゴールで先制するも最終的に逆転負け。しかしながら5バックと中盤のスライドは安定感があり、また後方からの組み立ての意識も感じられた。中断期間にそれをアップデートすることはできたのか。ホームで迎える一戦。
ベガルタ仙台(7位)
開幕に先立って行われたルヴァンカップでは2-5の大敗。1週間後のJ1開幕節もチームとしてのやりたいこと、形があまり見えないまま名古屋と引き分けた。この中断期間には開幕前に怪我をしていた長沢らが復帰。さらには西村もチームに加入した。試合前には4-3-3への挑戦を指揮官が示唆し、その完成度が問われる一戦。
※前節のレビューはこちら↓
~この場所から~ J1開幕節 ベガルタ仙台vs名古屋グランパス https://note.com/torres9_vega/n/n03a8e083f04a
スタメン
湘南は開幕節先発した山田に代わり松田が左のセンターハーフに入った。その他のメンバー変更はなし。対する仙台は既報通り4-3-3を基本システムにし、GKには小畑が入るなど、開幕節から6人を変更しスタート。
前半ー横のラインを意識する湘南の守備
もちろんシステムが異なることもあるが、この試合の両チームは守備をする際のチームとしての守備に対する考え方が違ったように思えた。まずは湘南から見ていく。
湘南の選手たちが意識するのが横のラインだ。彼らは5-3-2の陣形を組み仙台のボール保持攻撃に対応するが、その守備はまず2トップのCBに対するプレスから始まる。二人はラインで結ばれた一定の距離感を意識しつつ、サイドにボールを追い込むように寄せていく。そうしてSBにボールが渡ると今度はCHの松田や斎藤がSBに対して寄せ、同時に2トップと同様その横の選手が一定の距離感を保ちつつスライドする。このようにして仙台の後方の選手とに枚数を揃えながらプレッシャーをかけることで高い位置でボールを奪う目論見があった。
しかし仙台の個々の立ち位置がそれを難しくさせる。
仙台はビルドアップの際、SBが大外ではなくやや内側でプレーし、相手のCHを引き付ける。それと同時に西村が相手のWBや左CBをピン止めし、行動を抑制。このことにより松下がCHの間で受け、前進することが可能になった。個人タスク編の記事でも書いたが崇兆は特に両足でボールをコントロールすることが得意な選手であるため、斎藤のプレッシャーに対しても両足で柔軟に対応。椎橋とも関わりつつCHの背中側のスペースにボールを届けた。
もちろんアンカーの福田がよりCHと近い距離を取ればこのスペースを消すことはできたかもしれない。しかしそうすると椎橋へのプレッシャーが弱まり、今度は手薄な逆サイドへ展開され、ウイングのジャーメインに独力で突破されてしまう。仙台のウイングの質が相手に対し脅威を与え、横のラインの調整を難しくさせていた。
前半ー中央のスペースを意識する仙台
湘南の選手が各ラインでスライドしつつ仙台のサイドに対応してたのとは対照的に、仙台はサイドという概念をなくし、ゴールに最も近いスペースである中央のスペースを埋め、相手に侵入させない、もしくは人数が多いことからあえて侵入させ奪うという形をとっていた。
こちらは21分のシーン。中央のスペースをかなり意識していることが読み取れる局面。ボールホルダーに対しプレッシャーをかかっていなかったため松下がすぐさま出て寄せる。すると松下がもともと埋めていた中央のスペースが空いてしまうが、そこをサイドの西村がすぐに埋めた。もちろんこれは岡本へのパスを許容しクロスを上げられる恐れもある。しかしそれと中央で自由にプレーされることを天秤にかけた際、チームは後者を重要視した。
先ほど仙台のSBは内側の位置で組み立てに参加すると書いたが、彼らは守備時もペナルティーエリア幅の内側を初期位置に設定する。相手に対し簡単に中央に侵入させないために、サイドの選手には飛び込み過ぎず、時間をかけさせるようなアプローチを行っていた。
湘南の左右のCBが持った際にも、仙台が中央のスペースを重視することに変わりはない。ここではサイドにボールを出されないよう、ウイングがWBへのパスコースを消しながら相手を中央へ誘導する。そこでパスを待つCHに対し、関口松下のIHがマンツーマンでつくことでボールを奪った。3センターが中央を常に埋めておくことで、相手の中央からの侵入を阻むことが可能になった。
福田は長沢によってCBからのパスコースを切られているためなかなかボールを受け、捌くことが出来ない。そこで彼はDFラインに降り、ビルドアップに参加する。
加えて松田や鈴木も立ち位置を変えたがいずれにしても仙台のブロックを中央からズラすことは出来ず。蜂須賀にとっては、鈴木に対してつり出されることがなくなったためむしろ好都合な湘南の対応だった。
またより高い位置で、CBに対して長沢がアンカーへのコースを切りつつ寄せた場合、IHもCHへのパスコースを背中で消し(特に関口が逸品)、完全に近くのコースをなくすことで確率の低いロングボールを湘南CBに蹴らせることに成功した。
湘南はおそらく「CFに楔→ライン間で前を向くCHに落とし」という形の前進をしたかったように見えた。現に石原やタリクが受けた後、素早くCHがサポートに回るといったシーンが見られた。いずれにしても仙台のブロック内でそれをはっきりと発揮することは出来なかった。
このように中央に入れない湘南、対照的にCHを引き出して中央を使う仙台の構図で前半は進み、ジャーメインの得点もあって1-0で折り返した。
後半-違いを見せる選手交代
湘南はハーフタイムで3バックの並びを変更。石原広数が左のCBに入り、元の大岩は右CBへ。湘南は後半からボールを奪ってすぐのサイドチェンジを意識しており、そうして鈴木に渡った際のサポートを石原は務めた。
しかしながら両チームの構図は前半とあまり変わらなかった。出足こそ湘南のほうがよく、茨田と大野も入るが決定機は作れず。そんな湘南に対し仙台は58分にゲデスと赤﨑を、その数分後に山田を投入し畳みかける。
中でもゲデスはいいランニングを見せた。彼はこの試合で仙台の湘南攻略の対象となるCHを引き付けながらWBとCBの間に突入。そうすることで元々CHがいた場所にスペースを生み、山田はその位置からミドルシュートを放ったり、横の松下に出し決定機を作るなどの仕事をこなした。
湘南も中に入れないならと、豊富なバリエーションのクロスを持つコバショーや、中でターゲットになる指宿をさらにを投入。それを仙台は冷静に跳ね返し続けスコアはそのまま動かず。0-1、仙台の勝利で試合は終了した。
雑感
完勝。仙台に関わる全ての人の圧勝。チームが、サポータやライターなどを含めたクラブを構成する全員が、その他たくさんの人がこの長い中断期間に全力を尽くし、湘南が追尾できないくらいの大きな一歩をこの試合で踏み出した。前回の記事に仙台のシステムへの感想は書いたからここではとにかく最高の試合だったって言っておく。久々のAURAと一緒に。