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~現実~ J1第7節 柏レイソルvsベガルタ仙台

2020明治安田生命J1リーグ第7節 柏レイソルvsベガルタ仙台

J1が再開して早1か月。仙台は3連戦最後、そして7月最後の試合を三協フロンテア柏スタジアムで迎えます。Jリーグ全体として引き続き制限付きでの観客導入が行われており、柏はファンクラブ限定でのチケット販売を実施。2500人の柏サポーターが拍手で選手を後押ししました。この試合で両チームが見せたものは何だったのか。今回も振り返っていきます。

試合前両チーム状況

柏レイソル(7位)

再開後3試合を落とすも、ここ2試合は合計7得点を奪い連勝。3連勝をかけてこの一戦に挑む。ネルシーニョ監督に率いられるチームは、手堅い守備からのオルンガを筆頭としたショートカウンターが持ち味。仙台相手にもその特徴を発揮できるか。

ベガルタ仙台(13位)

再開後初戦で湘南相手に勝利して以来白星がない仙台。基本システムに据える433に対し、対戦相手も対策を練ってきており、前節は川崎相手に2-0からの逆転負けを喫した。しかし仙台は2015年以来このスタジアムでの負けがない。その相性の良さでこの試合こそ勝利をつかみたいところ。

前節のレビューはこちら

スタメン

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柏は前節からのスタメン変更が一人のみ。ボランチのヒシャルジソンに代わり三原が出場した。その他のメンバーはここまでの2試合と変わりはなく、3連戦全ての試合でのスタメン出場になった。

仙台は前節から6人を変更。小畑、ジョンヤ、中原、そして決定的なチャンスを作れるゲデスなど、ボール保持時のアビリティーに定評がある選手が多く起用された。手堅い守備に対して効果的な攻撃を仕掛けられるか。

前半ー両監督が語ったいい入り

先述のようにボールを扱う能力に長ける選手を多く起用した仙台。チームは選手の特徴を生かした戦い方、つまりボールを保持し相手を崩すことを前提とした戦い方を取り、前半のボール保持率は55%を記録した。仙台がとったアプローチは以下のようなものだった。

スライド3

仙台は後方でボールを持つと、基本的に左サイドの中原・柳・椎橋・ゲデスのひし形での前進をまず試みる。オルンガ脇からジョンヤがボールを運びブロックを押し込み、それを中原がやや降りてサポート。その間にゲデスが内側に、柳が大外高い位置を取り、さらに椎橋が中央で同じ高さに立つ。このひし形でボールを保持しつつ、赤﨑が柏のSBとCB周辺のスペースに対しにらみを利かせた。

左での前進が難しいと判断した場合には、小畑を経由するなど無理せずに逆サイドにボールを運ぶ。右サイドもひし形を作るというのは変わらない。左で中原が務めた底の位置には蜂須賀が入った。28分には道渕が外に開いたところから内側のジャメと中原を経由し逆サイドへボールを届け、柳が強烈なミドルシュートを放った。しかし木山監督が語ったように、この右サイドからの前進は左サイドのそれと比較すると機能しているとは言い難かった。理由は選択肢の少なさだと思う。左でジョンヤ、中原は直接内側のゲデスに対し楔を打つことが出来る一方で、右の吉野蜂須賀は、道渕ジャメのDF背後へのランニングによって距離遠くなることもあって、内への楔を打つシーンが見られなかった。相手としては外さえ警戒していればいいので、対応が幾分か楽になる。もちろんだから裏に走るなというわけではないが、臨機応変に対応できればより相手に対し恐怖を与えられると思う。

さてその一方で4411のブロックを組む柏。仙台がボールをいずれかのサイドへ運ぶと、オルンガが(気分次第で)CB間に入り逆サイドへの展開をけん制。さらに江坂が椎橋をマークすると、ブロック全体がボールサイドに移動し、ボールホルダーに対して近くの選手が圧力をかける。この守備に対し仙台はボールこそ持てたものの、明確な決定機までには至らなかった。試合後、両監督ともにこの状況をいい入りが出来たと語っているのが興味深い。

前半ー仙台のカウンター対応を考える

そんな中で試合を動かしたのは柏だった。持ち前のショートカウンターから一撃を沈め、先制点を獲得する。このシーンを詳しく見ると同時に、これまでの試合で見せた仙台のカウンター対応について考えてみる。

前述のような左サイドのひし形から古賀がボールを奪いカウンターがスタート。ボールはオルンガへと渡り、江坂に落とす。この際に椎橋が江坂を捕まえられれば良かったのだが、柳の真横に立ち位置を取っていたため距離が開き、簡単に背中を取られてしまった。ここもやはり塩梅で、実際に他のシーンでは同様の立ち位置でボールを受け、逆サイドにボールを展開することが出来ていたため、その位置が不正解であるとは一概に言えない。ということで結局は椎橋自身の予測を以てしか江坂を潰すことが出来なかった。予測というのは、一般的に動物的危機察知能力に加え、記憶がベースとなって建てられるものとされる。こんなにもひし形およびSBの高さを意識して前進することは今シーズンこれまでの試合であまりみられなかったため、やはり慣れのためにだったり、記憶に刷り込むために諦めずやり続けるしかないのだと思う。

さてそんなこんなで江坂がフリーでゴールに向かってボールを運ぶ。ジョンヤは対応までにやや距離があるが追いつけそう。その中で吉野はラインを止めて、ボールのある向きに対して身体を向け続ける。さらに江坂が運び吉野が正面に立つ=正対する。足を揃えさせられた吉野はボールへアプローチすることも、ジョンヤのカバーに入ることも出来ないどっちつかずの状況になりあっさりと背中にボールを通される。最終的には仲間がそこで受けて右足を振りぬきゴール左隅へ流し込んだ。

このような被カウンター時にCBがボールの位置におへそを合わせつつ後退し、相手との距離が近づくと両足がそろって動けなくなってしまうといったシーンはこれまでの試合でも見られた。たとえば川崎戦の2失点目。平岡がカットインする山根に対し正対したことで、背中側のスペースへの対応が遅れてしまった。横浜FC戦62分、63分のシーンも同様で、相手のカットインに対し、両足を揃えたことにより斉藤にかわされ、チャンスを作られた。

正対してのカウンター対応

メリット:相手の正面に立つのでシュート打たれてもブロック可能

デメリット:足が止まるのでボールの動きに対応しづらい

正対するにしても、ジョンヤには(面を作るように)もう少し江坂の右側から寄せ、身体でパスコースを消してほしかった。それが出来ればあそこに浮き球が通ることはなかったと個人的には思う。

チーム全体としてカウンターをどう対処するか。いかに自分たちの想定内に局面を持ってこれるか。リスク管理は課題の一つであるはずだ。

前半ー柏の修正

先制して飲水タイムを迎えた柏。ここで前述した仙台のひし形に対して修正を加える。

スライド4

まず大きく変わったのは前線の立ち位置。ここまでオルンガ江坂で縦関係になってブロックを組んでいたが、修正後は横並びになった。これにより仙台2CBの運びを抑制することに成功した。またひし形の底になる選手に対して、蜂須賀には仲間、中原には主に三原(たまに神谷)が強めに寄せ、仙台の組み立てからの前進を阻止していた。

スライド5

ボール保持時には大南が赤﨑脇からウイングの横列を超えるようにして運び、ジャーメインの背後で高い位置を取る三丸へとボールを届けてチャンスを作った。トップ脇を運ぶCBに対しては、仙台はIHが出て寄せられればいいのだけど、柏ボランチを監視する役割があったためそれも難しい。これで主導権は完全に柏に。40分にはオルンガに追加点を取られ、2-0で前半は終了する。

後半ー主導権を奪い返すための工夫

前半は序盤こそ表現したいものを見せられていたが、柏に修正されると手も足も出なくなった。再びボール保持から柏ゴールに迫るべく、仙台は後半頭から西村と石原を起用し一つ手を打つ。

スライド6

特に大きな変化は中原の立ち位置だろう。前半は降りて受けることが多かった彼だが、後半は高い位置、特に柏の2ボランチの間に入ることが多かった。ここに立ちボランチを食いつかせることでハーフレーンのゲデスがより楽に受けられるようになった。図に示したように47分の同点弾もその形から生まれたもの。このシーンではゲデスに対しSB古賀食いつき裏で赤﨑が受ける。クロスを送ると西村が受け、何とかゴールへとボールを叩き込んだ。西村は今シーズン初ゴール。あの2018シーズンも、1点取ってから良いプレーがどんどん出てくるようになった記憶があるので、今シーズンもここからの活躍に期待したい。

後半ー現実を見せる柏

なんとか1点取り返した仙台。ここからさらに攻勢に出たいところだったがしかしスローインから江坂へと繋がれ、椎橋を身体で弾き飛ばしたところからオルンガへスルーパス。吉野がやや外に追い込むも、深い切り返しで中を向かれゴールへと流し込まれた。実況下田さんの「最後はボックスでオルンガがリアリティーを見せました」という言葉が印象深い。

スコアさをまた広げられ意気消沈の仙台。ボールを持ってもなかなかスピードが上がってこないし、効果的なカウンターにも出れない。隙から与えたPKを小畑がストップしたがそれもチームに勢いを与えることはできず。上向かない状況の中でさらに3点追加された仙台。もうそれについてどうこういうつもりはない。仙台のライフは0だったように見えた。

試合は5-1。柏の勝利で終了した。

雑感

7月の初め、衝撃的な4-3-3を平塚の地で披露した仙台。そのある種の奇襲に対し、湘南も成す術はなかった。しかし7月終わってみて気づけばその1戦以来勝利がない。相手の研究も進む中で、仙台もその現実に抗うようにして工夫を施してはいる。この試合で見せたボール保持時のかたちなんかはまさにそのうちの一つ。そんな兆しは見えるんだけれども、なかなか勝利するまでには至れない。これがまあ難しいところ。

試合も試合だったし、ゲームから少し時間が空いてのレビュー書きになったのでここであっさり終わらせたい。次、マリノス相手だけれど、臆さず挑戦して勝利してほしい。


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