~この場所から~ J1開幕節 ベガルタ仙台vs名古屋グランパス
2020明治安田生命J1リーグ第1節 ベガルタ仙台vs名古屋グランパス 2020.2.22
2020シーズンの開幕。始まりを告げるカントリーロードが鳴り響く。
スターティングラインナップ
ケガで長沢やクエンカらを欠く仙台。スタメンには新加入選手4人が名を連ねた。中でも柳は開幕戦2日前にチームに加入した選手だが、山形所属時代には木山監督のもとでプレー。主戦場は右サイドだが、左でどのような動きを見せるか。
対し3人の新加入選手を起用した名古屋。サイドの選手の個の能力は非常に高く、マテウスは昨年Fマリノスのリーグ優勝に貢献した。ボールを刈り取ることに定評のあるダブルボランチも脅威。
前半-新生木山ベガルタの攻守
2020年のベガルタ仙台の闘いが始まった。サポーターの歌声と共に良いスタートを切ったのは仙台。442の守備体系を組む仙台。名古屋のボール保持に対し、まずは2トップがCBからボランチへのパスコースを消し、ボールをSBへと誘導。するとプレッシングのスイッチが入る。SBにボールが渡ったその瞬間、サイドハーフの道渕や佐々木匠が内側のコースを消しながらプレッシャーをかけると、それに呼応する様に仙台の選手は周辺の名古屋の選手をチェックする。名古屋は彼らの左サイドから攻撃するシーンが前半多かったため、そちらのサイドの守備を例に取る。
稲垣を消しつつ中谷に寄せSBへ誘導
次は匠が稲垣を消しつつ成瀬に寄せる→縦パスを柳が迎撃
このような形で名古屋の前進を許さなかった序盤の仙台。またSHに渡り前を向かれた際は、SBが縦方向を切り、SHが横方向(フィールド中央側)を切る。サイドラインに押し込んでボールを奪い取るという約束事があった。
ボールを奪うと、相手のプレッシャーの有無に関わらず、CBが敵陣コーナーフラッグ方向に走るジャーメインにすぐさまロングボールを蹴った。名古屋のSBの成瀬と吉田はそれぞれ身長が166cm、168cmと決して高くない。182cmのジャーメインが競り勝つことは可能であり、収めることができた場合はゴールまで一直線。また、ロングボールに対し名古屋のCBが対応し跳ね返されたとしても、仙台の組織全体を押し上げ、その先の落下点にいる名古屋の選手をサイドハーフやボランチが捕まえ、ボールを奪い返すことで保持を確立し、二次攻撃に繋げた。
この全体を押し上げ、ボールを奪い返して二次攻撃をするという形の中で印象的だったのが23分のシーン。
スローインからサイドに密集する仙台。掻い潜られるも、吉野と柳で左右のコースを消して寄せたことでマテウスのパスがずれる。
名古屋陣形がカウンターに出るため広がった中、ワンタッチでつなぎスペースが狭まらないうちに攻撃。三度首を振り状況確認をしてから滑らかにターンした道渕は美しさすら感じた。
このように、敵陣に人をかけて攻めることが出来ていた場合には名古屋陣内で道渕や匠がすぐにボールを奪い返し、吉野や松下からの縦パスからスペースを見てパスを繋いだショートカウンターを仕掛けていた。
ゲームをコントロールする仙台。セットプレーの流れからキャプテンシマオが決めて先制する。
前半-名古屋の修正
しかし26分。ファウルで試合が一時中断した際にフィッカデンティ監督がマテウスと阿部を呼び出し2点修正を加える。まずトップに入っていた前田直輝がマテウスと入れ替わる形で右サイドハーフに入った。そして阿部が仙台のボランチの脇のスペースでボールを受けるようになった。この形から生まれたのが名古屋の同点弾。
阿部と成瀬のどちらにつくかの判断で出れない匠。フリーの成瀬から大外前田へ。柳がすぐさま飛び込むも剥がされ置いて行かれる。
クロス対応の配置を取る間もなくマイナスに折り返され失点。
仙台のクロス対応
さてクロスから失点を喫したベガルタだったが、それ以外のシーンではクロスに対して配置を取り対応することが出来ていた。ボール保持者に対し飛び込みすぎず、全体が守備配置をセットする時間を作ることが出来ていた場合は、大外からのクロスからチャンスを作られることはほぼなかった。以下は仙台のクロス対応の配置。38分のシーン。
しかしながら阿部がボランチ脇を使うようになり、名古屋が次第に主導権を握り出す。特に26:30や29:10の撤退守備のシーンではFWが名古屋CB→ボランチのコースを消しているにも関わらず、吉野がボランチをマークしていたため、さらに周辺にさらにスペースを与え、阿部や相馬(カットインに対しSBは縦遮断するが、横遮断するボラがいない)が活きる形を作ってしまった。ま、最後は割らせてないのだけど。
後半-ハーフスペース攻略のために
大外からのクロスに対し活路を見出せない名古屋。ただハーフレーンで阿部は不自由なくプレーし、かつ2トップ脇から前進も出来ている。であればよりニアゾーンに入り、中の相手の枚数を少なくした状態でクロスを入れましょう。ということでニアゾーンに入りクロスを入れるためにまたしてもマテウスを右SHに戻し前田をFWにする。マテウスのカットインでSBやSHに向かってドリブルしピン止めしチャンネル(SB-CB間)を広げる。すると前田直輝がそのスペースに侵入。手前のハーフレーンの阿部や稲垣からそこに向けて多くのパスが入った。以下の図は48分のシーン。
マテウスが柳に向かってドリブルし、関口も引き付ける。後方空いた阿部、稲垣とつなぎ、チャンネルの成瀬へ。柳がカットしかけるもこぼれ、阿部が広いシュート。松下は稲垣に対し寄せるか、そのまま成瀬につくかの判断を迫られ、中途半端な対応となってしまった。
サイドハーフが直接チャンネルに入る形もあり、76分の相馬の決定機も蜂須賀とシマオの間のスペースへ阿部がスルーパスを通したものだった。
攻勢を強め、決定機を数多く作る名古屋。対して2トップによるプレッシャーがかからず、ひたすら陣形を後退させられ、なかなか敵陣へと向かえない仙台。前半の序盤に効いていたサイド奥へのロングボールも、名古屋4バックvs仙台2トップでは勝ち目がなく、仙台SHの位置も守備対応で下がっていたため跳ね返ったボールも回収できず二次攻撃ができない。石原崇兆、関口を投入し息を吹き返したい仙台だったがゴールは依然遠く、スコアは動かず1-1でゲームは終了した。
試合を終えて
開幕戦ということで、相手の情報が少ない中自分たちのやれることをどれだけ表現できますかという命題を与えられたこの試合。一次攻撃用のロングボール、落下点付近を包囲するゲーゲンプレス、丁寧かつ大胆、武器を生かした二次攻撃、相手の進むコースを遮断する守備などなど、表現できたものは決して少なくはなかった。しかしながら失点シーンや後半70分以降の圧力をかけられない戦いに代表されるように、詰めの甘さがあるというのもまた事実。一つ一つ確実に積み上げ、強いベガルタに。GoodではなくStrongなベガルタに。またあの場所に戻ろう。星をつけよう。喜びを分かち合おう。杜のスタジアムで。
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