「月のワルツ」から辿るいしづかあつこ~『こばと』、さし音、そして『よりもい』
1.2つの「月のワルツ」(諫山版は2004年)
「月のワルツ」は湯川れい子の詞がまずあった上で
アニメーション担当が選考された、なんて話は
「みんなのうた」を「デジスタ」方面に振り向けて
いった川崎龍彦、って人の「「みんなのうた」が
生まれるとき」(ソフトバンク新書007,2006.04,
ソフトバンククリエイティブ)といふ本に書かれて
います。
(更に本を手繰ると曲自体はタイトルと諫山の
メロディーが先な曲先パターンだったようですが)
そこで「デジスタ」経由で選考された中から
選ばれたのがいしづかあつこの作品だったのだけど、
選考が決まった時には既にマッドハウスに入社していた
いしづかあつこは一旦難色を示したもののマッドハウス
の英断で、いしづかあつこ演出のバックアップに
マッドハウスが協力して請け負われた仕事が
「メトロポリタン美術館」のレコードを一気に塗り替えた
諫山版、いしづか演出のみんなのうた版「月のワルツ」
だったと。
ま、もう一つの方が当時のアニオタには浸透しており、
Mercury Lampe(メルクリー・ランペ)名義で田中理恵が
カバーした「月のワルツ(銀月のワルツ)」。水銀燈のイメージに合う、
ってことで重宝されてたけど、私は結局やる夫スレで
しか観てなかったりするので言及は避けます。
2.『こばと。』(アニメ版は2009-2010)
なにぶん「あずき残雪」さんのトコにかつて書き込んで
いたわけですから『あずきちゃん』は当然しっかりと
履修していたわけですが、『こばと。』はそれ以来の
ヒゲの近藤さん(近藤栄三氏。かつて『キャプテン』の
頃エイケンにいた人で『あずきちゃん』一作でPDを
全うしようとしていた人)PDの作品でした。
(なぜその間を視聴出来なかったかは、お察し下さい)
個人的に言えば◆稲田徹[青二]の声をしっかり
「ラーニング」出来たのがこの作品で、まだプリミティブ
な歌声しか披露出来なかった◆花澤香菜[大沢]が完璧
超人にして有害物質を放つハヤミンになることを諦めて
持ち味に徹する所作が安定してきた作品(それは
「あした来る日~いちょうの木の下で」の楽曲の良さも
あるけど、BS2から派遣された子役達の先導をしっかり
あしらってから、腹が据わってきたな、とは感じた)。
演技力のベースは上がってるのに初々しさも失ってない
というのはすごいかも。って指摘を以前頂いたことはあるの
ですが、そちら方面にあえて振り切る実力が伴って
いたからこそ、この作品のキーセンテンスになる
花戸小鳩◆花澤香菜の「こばと、がんばります!」に
至ることが出来て、この作品の過去と未来がしっかりと
繋がる構成はまさしくお見事、といふ作品。
根本的に語られているのは「つながり」と「リーイン
カーネーション(輪廻転生)」。「魔法使いサリー」の
「歩道橋」話、っていう古典的な社会性を持ったテーマの
延長で「再開発」というダメワードは持って来られてたの
だけど(横手美智子脚本だっけ)、演出が『あずきちゃん』
以来の小島正幸でBパートにあった歌パートも含めて
しっかりまとめ切るから、最後の「積み木を切り出す藤本」の
エピソードまでしっかりつながって魅せきれる13話が
好きなんですが。
https://moon12.blog.ss-blog.jp/2010-01-13
ま、このあたりでいしづかあつこが参加している作品に
◆花澤香菜[大沢]が絡むことで、やがてそれは『よりもい』
へと昇華していくわけですが。まあこの間『NANA』とか
にも参加してるんですけど、次はさし音の話。
3.「花ハ踊レヤいろはにほ」とさし音(2014年)
よし、これは活かそう、と思ったので作品検索の時に
ここのタイトルで検索しなければ成らなかったのも
苦痛でしたが、以下の文章は「花ハ踊レヤいろはにほ」に
関してとボカす形で突き通します。
で、その頃のレポート文があったので、まずはそこ
からリライトしてみる。
こちらではTVH(テレビ北海道)といふTX系列の
テレビ局が年に2回のお祭りフリーマーケットイベント
として長く行っている「ゴールデンマーケット」(通称
ゴルマ)なるものが開催されているのですが、今回は
アニメ中心のブースとアイドル特集だったので、10年
近くぶりで行って参りました。
ただ、チケット取って行った日は格別に天候の読めない
スコールの多い日で、折しもその日はハワイロケでも
嵐を呼んだと呼び声の高い大泉洋が映画公開の挨拶で
あちこちを渡り歩いており、「雨雲を大泉洋が釣れて
歩いてる」とFMのDJがぬかしてたあたりがいかにもな
北海道の日常光景が垣間見られる日だったもので、かなり
ところどころで降られたけれどもなかなか楽しめる1日でした。
この日のメインは「あにむす」などでも馴染みになった
A応Pのライブで、流石に元々トークが立つ上にアイドル
ユニットとしての成熟度も増してきた頃合いの感じで、
やっぱり1年メインレギュラーを持つアイドルグループは
しっかりしとるわ、と感心感心。
で、TVH(テレビ北海道)のアニメラインナップに
関してもしっかり把握しているアイドルグループでは
あったので当時メンバーにいた小森未彩に聞いたら
「この中(テレビ北海道がやってる新番組の中)では
一番のオススメ」と言ってたことも後押しになって視聴
したって経緯があったと(その後TVHは雪まつり絡みで
毎年A応P呼んだりしてたんだけど、運営の致命傷で
無駄な「生き残りバトルロワイヤル」やらかして、殆ど
総入れ替えになったのは非常に残念でしたけど)。
https://m.youtube.com/watch?v=cVL4_9ELOf8
基本的に曲自体は畑亜貴作詞でMONAKAの田中さん
(田中秀和)作曲だから「アイカツ!」「ラブライブ」の
メインを張る鉄板の布陣。お得意の踊れる群舞用の青春
ソングなんですが、はなのソロからいきなり
「パーッと パーッと 晴れやかに」
と始まるイントロとサビの前にアニメのOPではピアノの
鍵盤を押すことで表現されている「さし音」が見事に
表現されていて印象に残るハデな曲です。
(その意味で「夏色キセキ」より扱いは悪いけど、すごく
良く出来てる、って位置付けは可能かなと)
作品としては道民ひいては札幌市民としては常にいぶ
かしむ存在でかつその時期に疎開を強要する唾棄すべき
珍舞練り歩きをテーマに選んだものなので(そら家の近くで
2日連続でどんちゃんされる「余所様の馬鹿騒ぎ」を
惰弱で市民を守らず「おくるまさま」しか守らない道警の
弱腰が引き金になって、一般的庶民にとっては迷惑この上
ない珍走の一種、なので)ホントに「縋りたくもない
縁(よすが)」ではあるのですが、中学くらいの吹けば飛んで
いってしまいそうな会話と青春模様を「月のワルツ」や
「こばと。」「NANA」などで修練したいしづかあつこ
が初監督で鮮やかに1クール描ききったな、と思える
マッドハウスの青春物でした。
といふあたりを抜けて、こちらでも『よりもい』の
話をこちらは独自の視点でより深く。
4.『よりもい』(宇宙よりも遠い場所)は特に11話かな。
STAGE11「ドラム缶でぶっ飛ばせ!」
まあ概して3が日(確かBS11は1/2からオンエア)
からスタート出来たアニメは充実したコンテンツが
詰まってこそこのスケジュールが取れる、といふことで
すべからく名作、って法則はあるんですけど。
11話はレポートできない報瀬◆花澤香菜[大沢]が
カメラに向かって大啖呵を切るのだけど、その動機が
「敵がいると饒舌になれる」だったりするのが絶妙
だったりするわけですが。
◆井口裕香[大沢]の「虚勢張って明るく振る舞う
痛々しい演技」が絶品を堪能出来るのもまた11話
の真骨頂。ここでは三宅日向◆井口裕香[大沢]の
南極へ来た理由がひょんな形で明かされる。
すごくエピソードの伏線を含めて丁寧に作られていたし、
主役4人と脇を固める声優陣(特に能登・みかこし・
福島潤など、声がこの作品で「ラーニング」出来たのは
元給食のおばちゃんやってた◆lynnのサバサバした感じ。
でもギャンブラー体質過ぎて、山口勝平が好きという
趣味の悪さはちょっとヒく)がバランスを取りつつ
脂ののった演技でしっかり固めてくれたので、後味も
含めてしっかり「観た-」といふ完璧な作品を観られたな、
って余韻をしっかり作ってくれた作品だと思う。
https://note.com/oishi_murphy/n/nc788280ad98e
ま、いしづかあつこ監督の代表作になると思うし、
作風的にも不遇な形ではあった花田清輝の孫(シリーズ
構成の花田十輝)もいい仕事にありつけたのではないかと。
終盤はホントにどのエピソードでも泣きっぱなしで、
いい作品観させて貰いました。
といふあたりを纏めたところで。
以上「月のワルツ」から辿るいしづかあつこ、となります。
長い纏めでしたので、全てに目を通して頂きありがとう
ございました。