マーケティングの仕事のモチベーションや価値は宣伝費の大きさと比例しない(マーケティングのモチベーションとは何か?)
こんにちはトロネコです。
20年以上に渡ってゲーム業界でマーケティングをやっています。無料でマーケティングが学べるメディア「トロネコのマーケティング大学」も運営しています。
今回はマーケティングの仕事におけるモチベーションや、その仕事の価値は宣伝費の大きさと比例しないという話をします。
なぜそんな話をするかというと、きっかけはとある転職エージェントの話にありました。
転職エージェントが発した「マーケティングのやりがいは宣伝費と比例する」という発言
もう1年くらい前の話です。とある転職エージェントと話をする機会がありました。その転職エージェントはこのような事を言ったのです。
「このゲーム会社の案件は宣伝予算も豊富」「動かせるお金も大きいのでマーケティングの仕事としてやりがいがありますよー」
大きなお金を動かして、TVCMやリアルイベント、youtuberやweb広告ができる、それこそマーケティング職としてのやりがいだと言ったわけです。
大きなお金を動かすことは楽しいことかもしれません。
ただし、マーケティングとは、お金を使って宣伝することではなく、
「モノ(=ゲーム)が売れる仕組みをつくること」です。
売れる仕組みを作る事は必ずしもお金を使うこととは一致しないのです。
これについては下記の時期でも詳しく解説しています。
お金を使うこと=マーケティングではない
マーケティングとは何か?
それは「モノ(=ゲーム)が売れる仕組みをつくること」という話をしました。
前述の転職エージェントの伝えたかったことは「大きな宣伝費を動かせることにマーケターとしてのやりがいがある」という事だったのですが、ゲーム事業におけるマーケティングは宣伝費だけでなく、開発費も含まれます。
マーケティングとはプロモーションだけでなく、ゲーム開発フェーズにも関わる必要があります。
マーケターが関わる「マーケティング100リスト」というリストを公開していますが、開発段階からいかにマーケターはゲーム事業に関わる必要があるかかいています。
お金を使うことはマーケティングにおける一部分にすぎず、あくまでもマーケティングの定義である「モノが売れる仕組み作り」の手段に過ぎません。前述の転職エージェントの発言はここを理解していないゆえの発言だったわけです。
しかし、これは転職エージェントというゲーム会社外部の人だけの話ではなく、実はゲーム会社の内部においても、
「マーケティングとはプロモーションである。プロモーションはお金を使うことである」
という発想に陥っているケースが非常に多いのです。
実際にそんな状況に陥っているマーケターの具体例をお話しましょう。
宣伝費が0円になった時点で打ち手が無くなるのはマーケターとしては失格
とあるゲームタイトルのマーケティング担当がいました。毎月数千万円の宣伝費を持っていたタイトルで、その宣伝費のほとんどはデジタルマーケティング(Web運用広告)に使っていました。
彼にとってゲームにおけるマーケティングとはWebの運用広告を行い、そこでお金を使いユーザーを獲得し続けることだったのです。
しかし、会社としての状況が変わり、そのゲームタイトルには翌年からWebの運用広告として見込んでいた宣伝費を使わないという判断になりました。
その結果どうなったと思いますか?
彼にとってのマーケティングとはWebの運用広告をまわすことだったため、全く打ち手がなくなってしまったのです。これはお金を使う事=マーケティングという思考停止状態に完全に染まっていたわかりやすい例です。
でも、マーケティングとは「モノ(=ゲーム)が売れる仕組みをつくること」であり、Webの運用広告はその一部の役割(パーツ)に過ぎないのです。宣伝費がなくなった時点で何もできなくなったというのは、マーケターとしては失格ですし、そもそもマーケティングなんてそこには存在しなかった証拠と言えるでしょう。
宣伝予算0円のゲームタイトルこそマーケターの腕の見せ所
「来期から宣伝費は0円になります」
そう言われたら多くの人は打ち手がなくなり途方に暮れるかもしれません。しかし、マーケティングとは「モノ(=ゲーム)が売れる仕組みをつくること」というマーケティングの定義を理解している人にとっては、むしろ宣伝費0円はマーケターとしての腕の見せ所であると、モチベーションがあがります。
なぜなら本物のマーケター走っているからです。
マーケティングとは「モノ(=ゲーム)が売れる仕組みをつくること」であり、「モノ(=ゲーム)が売れる仕組みをつくること」はプロモーションではなく、ゲーム開発に踏み込んだところにもあるということをです。
宣伝費が0円になってもゲーム開発、ゲーム運営自体はまだ続けていくわけですから、ゲーム開発費は残されています。つまりゲーム開発フェーズにおいてはマーケターとしてできることはたくさん残されており、そこに踏み込んで状態を変えることは、まさにマーケターとしてのやりがいそのものだからです。
マーケティングの定義である「モノが売れる仕組み作り」は次のお3つのマーケティングプロセスから構成されています。
開発フェーズにおける「つくるマーケティング」
配信フェーズにおける「とどけるマーケティング」
運用フェーズにおける「とどけつづけるマーケティング」です。
3つのマーケティングを分解すると下記のようになります。
実はゲーム開発フェーズ「つくるマーケティング」においてもマーケターとしてもできることはありますし、ゲームアプリの運営フェーズにあたる「とどけつづけるマーケティング」のフェーズでもできることは膨大にあるのです。
しかも、ゲームはゲームそのものの面白さでゲーム事業の8割以上は決まります。宣伝費が0円になって打ち手がなくなったという話をしましたが、それは「とどけるマーケティング」「とどけつづけるマーケティング」の一部ができなくなっただけに過ぎないのです
詳しくは下記の記事でもかいていますので、よろしければご覧ください。
頭で汗をかいて、お金でなければ解決できない時にお金を使おう
何か問題が発生した!解決すべき課題がある!
そんな時に人はどうしても「お金」で解決しようと考えがちです。
なぜなら、お金がある限り、それを使えば自分は何も考えなくても楽に解決できるように思えるからです。
しかし、これは大きな間違いだと断言します。
重要なのは次のようなプロセスを踏むことにあります。
①何か問題が発生した!解決すべき課題がある!
↓
②問題の原因は何か?解決する方法として何が考えられるのか?
↓
③解決する方法として最も適切で効果があって、根本的な解決に近づく方法は何か?
↓
④その結果、とるべく方法がどうしてもお金でなければ解決できない場合はお金を使って解決する
つまり、お金を使うという事はただの手段に過ぎません。しかし多くのケースでお金を使う事が目的になってしまうケースが多く見られます。だから、宣伝費がなくなった瞬間に何もできない
「思考停止の状態」になってしまうわけです。これはマーケティングでも何物でもないのです。
まずは頭で考え、頭が汗をかくくらいに考え、お金がないと解決できないものにお金を使う、という習慣を染みつかせておく必要があります。
ここにマーケティングという仕事の醍醐味ややりがいあるのです。
そう考えると冒頭で転職エージェントが発した
「このゲーム会社の案件は宣伝予算も豊富」「動かせるお金も大きいのでマーケティングの仕事としてやりがいがありますよー」
という発言はマーケティングという仕事の醍醐味ややりがいを適切に表現できていいないのです。
まとめ
この記事を読んで頂いた方は必ずしもゲーム業界の人だけでないと思います。スマホアプリやWebサービスを営んでいる人も多いでしょう。
でも、ひとついえる事は
マーケティングとは「モノが売れる仕組み作り」です。「仕組み」を作って、極論をいえば宣伝費を使わなくてもユーザーが集まり、使い続けてくれるサイクルを作ることです。
ですから宣伝費が0円だからといって悲観する必要は全くありません。打ち手は必ず存在します。そのためには諦めず、頭に汗をかくほど考え、問題の本質から目をそらさない「思考停止状態にならない覚悟」が必要です。
ぜひ、頭に汗をかくくらい考えてみてください。きっと道はひらけます。
というわけで最後まで読んでいただきありがとうございました。
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