夢百夜 ~第四夜 凄い嫌われてる~

こんな夢を見た。

階段講義室で卒業式が行われ、それが終わると共に森田君が私の元にやってきた。
「俺お前のこと嫌いやねん。山村もお前のこと嫌いやって。」
良い機会だから言わしてもらう、そんなニュアンスで彼は言った。
思い当たる節はあった。
森田君はやんちゃだが愛嬌とユーモアのある子で、周りや親から愛されていた。
私は愛嬌もユーモアも無いから、優等生でありつつ中学生らしく振る舞う事で周りから愛されようとしていた。けれどそれは色々な嘘を吐きながら生きる事で、頭の良い森田君には見抜かれて、軽蔑されていただろう。
山村君は大学からの友達だった。思えば入学して間も無く表面上仲良くなった人だった。私は、もう無理な振る舞いは止める気で大学に通った。実家から離れた田舎の大学で、帰りたい時に帰り、居たい人と居て、思うままに生きる気だった。しかし、山村君は私と同じように遠い所からこの大学を選んで来たが、ここでの生活、特に人間関係をしっかりと充実させたがっていた。私は飲み会等の行事に対して、気が向かなければ断るスタンスを取ることにしていた。全員が集まるような飲み会にも、私だけが居ない事はままあった。山村君はクラス委員として、飲み会を開く側だった。彼は最初、クラスの活発なグループにも馴染めず、かといって落ち着いた私達と居るのもつまらないし、本当に辛そうだった。しかし、何もしてあげれなかった。
森田君は私を山村君の前に連れていった。
「なぁ山村、こいつの事嫌いやろ?」
山村君は森田君の問いに、苦笑いしながらも、当然だろといった様に頷いた。
「そうやったんや。ごめんな。」
私は謝った。本当はそんな事分かっていたけれど、気付いていなかった振りをした。またこんな嘘を吐くようになっていた。
私は帰り道の途中、秋山君にあった。森田君と仲が良く、見る人にどこか愛らしさを覚えさせる人だった。
「秋山、俺の事嫌い?」
秋山君は薄く笑った。今まで陰で私の事を嫌っている話は何度も出ていて、その事がようやく本人であるこいつの耳に入ったのか。そんな風に笑っていた。
「何で嫌いなん?」
陰口を叩くなら、そこで挙げられた具体的な欠点もあるだろう。
「なんか40代のおばちゃんと喋ってるみたいやねん。俺藤原も嫌いやから。」
藤原は、40代の大学の英語の教師で、山村君は彼女を慕っていた。私が40代のおばちゃんぽいのは分かる気もするし、疎ましいのも分かる気がした。
公園に行って、公園に居る人たちからも嫌いだと言われ、嫌な気持ちで目を覚ましたが、文字に起こすと少し気が楽になった。お茶でも飲もう。