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回路図流用の注意点(のひとつ)

「ただコピペをするんじゃない、自分が設計したものとして理解しろ!」

これは新人の回路設計者が、一番最初に言われることだと思います。既存製品の回路図――つまり先輩の回路図を流用するには、データシートを読んで個々の部品を理解し、これから自分が作成する回路図に流用しても問題ないか、ディレーティング検証や結合チェックをおこないます。

ここでひとつ注意ですが、データシートは更新されるもの、です。
先輩が過去に回路図を書いたときに見たデータシートと、今見ているものでは内容が違うということがあり得ます。
例としてKOAさんのチップ抵抗器をあげます。

2004年のデータシート

2020年のデータシート

見て貰いたいのは定格電力のところです。サイズコードはこんな感じです。

2020年は1F(0402)が追加されましたが、既存サイズの定格電力が見直されていることが分かりますかね?たとえば1E(1005)。
2004年→0.063W(1/16W)
2020年→0.1W(1/10W)
2004年の先輩は、1/10W品を使いたかったら1J(1608)を選びます。
2020年の先輩が新規で回路図を描いたら1E(1005)を使います。
ここで時は2024年、新人が「この回路ブロックは2004年の回路図から、ここは2020年の回路図から流用しようっと」と思ったら、同じ1/10W品を使う目的で違うサイズ(=違う部品)が混在します。
あるいは2020年の段階で「この回路ブロックは実績のある2004年のものを流用しよう」と判断している可能性もありますね。
これがあなどれなくて、まず面積比では1608は1005の2.56倍です。チリツモですし基板の高密度実装を狙うなら小さい方が良いでしょう。次に実装工程で1リール増えることになります。多かれ少なかれコストアップにつながりますね。せっかくKOAさんが品質向上してくれているのに、見逃したらもったいないです。また、今回の例に限らず年単位で見ればデータシートを更新している部品メーカーは多いです。

さて、企業としてはどう取り組むか?
部品メーカーからは納入仕様書の改定やPCNを提供しています。基本的には技術管理部や購買部宛ての情報になりますので、技術部門に展開するフローが必要です。
新規設計時に照らし合わせる仕組みがあればと思いますが、それでもグローバル型番ではフットプリントと型番が一致しないことがあります。会社規模が大きいほど注意する必要があります。

そうフローに依存する設計は面白くないというか、「これは俺が私が設計したんだ!」と胸を張るのなら、神は細部に宿るの気持ちで何度でも回路図や使用部品を見直すのが設計者の本分だと思います。
という若手設計者向けのお話でした。

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