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上野千鶴子『情報生産者になる』│もっと早く読めばよかった本 by 修士2年生
内容紹介
研究者である著者が、教育の現場で重視してきたこと。それは「情報生産者になる」ということ。では、情報生産者になるには何をすればいいのか?どんなことを考えればいいのか?
「情報とは何か?」から分析方法、アウトプットの方法まで、その考え方や技法を知ることができる本。
感想とメモ
「情報生産者」とは?
研究とは、まだ誰も解いたことのない問いを立て、証拠を集め、論理を組み立てて、答えを示し、相手を説得するプロセスを指します。そのためには、すでにある情報だけに頼っていてはじゅうぶんではなく、自らが新しい情報の生産者にならなければなりません。
大学院に在学中で、いま絶賛修士論文に向けて研究を進めている私はゼミや研究会、勉強会に参加する機会が結構ある。その中でされる指摘は様々あるが、よくされるものの一つが「あなたのこの研究は、あなたの手で生産された新しい情報なのか?」というものだ。
上野氏は、研究とは「正解のある問いではなく、まだ答えのない問いを立て、みずからその問いに答えなければ」ならない、「問いをきわめる」というものだ、と書いている。
私がいま大学院に通って、「私なんて全然センスない……つらい……いつもとんちんかんで恥ずかしい……」となりながらもなんとか研究に取り組んでいるのは、やはりこの「情報生産者」になってその手応えを味わってみたい、という願望があるからだ。この願望ひとつのために今ここにこうしている、と言っても過言ではないと思う。
この本から発せられる「情報生産者であれ!」という強いメッセージは私のことを惹きつけてやまない。
なるほどメモ① 先行研究のフォロー
(前略)膨大な先行研究を前にして、茫然自失とすることがままあります。(中略)ですがresearch questionが鮮明に立っていれば、その中から、自分の問いにとって必要な情報と不必要な情報とを選別することができます。問いとは現実を切り取る角度のこと。ですからその視角に入ってこないものは、とりあえず脇に置いておいてよいのです。
「膨大な先行研究を前にして、茫然自失」。はい、これは私のことです(挙手)。
この「膨大な先行研究」をどうすればいいの?とぐるぐる悩んできたわけだけど、上の引用箇所で回答されていた。つまり、まずはresearch questionを鮮明に立てることが重要であり、それをもとにその問いにとって情報を取捨選択していく、ということらしい。
私の場合、うまく情報を取捨選択するためにもっと自分の「問い」を鮮明にしていく作業が必要なのかもしれない。
ちなみに、この本の中には「問いの立て方」についてもきちんと書いてある(p.28~)。研究は、最初に問いを立てることから始まるとのことだ。そして著者が学生に常に言ってきたのは、「答えのある問いを立てる」「手に負える問いを立てる」「データアクセスのある対象を選ぶ」ということ。私自身は知るのが遅かったなア~という感じだが、これを意識することで問いをもっと鋭くしたりできるかも、とも思いメモしておく。
なるほどメモ② 質的情報
質的情報とは、「観察ノートや面接データ、文書や記録など、総じて言語情報から成ってい」るもの(p.156)。そして、
結論を先取りすれば、言語情報とは言説の集合、それを文脈化して物語を紡ぐのが、「論文を書く」ということだと言ってもかまいません。なぜなら論文とは、言語作品だからです。
とのことである。私が今やっていることは、「言説の集合である言語情報を文脈化して物語を紡ぐこと」らしい。この表現は今まで受けてきた指導教員の先生からのアドバイスとも組み合わさって、すごくしっくりきた。(先生がこれを読んだら「あんなに言ってきたのに今さらしっくり来たんか……(トホホ)」となるかもしれない……)
物語、紡ぎたいなあ。
これを読んで、具体的には何をするか?
まずは、「問い」を改めて見つめなおしてみようと思う。もちろん、ここまで指導教員の先生が根気強く面倒を見てきてくれたわけで、方向性を勝手に変えたりなんてことはしない。自分の研究をどういうふうに位置づけるのか、また「問い」を一言で分かりやすく表すとどんなふうになるのかもう一度考えてみる。
また、具体的な質的情報の分析方法(うえの式質的分析法)についても詳しく述べられていたのでこれを実践に移すこともすぐにできそうだ。
このほかにも、研究計画書のフォーマットやその実際の例など、とても参考になった。もっと早く読んでおけばよかった。(とはいえ、今読んだから沁みたというのもある。私は痛い目を見ないと腹落ちできない。どっちにしろトホホだっただろな~。)