水乃とり

たまーーに趣味で何か書きます。

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短篇小説「秋風」

滑り台が一つだけある閑静な公園のベンチで、サトルは缶コーヒーをくいっと飲んだ。 紅葉が映え始めた街路樹の景色をぼーっと眺めていると、機嫌のいい足取り笑顔な柴犬と「まるちゃんかわいいねーたのしいねー」と手毬を転がしたような可愛らしい声の女性が通り過ぎる。 落ち葉の香る秋風が肌を撫ぜて、いやはや今日も平和だな、とぽやぽやした気分で目を細めたサトルは、PRADAの上質な生地のネクタイを片手で緩めた。 背もたれにぐでんと体重を預けて空を仰ぎ見ていると、突然隣に座っている青年がぽつりと