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「行きつけ」を見つけた話


一人暮らしを始めてはや数ヶ月。

生活環境は整い、暮らしに余裕も出てきた。
今こそ憧れを形にする時かもしれない。


そう

「行きつけの店」を見つけたい


本当は全人類の夢である「行きつけの居酒屋」が欲しいところだが、このご時世ではなかなか難しい。
なんせ近所の居酒屋はこの数ヶ月軒並み休業中だ。

※「行きつけの居酒屋」イメージ図

かくして私の「行きつけの店」開拓計画はしばらくの間中止を余儀なくされていた。



さて話は変わって、私は今の暮らしを始めてから最近まである悩みを抱えていた。


「今の生活、読書の時間作るの難しくない...!?」


通勤時間が短いので電車で本を開く余裕もなく、
家に帰ればソシャゲのタスク消化や映像サブスクの未視聴リストが待ち構え、
休日は外に遊びに行くか家でダラダラしているだけ

そもそも我が愛しの7畳空間にある机はローテーブル1つのみ、
それも食事と在宅ワークとその他諸々すべて兼用だ。

とてもじゃないが落ち着いて読書ができる空間ではない。

枕元に置いて寝る前に読書の時間を取ることも試してみた。
が、体勢がしっくり来なかったり集中できなかったりして結局続かなかった。


昔から趣味の欄には必ず読書と書いてきた。
それくらい本はいつも私の生活と共にあった。

だが今の生活を見てどうだろう。本を読まなくても案外生活できるじゃないか。

もしかしたら知らないうちに「本を読む」という行為は私の中でそれほど大きなウエイトを占めなくなっていたのかもしれない。


なら、だとしたら、この喉の渇きはなんだろう。
思うように息が吸えない、この感覚はなんだろう。


どこかが欠けてしまっているような感覚を抱えながら日々を過ごしていたある日。

ふと思い立って夜の散歩をしている最中、建物の奥の方に見慣れない店を見つけた。

ひっそりと佇む喫茶店。
雰囲気は落ち着いているが外観は新しい。どうやらひと月ほど前にオープンしたばかりのようだ。

それを見た瞬間、私の身体を閃光が走った。


「ここにあったのか」


翌日、早速私は店を訪れた。
手には途中で栞が挟まったままの文庫本を持って。



こうして私は「行きつけの店」と巡り会った。

今も毎週のように本を片手にあの喫茶店を訪れている。
マスターと和気藹々と会話するような所謂「常連さん」ではないが、それでいい。

喉の渇きは、いつの間にか収まっていた。





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