研究党への道~現代将棋の戦法選択~
はじめに
変なタイトルですみません(笑)今回は居飛車の戦法選択についての記事を書こうかなと思います。振り飛車についてちょくちょく触れた部分があり、そして、現代のプロの将棋が理解できるようになると思うので、振り飛車党の方も是非読んでください!!
まず、結論を最初にまとめておくと
戦法には、研究である程度指しこなせる戦法と、力戦になりがちな戦法がある
→昔は研究だけでも良かったが、後手横歩取り、後手矢倉という研究しやすい戦法がそれぞれ、青野流、左美濃や雁木に潰されてしまった
→後手番では良さを求めると、力戦になりがちな相がかりを指す必要があり、研究だけの将棋は厳しくなってしまった
→プロでは相がかりを研究することは必須。しかし、アマチュアでは横歩取りや矢倉はあんま研究してないだろうという読みで、正確な手を指せないと先手が良くならない落とし穴的将棋が流行る。
大体の流れはこんな感じです。まず、こんなこと多くの人は考えていないと思います。しかし、本気で研究したことがある人なら、後手で相がかりをやるかどうかの大きな分かれ道を体験したことがあるのではないでしょうか。
ここから1個1個解説していきます。
研究戦法と力戦戦法
研究戦法は、文字通り研究によってほぼ序盤をカバーできる戦法のことです。そして、力戦戦法は、研究通りになるかわからない、自分で形を決めることが出来ない戦法のことです。(私の力戦形の定義は、暗記している局面でないかつ形勢が互角に近い局面となっている)
研究戦法は努力できる人向けで、力戦戦法は才能がないとどうしても強くはなれないのかなあと思います。研究戦法は勝てる根拠を明確に立てやすい(ソフトの評価値は信頼できるため)ので、私は研究戦法を使っています。
振り飛車
中飛車→超速、穴熊があるが、穴熊は力戦になってしまう。
四間飛車→対策が多すぎてほぼ力戦感覚
三間→同上
向かい飛車→そもそも悪い。対策もいろいろある。
角交換四間飛車→銀冠、端攻めなど、多様な対策があり、力戦形になる。
振り飛車はそもそも居飛車の研究に乗せられるだけなので、力戦感覚で指さないときついです。また、全て網羅しても、居飛車が優秀なため、正確な手を指され続けられると序盤で有利をとることはできないです。よって振り飛車をさすならば、本気で研究をするよりも詰将棋とかをして、実力を伸ばした方が良いと思っています。
居飛車
・角換わり→研究戦法の代表格。完全に研究ゲー
・横歩取り→これも角換わりほどではないが、研究形になりやすい。しかし、後手が厳密には勝てないことが分かっている。
・相がかり→とても力戦形になりやすい。研究しても僅かな差にしかならない。
・雁木→美濃、早繰り、矢倉、相雁木などといった多様な対策があり、しかも分岐が多いため、振り飛車と同じことがいえる。力戦形になりがち。
・矢倉→同上
・角換わり右玉→これも対策が色々ありすぎるため、力戦形。
ざっとこんな感じですね。以前は研究党なら、横歩と角換わりを指しとけば先後なんとかなるかな、とか、矢倉を取り入れようみたいな事が出来たわけです。今は角換わりしかないわけですが、、、
後手横歩取りと後手矢倉が潰れた影響
なんで潰れたのかは割愛
後手横歩取りと後手矢倉ができなくなったことで、角換わりしか出来ず、研究将棋の今までの論理は▲26歩を指された時点で崩壊しました。
まず、△34歩は▲76歩で角換わりになりませんし、△84歩は▲25歩で相がかりになります。
研究党はどうやっても力戦形のどれかを採用するしかなくなってしまいました。一番有力なのは相がかりだというのがプロの認識で、現在は、△84歩がもっとも多くなっています。
研究党が相がかりをするかどうか
相がかりという戦型は学生将棋でも良く指されているが、それは、トッププロや本当に詳しいアマチュアの相がかりとは全く違う。何が違うのかというと、相がかりの序盤を研究だけで勝とうという気があるかないかということである。
相がかりを研究している学生もいるかもしれないが、角換わりほど結論を出していたりしている人はまずいない。分岐が圧倒的に多く、ほかの戦法と比べ物にならない。ただ、参考になる定跡があるため(荒れそうなので名前は出しませんが笑)それを丸暗記すればある程度指せるし、トップの人はやっていると思う。が、プロ棋士でも多くの人がその定跡通りに指せていないほど、暗記が難しい。こういう理由があって、私含め、研究党は相がかりを指さない(指せない)人が結構多い。
後手番で研究将棋を貫くには、、
後手番でも研究将棋を貫くことができる戦法は幾つかある。
・1手損角換わり→対早繰り銀、桂ポン以外は、普通の角換わりと合流するため、その2つだけを研究すればよい。(しかし、どちらも、研究しても後手が大差をつけにくい)
・横歩取り
青野流との勝負。先手も正確に指すことは難しいため、有力だが、研究されてたら普通に負ける。
・雁木
さっき雁木は力戦形と書いたが、現在のプロアマチュア共に、対策が早繰り銀か左美濃腰掛け銀が多いので、それをしっかり研究すれば相がかりよりは研究に頼れる。ただ、研究だけで勝てるかといったらそうでなく、良くなってもそこから長い。(これは雁木対策側にも言えることなので、力戦党の人にとっては雁木は相当優秀な戦法)
正直他の戦法は途中で力戦になりやすい(ギリ阪田流向かい飛車は研究形なのかもしれない)ので、深く研究するとしたらこの3つ。ただ、雁木は研究を外されるときは外されるので、研究するとしたら横歩か1手損角換わりなのかなあという感じです。
「妥協」という考え方
今、学生将棋やアマチュアの大会などで研究党が輝くために必要なことは、妥協するということです。
アマチュアでは、よく指される形に対して深い研究をする人はいますが、あまり現れない戦法まで深い研究をしている人はいないでしょう。1手損角換わりや横歩取りはソフトから見れば欠陥戦法で、正解の手順を指されればまあ負けます。しかし、正確な手順を指し続けられる人はほとんどいません。特に、人間的に指しにくい手は「妥協」することが出来ます。
まとめると、欠陥戦法を使う際に大切なのは、この手では確実に負けだが、それ以外は勝ちで、さらに正解の手は人間的には指しにくいという局面をつくればいいという事です。
具体的な例を挙げましょう。
現在、角換わり▲58金型が廃れた原因の一つに、この桂を食いちぎる手が成立していないことが判明したという理由があります。世間的には▲58金型は終わった戦法という認識がありますが、実際はここからの正解を全部暗記する必要があります。図から、
△同 銀▲6三歩 △7二金 ▲6四桂 △7三金 ▲6二歩成 △6四金▲4五桂 △4四銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲6一角 △同 飛▲同 と △4五銀 ▲同 歩
△4六角 ▲4八飛 △3七角成▲4四歩 △同 歩 ▲同 飛 △4三銀 ▲2三銀 △3三玉▲4一飛 △4四玉 ▲3二銀不成 △3一桂 ▲同飛成 △3二銀▲同 龍 △4九飛(ちなみに分岐がたくさんあるため、図からこれの5倍は覚える手順ある)
ちなみに後手は少しでも手をミスると、先手がよくなります。
はっきり言ってこの変化全部暗記してた居飛車党は、この記事読んでる人にもほとんどいないと思います。
ただ、これは主力の変化なので、僅かですが、覚えている人はいます。しかし、これが主力でない初見殺し的な変化だとしたら、この手順を正確に指せる人は学生レベル、アマ全国中位レベルにはまずいないでしょう。(学生は序盤が強いので、大学生のトップ=アマ上位かもしれない)
「正確な手を指し続けられるわけがない」、という変化を作れば欠陥戦法でも勝ち星を量産できます。これは振り飛車にもいえることです。
まとめ
現在のプロ将棋界ではどうやっても相がかりの研究、使用は避けられませんが、アマチュアなら工夫次第で時間を節約して、妥協することが出来ます。もっと言うと、雁木や振り飛車ならもっと時間を節約することが出来るかもしれません。
将棋界ではソフト研究はしない方がいいとかした方がいいとかいろんな意見が出ていますが、自分でAIの力を借りてみて、結果が出なかったらやらない、結果がでたらやるが一番いいと思います。やらないで拒絶するのは損です。僕の実績はAIが無かったら多分ないですし。
今回の内容はあくまで僕の意見なので、ここはこうじゃない?とか是非意見ください。そしてツイッターのフォローもよろしくお願いします。
ここまで読んでくださってありがとうございました。