見出し画像

Hello,Good night

DOKKOISE HOUSEの1stアルバム「FLOATING HOUSE」発売を記念して、ライナーノーツを書きました!至近距離からの制作観察記録です。発売まで毎日1曲ずつ更新していきます。
本日はこちら!

『Hello,Good night』

去年の10月の台風の日、引っ越したての木造アパートに立て籠もって、雨風の音と川の浸水に怯えながらホーンアレンジをしてました。鼻歌歌ってるうちに気づいたら完成してた「Liquid Noise」と違って、この曲はキクチさんとのやりとりをかなり重ねたっけ。

たぶんキクチさんの頭のなかには今の完成形がはじめから見えていたっぽいんだけど、私がそこにたどり着くまでにけっこう時間がかかった。(完成したの聴いてて「これか!これが言いたかったのか!」といたく納得しました…)丸一日取っ組みあって、完成したのが夜中近くだったと思う。出来上がったバージョンを聴き直してみたら「え、これすごい良くない?素敵じゃない??」と珍しく自画自賛したくなって、キクチさんからも「素晴らしい!これは売れるぞ!!」とこちらも珍しくビッグなコメントが届いた。キクチさんは謙虚をひとの形にしたみたいな人だけど、たまにビッグマウスになるのがチャーミング。

アレンジを細々修正しながら何度も繰り返し聴いていて、毎回グッときたのがBメロの歌詞で。「プリズム」と「ふりする」で韻を踏むのが何とも粋だし、「熟れる果実で気づく時間だ あれもこれも摩訶不思議」という部分にものすごく共感して、何度も泣きそうになった。

目の前のことにばっかり一生懸命になってるとさ、苦しくなっちゃうときってあるじゃん。でも夕焼け空の色がぐんぐん移ろっていくのとか、買ったときにはゴリゴリに硬かった果物がおいしく熟れてたりとか、すごい当たり前なことなのに、時の流れの物凄さにふと気づいてやけに感動しちゃったりするんだよね。そういうのって些細だけれど生きてる醍醐味だと思ってて、それを一言で表してる歌詞だと思った。

「アルバム最後の曲にしたいから、アウトロはフェードアウト!」って話だったんだけど、マスタリング当日に改めて曲順を眺めながら全員でうんうん唸ってて、やっぱり「nastu no te」を最後にすることに決まった。それを聞くなりプロデューサーが「あ、それならアレいけるな」と何やらニヤリと笑って、掛けられたマジックがすごかった。ぜひアルバム通して聴いてほしい。感動するよ。