カサブタ讃歌 ギャッといった 血がダダーッとでた でっぱった釘でモモの皮膚が破れた しばらくすると モモにはミミズがのたくったような それはそれは 不様なかさぶたが現れた ある日突然 そのミミズがうずきだし かまっていたらポロポロと はがれてあとに現れた、 できたてホヤホヤ 湯気がでそうなぴんくの皮膚だ はじめはそのぴんくを 単純に面白がっていたが そのうちぴんくが しーん、と胸に沁みてきた
海のはなし 幼い私をひざに抱き 海のはなしをしたのは誰だったのか まだ見ぬ遠い海の話を 寄せては返す波のように 振りかえれば 遠くにきてしまったことだけがわかった 遥かな地平が もう戻れないことだけを伝えてくる
林檎のうた 君と僕のあいだに 林檎がひとつ置かれている 君の見つめるりんごがひとつ 僕の指さすリンゴがひとつ かくしてふたつに林檎は増える