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ドラマ『MIU404』【第6話の感想】 “相棒”の電話に必ず出る理由

『MIU404』第6話は、志摩(星野源)の過去について掘り下げる回だ。ひとつも解説補足なんてつけなくても感動的な神回だったのでわざわざ書くこと何もないんだけど、要点だけ感想をまとめておく。

志摩は何かに後悔をしている。それは第1話からわかっていたことだ。
隠し事があり、ふとした時に影をみせる。「相棒殺し」というウワサがたっていて、周りのみんなが“腫れ物”のように触れないようにしている話題があるが、伊吹(綾野剛)だけがズケズケと過去に介入していく。


今回、話しの筋が“すんなり見てるだけ”ではわかりにくかった理由は、終盤になって判明するのだが、映されていた過去の情景が、“現実の過去”と“志摩の空想によるつくりかえた過去”とが交互に入り混じっていたからだ。だからロジックが合わない。
サブタイトルの「リフレイン」の意味も、ここにかかっている。“何度もくりかえし夢にみた志摩による空想の過去”のことだ。

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見返してみると、“志摩の空想”のほうは、シーンが始まる前に、決まってジリジリと小さなライトが灯るのだ。灯っているほうの場面は“志摩がやり直した過去”だ。現実にはそうはできなかった過去。
志摩は、その世界の中で、相棒にこう語りかける。
とても単純な言葉だ。

「刑事じゃなくても、お前の人生は終わらない」それと、握手を求めて差し伸べる手。

たったそれだけだ。
何度も、何度も、何度も、何度も、ああでもないこうでもないと推敲して、たどりついた言葉が、たったこれだけに帰結した。ここにすべてが詰まっているのだ、「二度と言い逃さない」と誓った思いのすべてが。

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志摩はたぶん、刑事を辞職することも考えただろう。相棒に「それでもお前の人生は終わらない」とそう言ってやれなかったことを悔いながらも、しかし自分自身は「刑事に戻ってくる」という道を選んだ。相当の覚悟での事だろう。その選択に至る、葛藤の過程を想像してしまう。陰口を叩かれるのも承知だったろうし、誇りある捜査一課には戻れない事も承知だったろうし、それでも帰還した。
きっと志摩は「相棒」にこだわっている。
「もう二度と相棒を死なせない」と誓い、この戦場に帰還したのだろう。もう一度きちんとやり直して、“あの日”から歩み出そうとしている。
だから志摩は、どんな時でも相棒からの電話には出るし、呼ばれたら行く。志摩は“あの日”を卒業するために、帰ってきたのだ。新しい“スイッチ”を探して。

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◆◆◆

香坂は、最後、「私の夢は刑事になることでした」と辞表を書いて、その日の夜にひとりぼっちで亡くなってしまったので、「刑事を辞めることに絶望したまま亡くなってしまった」と志摩は思い込んでいた。そこにはなんの疑いもなかった。絶望感のふちにいた事は確実だった。
だから“志摩が空想してつくりあげた過去”の中での香坂は「事件解決したら乾杯しようって約束しましたよね、でも俺はもう刑事じゃなくなっちゃったけど」とつぶやき涙ぐむ。

しかし、伊吹の見つけた新事実によって、香坂は最後、「俺は警察だ!」と叫びながら、刑事として、刑事をまっとうしながら、亡くなった事がわかった。

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この違いは、とてつもなく大きい。
亡くなってしまった悲しみは消えないけれど、香坂の死に際の“情熱”に想いを馳せると、救われる。絶望感ではなかったのだ。
志摩も、きっとそうだ、長い長いひとりぼっちの葛藤の闇から、救われた。
新しい相棒による“相棒思い”の行動によって。

志摩は“その日”その時、思ったこと感じたことまで相棒に電話で打ち明けた。これも過去にはできなかったことだ。きちんと聞くこと。きちんと話すこと。そして信じること。

第4機捜の別のバディ、陣馬(橋本じゅん)は若手の相棒、九重(岡田健史)にこう語りかける。最後に引用して、この感想文も結びとしよう。

「間違いも失敗も言えるようになれ。バーンっと開けっぴろげによ。最初っから裸だったらなんでもできるよ」

そして、バディたちは、成長していく。

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(おわり)

※他の回の感想はこちら↓



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miyamoto maru
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