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ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」【第6話の感想/分析】 とわ子の誕生日の夜に“起こったこと”の推理

第6話は特に衝撃的だった。テレビドラマのセオリーや常識から逸脱している。
主人公は大半不在だったし、“その夜に起こった出来事”は、直接的には何も語られなかった。

無粋ではあるけれど、“その夜、なにがあったのか?”という謎について、個人的な“推理”を書きとめようと思う。
こういうのもドラマの楽しみ方のひとつだからだ。もちろんこの記事を読む方は、まず第6話を観てから読むのがいいし、ご自分でも一度、自分なりの推理をしてもらってから読んでもらえればと思います。正確な答えなんて、どこにもないのだから。(以降には大きなネタバレあり)

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夜。とわ子からは誰にも連絡がない。電話の折り返しもない。行方不明。これは普段のとわ子の行動から考えると、ありえないことだ。連絡ができる状態ならば必ず連絡してくるからだ。会社のみんながどれだけ心配しているかがわかっているし、元夫や家族たちが連絡を待っているのをわかっているなか、それを“おろそかに”するような人間ではない。つまり、“連絡をできる状態ではなかった”と考えるべきだ。
ひとつ、視聴者の我々が脚本家によって刷り込まれてしまっているのは、まるでとわ子が“連れ去られる”ようなシーンで前回の第5話を終えていることだ。連れ去られてしまったので、とわ子がなにかしらの理由で“自由を奪われて”いて、連絡できないのではないか?という仮説がまず頭をよぎってしまう状態にさせられている。事件性のようなものが頭に浮かび続けている。でもこれがミスリードを生んでいる。

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とわ子は最終的に病院にいる。
もし取引先の社長と話し終えてから、かごめの住む家まで歩いて向かう移動時間がとわ子にあったのなら、もちろんとわ子は会社に電話をいれているはずだ。しない理由がない。だから、“そういう時間はなかった”と考えるのが自然だ。

とわ子が電話をしなかったということは、社長会談の“途中”で、すでに、優先順位が入れ替わっていたのである。突然、仕事の交渉よりも重要な出来事が発生した。

つまり、社長会談は、とわ子の携帯電話に一報がはいり、とわ子はかごめの緊急事態を“知る”ことになり、急遽、契約交渉はとわ子の都合によって打ち切られたのであろう。

では、誰がとわ子にそれを伝えたのか?

その“知る”方法は、二択しかない。
いろいろ可能性を考えてみたが、この二択しかない。
かごめが“くるしい”と電話してきたか、
もしくは、“娘の唄がそれを報告してきた”かだ。

(かごめのいとこがとわ子に電話してきたのでは?なども考えられなくはないが、あれほど重要な社長会談の合間に、その距離感の人からの着電にわざわざ出るとは思えない)

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今回のドラマの中で、もうひとつ見落としがちな重要なこと。
それは、大豆田唄がいつのまにか不在である、ということだ。
とわ子の行方不明の大きさの影に隠れているが、娘の唄もいつのまにかいなくなっている。
ここに違和感がある。
順を追って確認をしよう。

第5話で、
日が暮れたあと、会社に戻った大豆田とわ子はサプライズ誕生日パーティーに遭遇するのと同時に、取引先からの突然の予算縮小連絡を聞き、相手の会社へと走って向かう(そのあと相手の会社の建物の前で先方の社長が車で現れて連れ去られる)

そのあと、娘の唄が、田中八作のレストランにあらわれるのが、およそ夜の19時か20時。唄はこの時すでに“とわ子が理不尽な予算縮小のトラブル対応に巻き込まれている”と元夫たちに話しているので、つまりこの短いあいだに、とわ子から唄には親子間の一報があったのがわかる。たとえばこうだ。「今日はトラブルで帰りが21時とか遅くなりそうだから、八作のお店で晩ご飯たべさせてもらっておいて。迎えに行くから」みたいなことと推察できる。

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そのあと唄はうとうと居眠りしてしまい、起きて携帯を見たらもう「22時17分」だが、とわ子からまだ連絡はない。

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遅い時間なので今日はもう家まで送ろうと、唄を家まで連れて帰る鹿太郎と慎森だが、家の中は真っ暗で誰もいない。さっきのスマホの時計から考えると、この時点で「23時頃」と思われる。

このあたりから第6話に。レストランに戻ると、店には三人の女性が慎森たちの帰りを待っていた。
初対面の女性たちが“打ち解けあうほど飲んだ頃”に、とわ子の父親から「餃子を作るからとわ子の家にみんなで食べにきなさいよ」と呼び戻される。
このレストランで6人で飲んでいた時間の長さは、どんなに短く見積もっても1時間は過ごしているはずなので、この時点で「24時頃」。
父親は「餃子を作りにこの家に来た時には、すでに誰もいなかった」と言った。

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つまり、唄は、家まで連れ帰ってもらったあと、23時〜24時頃に外出している。
“自分で出て行ったのか、もしくは誰かに(とわ子に)呼び出されたか。”
それにしても遅い時間すぎやしないか?
慎森たちは“さっき部屋まで送り届けたはずの10代の女の子”がこんな深夜に忽然といなくなってしまっているのに、もっと心配しないのだろうか。(つまり唄は普段から夜中に出かける子なのかもしれない)

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さて、時をオープニングまで戻そう。
レストランで6人の男女が初めて会い、乾杯をしようとした瞬間、店の照明が消え暗闇になってしまう。
懐中電灯を照らしているところで“第6話のオープニングタイトル”がはじまるのだが、その後ろでは実は、救急車のサイレンが不気味に鳴っている。

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これが“かごめの乗った救急車”とはもちろん断定まではできないが、その可能性は示唆されているし、少なくともサイレンの音がこの先の“不吉さ”を予言している。このサイレンが鳴っているのが「23時頃」。

さて、ここからは空想だ。
唄は、慎森に家に送り届けてもらったあと、着替えもしないうちに、ふと「かごめが今夜マンガを描き終える」と母親が前に話していたのを思い出して、“もしかしたらとわ子はそこにいるのかも”と思いつき、唄は深夜にかごめの部屋に向かったのかもしれない。または、家の自宅電話に留守電が入っているのに気づいて再生するとかごめで「マンガ描けたよ、読みにおいでよ」と誘われたのかもしれない。

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「こんな深夜に人の部屋に出かけるだろうか?」という疑問は残るが、でもこれまでの回を見ていると夜遅くにかごめが急にとわ子の家にやってきて(とわ子がいなくても)唄とかごめの2人きりで料理をしたり食事したりするシーンが描かれてきたから、唄がかごめの部屋に深夜に訪れるのもそれほど特別なことではなかったのかもしれない。
それでその日もふらりと“かごめの部屋”に入った。

すでに亡くなっていたのか、もしくは部屋に招きいれてくれたかごめの体調が優れず、そうこうしているうちにあっというまに昏睡してしまったのか。

唄は、震える手で、何度も母親に電話をした。
とわ子のスマホに着信履歴が次々と増え、不審に思ったとわ子は、社長会談中だけど娘からの電話に出た───。

ここで、とわ子の携帯電話についても分析しておこう。第5話のあいだは(つまり時間で示すと22時前までの時点では)とわ子に電話すると“着信音は鳴る”ので電源ははいっていたのだが、

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第6話以降は電源が切られている。
つまりどこかのタイミングで、故意にとわ子は携帯電話の電源を切った。
“優先順位が切り替わった”ということが、この“携帯の電源のON/OFF”で暗示されてるように思えてならない。

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八作が病院につくと、唄がぼんやりと立ち尽くしていて、自販機のボタンさえ押せなくなっていた。手の震えがひどかった。

もし、仮にとわ子が“かごめの第一発見者だった”として、はたして唄だけにそれを連絡するだろうか? 急いで病院に来てと言うだろうか?

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まだ10代で、こんなふうに精神的にまいるのが目に見えていて、唄だけを真夜中に呼び出すだろうか? たとえば八作に電話して唄をお願いねと任せたり、せめて八作と2人で一緒に病院に来るようにと指示すると思う。

つまり、“唄が病院にいる”ということは、唄がかごめを見つけた。そういうことだと思う。

とわ子は、“かごめの緊急事態”であることはもちろん、それと同時に、“娘の唄の緊急事態”にも直面し、そこですべてを遮断した。
優先順位を切り替えた。
携帯電話をOFFにした。

たぶん取引先の社長は「いま退席するということは、契約を白紙にもどすということですよ」と叫んだと思う。それも、すべてを遮断した。

そこから約2時間。
救急車のサイレンの音が聞こえたのが23時頃で、病院で医師たちが話している時刻はというと、“午前1時17分”。

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このたった2時間ほどのあいだに起こった出来事は、とわ子と唄だけの時間だ。だれもあいだには入れない。

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以上が、“その夜になにが起こったか”のぼくの個人的な推理のすべてだ。

世界にはいろんな人が生きていて、何十億人の人たちと時間をともにしながら同時代を過ごしている。
誰かが苦しんで亡くなる時に、遠く離れた空間ではワインを飲みながら恋愛話に花が咲いていたりする。ふいに人の死に遭遇してしまい、一刻を争う駆け引きをしている時に、遠くの誰かはのんびりと餃子を包んでいたりする。

知りたいことをすべて知れるわけではないし、立ち会いたい瞬間にすべて立ち会えるわけではない。人生とは、そういうものだ。

(おわり)
※他の回の感想分析はこちら↓


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miyamoto maru
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