ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」【第5話の感想/分析】 生きるとは“サプライズの連鎖”である
3人目の元夫、中村慎森は「それいります?」が口ぐせの合理化人間でひねくれものである(根はいい奴)。第2話ではその慎森と大豆田とわ子とが“自分のキライなもの”を言い合うシーンがあって、そこにふたりの性格がにじみでているのであらためて分析してみよう。
◆中村慎森のキライなもの
「犬派ですか?猫派ですか?って聞かれるよりキライ」
「お休みの日は何してるんですか?って聞かれるよりキライ」
「椅子に座ってから券売機で食券買ってくださいって言われるよりキライ」
これらの共通項から言えることは、慎森は「無意味なものや非生産的なものがキライ」なのがわかる。特に、接触する相手のいるシチュエーションでキライなものが多めである。
それに対して大豆田とわ子は、
◆大豆田とわ子のキライなもの
「紙でピッて指を切るよりキライ」
「ビュッフェのカレーのお玉の持つところにカレーがついてるのよりキライ」
「戦争よりキライ」
こうして比較するとぜんぜん傾向が異なるのがわかる。
こちらは「予定調和じゃないことが突然起こり、理不尽に計画がくるうことがキライ」と分析できる。
さて、第5話では、大豆田とわ子はこの予定調和ではない“突然のサプライズ”に悩まされ続ける。苦手なのに。
大豆田とわ子は誕生日が近い。
会社で自分の誕生日の“サプライズパーティー”が計画されていることに気づいてしまい、気が重い。サプライズなのに先にそれに勘づいてしまっていて、当日気づいてなかったお芝居をしてきちんと驚けるかが気がかりで、気が気でない。
家に帰ってからも驚く稽古をする大豆田とわ子。
そうこうしてるうちに、今度は、マッサージを受けて足がつってる時にプロポーズされる大豆田とわ子。
そのあとも次々と続くサプライズ。
自宅に帰ったら3人の元夫が三人そろって部屋のソファに座って待っていたり、靴下を急にプレゼントされたり、1人目の元夫の片想いの相手が自分の親友だったのだと急に気づかされたり、案件予算が突然縮小されてしまったり、付き合ってくれと言われた相手に「かわいそうな人だから」と不意にホラー映画級にディスられたり、その男がクルマで突然あらわれて「乗ってください」と連れ去られたり。
“サプライズ”は元夫たちにも伝染する。
急に女優に呼び出されて駆けつけると酔って人前で自分が主役のドラマ主題歌を大声で歌っていて悪目立ちしていたり、
気になっている女の子が実は何年も前から暮らしているホテルの清掃員だったことに初めて気づいたり、
何度フっても何度フってもまたその子がレストランに顔を出してきたり。
◆◇
予定調和じゃないことが起こり計画がくるう。
「戦争がキライ」大豆田とわ子はそう言った。
戦争こそサプライズのかたまりだ。
急に爆弾を落とされる。突然、理不尽に。
だからキライ。
夜がきたら、かごめの書きあげたマンガを読みにいって第一号の読者になる約束だったのに。大豆田とわ子はいなくなってしまった。
主人公の不在。
生きていくというのは、まさにサプライズの連鎖だとしめされる。“それでも、生きていく”のである。
(おわり)
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