あわくら温泉 元湯|岡山県英田郡西粟倉
鳥取県と兵庫県との県境に位置する人口約1,400人の小さな村・西粟倉村にある温泉ゲストハウス、「あわくら温泉 元湯」。
西粟倉村の穏やかな景色を楽しみながら車を走らせていると、「あわくら温泉 元湯」「ようこそ!」と書かれたのぼりがはためいているのが見えてきました。
出迎えてくださったのは半田 守(はんだ まもる)さん。このお宿のオーナーをされています。
20年ほど前まで、この場所は地区が管理されている場所として、地域にお住いのおばあちゃんが番台をする宿屋だったそう。
その後、2015年に株式会社sonraku(西粟倉村を拠点にバイオマス事業・コンサルティング事業を行う会社)が宿を譲り受け、ゲストハウス風にリニューアル。
埼玉県でお勤めだった半田さんは、前職の経験を踏まえ「使われていないものを価値に変える仕事」を探していたところ、株式会社sonrakuの「薪をエネルギーに変える仕事」に出会い、西粟倉村に移住を決められました。
そして、そこでの3年間の経験を糧に、半田さんは独立。2021年1月にオーナーとしてこの場所を引き継ぎ、現在は2名のスタッフと一緒に「地域の特性を生かした宿」を目指して経営をされています。
元湯の温泉は、源泉100%。「あわくら温泉」として村内に湧き出る源泉を、森から出る間伐材を薪にしてボイラーで燃やし温め、宿の温泉としてお客様を癒しています。
そもそもあわくら温泉には、「傷ついていたタヌキがあっという間に元気になって帰ってくる様子を見た鎌倉時代のとある村民が、タヌキを追っていった先にこの温泉をみつけた」という言い伝えがあるそう。
そんな効能ある温泉を楽しめる元湯は、今も昔も地域の皆様に愛されながら、近年では遠方からのお客様の身体もぽかぽかに温めてくれるような場所なのです。
ただ、元湯は温泉を楽しむだけではもったいない。
というのも、半田さんがオーナーを務められてから、お客様がここをめがけてやってくる大きな理由の一つに「焚き火」があるのです。
ご案内いただいた客室を拝見し、私はびっくりしました。 「お部屋のこんなに目の前に焚き火スペースが!」と。
溢れかえるほどに森からできる薪を「いかに面白くできるか」という半田さんも思いをもとにできたこの焚き火スペース。
中心に炎、その周りを取り囲む人々の姿がすぐにイメージできました。
平日にはお仕事で村を訪れた方や一人旅をされている方、休日にはお友達同士や、小さなお子様連れのご家族が利用されることも多いそう。
「エントランスも子供の遊び場になっているので自由に遊ばせて、くたくたになった子供たちが寝入った後に、夜は大人だけでゆっくりと焚火をして過ごしたり。先代のおかみの想いも引き継いで、子連れでも家族で楽しめるゲストハウスであることを目指しています。」と半田さん。
火を囲むことでいつもと違うちょっと深い話ができたり、満点の星空を眺めながらゆったりとした時間を過ごしたひと時は、きっとお客様の大切な思い出になっているだろうなと感じました。
そしてもう一つ、「地域の特性を生かした宿」らしさを感じられるのが、お食事です。
元湯では、朝食時には西粟倉の特産である檜(ひのき)の酵母で作る「ヒノキパン」、夕食時にはヒノキのエキスで香りづけた「ヒノキビール」や、鹿肉や地元産の野菜を使用した「ジビエ料理」が楽しめるのです。
「先代から引き継いで今で1年半。やっと流れが見えてきて、自分たちも楽しく、お客様にとっても満足度の高い宿になってきた」と半田さんは今の思いをお話してくださいました。
今後は、現在は外部の方の力も借りて作っているヒノキビールを元湯内で作れるよう醸造所を設置したり、源泉が引けること・敷地内に活用できるスペースがあることを踏まえ、「温冷交代浴」ができる水風呂を作ったりするビジョンもあるそう。
仕事が好きで「四六時中、仕事のことをめっちゃ考えています」とおっしゃっていた半田さん。前向きで創造的なアイデアを沢山お持ちの半田さんと、ホスピタリティに溢れた素敵なスタッフの方々が作る、唯一無二の温泉ゲストハウス「あわくら温泉 元湯」。
皆さまもぜひ、素敵なひと時を過ごしに訪れてみてはいかがでしょうか。