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松屋の水煮牛肉で人体の仕組みを知る

 ダイエットを志している。

 いや、いちおう取り組んでいる。取り組んではいるのだがなかなか成果が上がらない。ならば方法を変えてみようと思ったのが昨日だった。

 朝ご飯をしっかり食べ、夕飯を軽くする。朝食べたものは日中の活動で消費されるから、わりとしっかり食べて良い。

 そんなにしっかり食べたいというわけでもないのだが、現状で成果が出てないのだからとりあえず試してみよう。最近は午前中に起きるのがしんどかったが、今日は9時に起きることができた。

 10時。近所の松屋に向かう。

 何を食べようか迷っていると、「マジで冗談抜きに激辛」と話題の水煮牛肉があった。

 マジで激辛らしいが、まあでも私は辛い物好きだし、イケるのではないか。そう思って、注文をした。

 一口食べて、「あ、これはヤバいかも」

 辛い物、中でも唐辛子系のものは蓄積ダメージがある。最初は大丈夫でも、後半は駄目になっていることがある。

 一口目の時点で「これはいつ限界を超えるかわからない」と判断した私は、慎重に唐辛子の輪切りを避けて食べ始めた。

 行っているのは食事のはずなのに、緊張の連続だ。手術でもしているかのような集中力でなんとか具材を食べ終え、「辛かったけど美味しさもあったしまあいいか、二度は食べないけど」で終わるはずだった。


 13時。突然の腹痛。

 30分ほど経過して、これは……さすがに耐えがたいと判断した。たまたま生理の日程とかぶっていたので、このときは生理痛かもと思って痛み止めを飲む。

 30分経過。治まらない。

 普通痛み止めを飲んだら遅くても15分くらいには効いてるはずだ。なんで効かない? もしかして、昼食を食べる気分じゃなくて食べてないから、胃液の分泌で胃が痛くなっている……?

 考えられる策はすべて取っておこう。プロテインドリンクとカロリーメイトを一袋食べ、様子を見るが、治らない。

 私は痛みに鈍いうえに、癖で痛みに耐えてしまう。おまけに痛みの解像度も低いので、この痛みが何系なのか見当がつかなかった。

 ただ、生理痛系の痛みはまだ耐えられるほうで、消化器系の中でも下痢系の痛みは神に祈ることがある。今回は神に祈る勢いだったので、消化器系ではないかと推測した。

 ひょっとして、朝に激辛のものを食べたから……内臓にダメージが入ってる……!?

 私は胃は比較的丈夫だ。実際食べてしばらくはなんともなかった。とすると今痛いのは……小腸だ……!


 辛い物を愛好していると気が付かないことが多いのだが、辛い物を愛好するには人体設計の適性が要る。

 第一に口内の刺激に耐えられること。これはまあ味覚として認識しているのでわかるだろう。

 第二に消化器が耐えられること。胃が耐えられるかどうかは、胃の燃え上がる感覚で気づけるのだが、小腸以下のことは考えてなかった。私はここを意識したことがなかった。

 第三に排せつの粘膜が耐えられること。辛い物を食べると肛門の状態が酷くなる人間は、辛い物が食べられないらしい。言われてみれば辛い物を食した近日は肛門がややヒリヒリする瞬間があったような気がする……。

 15時半。急に痛みが引く。大腸に到達したのだ。

 聞いた話によると大腸には痛覚がない。ここまで来てしまえば、あとは肛門が耐えられればなんとかなる。

 私はちょうど15時半から出かける用事があったので、ここで痛みが引いて本当に助かった。出かける用事のある日の朝に激辛のものを食べてはいけないことを学んだ。

 19時50分。たぶんこれが朝食べたやつだ。やや肛門がヒリヒリするからたぶんこれ。小腸以外は丈夫だったようで、この程度で済んだ。

 激辛のものを食べたせいで、夕飯を食す気分にならないのが、「朝がっつり食べたから」なのか「内臓がただれてるせい」なのかわからない。たぶん後者だろう。朝をがっつり食べれば夕飯が軽く済むかどうかの検証は、またの次回にお預けだ。


 私は筋肉痛を感じると人体の構造と営みを感じて喜ぶタイプのドMなので、今回のことも、だいたいこの時間の速度で体内を移動するのか、ということがわかってちょっと嬉しい。

 ただマジで横になる以外なにもできないレベルの腹痛だったので、これは普通に嫌だったな。筋肉痛程度なら喜びが優先されるのだが、今回の痛みは普通に嫌だった。ほんとに。

 辛い物を好む同胞に告ぐ。これはやめとけ。舌が無事でも内臓が無事で済まされない可能性がある。

 定期的に激辛カレーで腸内洗浄騒ぎが起こるが、今回の料理はそのレベルだと思ったほうが良い。本当に、マジで食べないほうが良いです。今回ばかりは体を大事にしましょうね。

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東空とりな
あるととっても嬉しいです。