誘惑《詩》

何曜日だったかなあ ふと思い出してみたり
交差点のざわめきや 悲鳴に背を向けながら
時間の都合 腕時計のベルトが切れかけている
野次馬の間を押しのけて 仕方なくタクシー拾う
 
青い空が乱れて 僕は途方に暮れて
あなたに誘惑され 眠りの国へいざなう
 
甘いラムネ色をした瞳が優しく微笑む
支配されていくよ 壊れたエンターキー
羊雲の道を行く 一握り勇気を連れて
風にゆだねながら かすめる花びら
メフィストなにがしが光る腕を伸ばして
くらんだ僕の下で静かに息をする
 
どうやらここは事件現場 遠回りはできない
演説が聞こえてきたら とりあえず両手はグーにする
ベルトが切れ 腕時計が落ちてガラスが欠けた
進学祝いのだったけど 直す気力も湧かない
 
美しいもの探しに 時よ止まれなんてね
あなたの手招きで もつれ合うように
 
甘いラムネ色をした瞳が優しく微笑む
のみ込まれていくよ まるで僕じゃないよう
青い空は死んだのさ 流行りやまいにやられて
いっそこのまま僕も ここから逃亡しよう
メフィスト某が光る腕を伸ばして
息をのんだ僕の下で静かにあくびをする
 
甘いラムネ色をした瞳が優しく微笑む
支配されていくよ あなたの誘惑に
青い空は戻らない 流行り病にやられて
そうさこのまま僕も 着の身着のまま行くよ
メフィスト某の光る腕をはたいて
お前はお呼びじゃない 僕はひと眠りする
そして愛する人の腕の中で涙する

いいなと思ったら応援しよう!