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自動車が外側にロールする理由は?

車はなぜ外側にロールするのか。ちょっと冷静に考えると、別に内側にロールしても良いわけで。自転車やバイク、電車は進行方向内側へ傾きながら進んでいるし、陸上競技を見ていても選手はトラック内側に体を傾けている。答えはロールセンターとばね上重心の位置関係がその理由で、ロールセンターがばね上重心よりも低い位置にあれば進行方向(軌道)外側へロールし、逆にロールセンターがばね上重心より高い位置にあれば内側へロールするから。

ロール時の回転軸に該当するロール軸は前輪・後輪それぞれのロールセンターを直線でつないだもので、ロールセンターはサスペンションアーム(リンク)やタイヤの位置で決定される。例えばストラット式サスペンションの場合、(1)「ロアアームとアッパーマウントの車体取り付け部分をそれぞれ延長した時に交わる点」と(2)「タイヤと路面の接触点」をつなぎ、これを左右両方で行った時に現れる交点がロールセンター(の位置)になる。基本的に車高を下げればロールセンターは低い位置に、反対に車高を上げればロールセンターは高い位置に決まる。ロール剛性の変化が影響している。

ロールしない足回り(いわゆる「固い足回り」)にしたければ極端にバネレートの高いコイルスプリングを組めば良いが、そうするとタイヤが跳ねてばかりで路面に追従せず、トラクションが伝わらなかったりと運転手にも乗員に不快感を与えかねない。車高を下げてロール量が増えた(ロール剛性が下がった)からバネレートの高いスプリングに交換したという例は、おそらく枚挙にいとまがない(数えたことはない)。もしかしたら、車高を下げるとロール剛性が下がってロール量が増えるということを知らない人が多数なのではと思う(筆者も24歳くらいまで知らなかった)。

ウェブサイト「自動車の旋回時ロール姿勢:三次元運動方程式」の運営者の尾﨑明德氏へメールにて意見をうかがったところ、尾崎氏は内ロールの自動車を実現する方法としてウイングアームサスペンションと呼ばれるロールセンターを高い位置に設定できるサスペンションを提案している。曰く、多くの自動車に採用されているサスペンションはロールセンターをバネ上重心よりも高い位置に持ってくるという意図がない、とのこと。つまり、ロールセンターの位置がサスペンション機構によってバネ上重心よりも高い位置になることが重要ということになる。

出典:『自動車の旋回時ロール姿勢:三次元運動方程式』

私は、バネ上重心位置を下げることで位置を逆転させるような方法を思い浮かべたが、尾崎氏はこれについて「自動車の開発経験から車体と座席の相対的な逆ロールは違和感が心配です」とのこと。

車高を上げればロールセンター位置を高くできるが、リバウンドストローク減少によるジャッキアップ現象やロールオーバー(横転)の対策など考えることが山積み。全長式の車高調を使えばストローク長をそのままに車高の調整が可能なので多少やりようはありそうだが、調べた範囲ではポン付けで内ロール実現とはいかなさそうだ。私自身は内ロールに魅力を感じているので自車で実現したいとつねづね思っているが、果たして、といったところ。サスペンションそのものが外ロール前提で設計されているのでその通りに乗るのが無難。あるいは、理論を知った上で各種セッティングを行うこと。何も真新しい見解を提示できないのが残念なところだが…

ところで、メルセデスのアクティブサスペンションはコーナーリング時に車高を制御することで内ロール(メーカーは「逆ロール」と言っているが、ここでは内ロールと表現する)姿勢を作り出している(ザックリとした説明だが、気になる人は各自でお調べを)。内側の車高を下げて外側を上げるというなかなか強引な内ロールだが、これはこれで面白く、「内ロールが本来のあるべき姿」と開発陣が考えているように見えるが、実際のところどうなのかは不明。なお、国内外さまざまな自動車メーカーがアクティブサスペンションに着手しているが、今回は割愛(調べきれていない)。

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