フルブレーキ、回避、そして挨拶
小説みたいなエッセイみたいなものを執筆しました。ぜひご覧ください。
※この内容はフィクションあるいは実話です。
諸用を終えた鳥居は愛車のブーンX4を走らせていた。排気量1.0Lにターボチャージャーが搭載された直列4気筒ターボエンジンが重低音を奏でるクロスギアレシオの5速マニュアル・トランスミッションの刻み良いシフトアップがそれを途切れさせない。
金華橋通りから長良川を越えて北へ向かう。金華橋通りは岐阜市内の駅前側に通る岐阜県道54号岐阜停車場線、岐阜県道151号岐阜羽島線、岐阜市道と異なる3つの道路で構成される金華橋通りは岐阜市内の主要道路の1つだ。道路沿いには老夫婦が営む呉服店や自転車店など昔ながらの店が並ぶ一方、その役目を終えた商店街の跡も目立つ。それでも、毎月第3日曜日には商店街を利用したイベントが開催され、地元民が集うローカルエリアは結構なお祭り騒ぎだ。
週末なんて車を走らせるものじゃない。サンデードライバーという名の烏合の衆たちが渾沌を創造する。車の動かし方を覚えているわりにマナーや道路交通法をうろ覚えしているやつらは家でNetflixでも鑑賞していればいい。喉元を逆流しようとする心の声を飲み込み、法定速度を守りながら5速ギア巡航を続けた。
ブーンのトランスミッションにはシンクロメッシュ機構が採用されているためシフトダウン時にダブルクラッチもヒールアンドトゥも必要ない。それでも鳥居は、シンクロ周りの部品の消耗を抑えることに加え運転の娯楽性を求め、旧時代の運転技術を駆使する。シフトダウン時にクラッチを踏む回数が1回増えることによるシフト操作の遅れがあるのは確かだが、ギアの入りやすさは圧倒的で、3速ギアから2速ギアへのシフトダウン時にその影響は明らかだった。
人通りが多いエリアを過ぎ、警察署近くに差し掛かったあたりで右折専用レーンから左隣の直進レーンへ車線移動した。右折しても目的地へは到達できるが、できるだけ直線的に移動したほうが無駄がない。交通車両が多く道が広い交差点を右折するのはいろいろリスクもある。
数十メートル先の交差点の信号が青であることを確認してその交差点へさしかかったところで、鳥居は対向車線の右折車両が現れて自身の走行車線を塞ぐような状況になったことを理解した。右直事故を引き起こす典型的なパティーンである。
状況を瞬時に理解しすかさずフルブレーキングをかけた。トヨタ・91ヴィッツRSのブレーキキャリパーにディスクローター、そしてプロジェクトμのブレーキホースにブレーキパッドが強烈に制動をかける。車両重量1トンを切っていることもあるが、とあるアフターパーツメーカーが一時期売り出していたキャリパーサポート(ブラケット)を使って上記ヴィッツのブレーキを移植していたのが幸運だった。中古車で購入した時からこの仕様であったが、ディスクブレーキは新品へ交換済みである。いつでも安心してフルブレーキングできる整備していたのは、まさにこのような時のためだ。フルブレーキングと同時に左のサイドミラーを覗き、左車線へ回避し、さまざまな感情が込み上げたが、相手ドライバーへ手を振り挨拶することで平静を装った。余韻に余韻が重なった。
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