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演技の修行してたら最終的にうさぎパイ焼いた。
ごきげんよう、鳥居です。
今日も元気に生きております。
わたしが上京したのは2019年5月ですので、東京生活もコロナ禍を乗り越え6年目に突入しそうです。
今日はそんなわたしの俳優修行(?)のおはなしです。
※注意※
結構しっかりウサギの形をしたウサギ肉や、
解体したウサギ肉のややグロテスクな画像は、
センシティブなので一番下の有料記事パートで公開してます。
怖いもの見たさの方はどうぞ。
Playroomってとこに参加したよ!
おかげさまで東京で俳優としてなんとかやってるわけですが、「もっとお芝居の修行をしたい!」「本番以外で継続的に実力を磨きたい!」ということで、ここ2年ほど、「Playroom」という演技ワークショップに参加しています。
Playroomについてはこちら。
Playroomについては、過去にも記事書いてますので、鳥居がどんな感じで取り組んだのか、興味ある方はそちらも読んでみてください。
なんたって今日のメイントピックは、そちらの記事で書いてあるようなことじゃありませんので。
『アルカディア』って戯曲を読んだよ!
Playroomに2年連続で参加し、2年連続でトム・ストッパード『アルカディア』という戯曲に取り組みました。
こちら、イギリスはダービシャーにある貴族のお屋敷を舞台に、19世紀と現代の二つの時代をまたぎ、悲喜交々のあれやこれやが起こる激面白い最高戯曲、だけどめちゃくちゃ長くて難しいのでまじでPlayroomでこの戯曲にであえてよかったPlayroom397⭐︎(サンキューな⭐︎)な作品なのですが、こちらについても割愛します。
面白いから時間のある人はぜひ読んでほしいし、この戯曲の面白ポイント好きなポイントはやまほどあるので、聞きたい方は個人的にわたしに聞きに来てね!
おそろしいことに、Playroom参加者はだいたいみんなこうなります。(過言)(全員とは言わない)
さらにおそろしいことに、参加者以上に講師の黒澤世莉さんがこの戯曲について無限に語れるお方です。(これはほんとう)
ともかく、このようにわたしは2年かけてひとつの戯曲をほりほりディグディグしてきたわけです。
もともと戯曲や小説に「給料がいくらだった」みたいな一文が出てきたら、その国の貨幣価値や当時の日用品や嗜好品の値段を調べて、「その額がその登場人物にとってどれくらいの価値を持つのか」調べたくなっちゃう気質がある人間なので、
案の定、『アルカディア』に出会ったわたしは19世紀イギリス貴族の生活が気になってしかたなくなったわけです。
「キッチンで昨日の兎パイをいただいてたんだけど……」
これはこの作品の主要人物のひとり、トマシナの台詞の一部。
トマシナは19世紀イギリス、ダービシャーのお屋敷に暮らす、クルーム伯爵家のご令嬢。
兎パイは彼女の好物なんですね。
貴族の皆様は広大な敷地をお持ちで、その土地に暮らす動物を狩ったりして遊んでるんですね。
そうして狩った動物をパイになんかしちゃったりするんですね。
また、トマシナはこんなやり取りもしています。
トマシナ「今日のお夕食は何?」
執事「ハムとキャベツの煮込み、それとライスプディングです。お嬢様」
トマシナ「まあ、素敵」
「まあ、素敵」?
聞いた感じ全然おいしそうなイメージがわかない……
ハムをなぜ煮込む……そしてライスプディングは日本人的にまずいと聞いたことがあるぞ……
・兎パイ
・ハムとキャベツの煮込み
・そしてライスプディング
いったいどんな食べ物なんだー!どんな味がするんだー!ということが、わたしはとても気になってしまったんです。
もう一度気になったら作るっきゃないな、ということになりました。
作るか、うさぎのパイ。
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そんなわけで、Playroomのグループラインにて、「おい、パイ食わねえか」のお誘いを投下。
こういうのは有言実行せざるをえない状況を作るのがいいのです。
まず、レシピを調べる。
なるべくイギリスのレシピに準じたかったので、BBCのレシピサイトや、『British Bake Off(イギリスの料理リアリティショー)』出演のMary Berryのレシピなどを参考にしました。
【わかったこと】
・「パイ」の生地はバターではなくケンネ脂を使う
・イギリスのハム肉の分類は日本と違う、塩抜きしてない肉が売っているのでそれを煮込んで食べる
・ヨーロッパで一般的なキャベツは、日本ではちりめんキャベツと呼ばれているもの
などなど……調べていくといろいろ必要なものがわかったのですが、それらを入手するのもなかなか大変でした。
ウサギ肉とハム(塩抜きしてないやつ)はネットで、
ちりめんキャベツとケンネ脂はちょっと遠出したスーパーで……
ネットと足を駆使して材料を入手しました。
ちなみにお肉類はここで買った。
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ウサギ肉はまあまあ高いので、(6,000円くらい)失敗したくないし試作でパイを焼いたりもしました。
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いざ、うさぎパイパーティー
兎パイ職人の朝は早い。
ウサギ肉を煮込むのに1時間かかる。
ハム肉を煮込むのにも1時間かかる。
ライスプディングはオーブンで2時間焼けとか言われる。
イギリス料理、時間がかかる……!
のでパーティは11時から調理開始、13時くらいには何か食べられるようにしました。
好きな時間に来ていいよ、と言ったら11時に来たのはひとりだった。
というわけで二人でウサギ肉を解体した。
(早くから来てくれたPlayroom仲間のみお、ありがとうね)
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ウサギ肉の解体、とても楽しかったです。
哺乳類を捌くのは初めてだったのですが、
「こんなふうに骨つながってるのかー!」
「こんなふうに内臓ついてるのかー!」
というのがとても面白くて。
俳優をしていると、自分の身体の構造に意識を向ける時間が結構あるのですが、
ウサギの身体を観察するのが結構それに役立った気がします。
小さくて骨がとても細かくて、繊細な生き物なんだなぁと思いました。
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ウサギ肉を臭み消しの野菜やスープなどと一緒に、1時間ほど煮る。
煮えたらスープと野菜と肉に分け、お肉をほぐします。
スープはあとでソースにする。
野菜は捨てていいらしいんだけど、勿体無いから後でなんちゃってポトフにしました。
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細かい骨を除きながら、お肉をわけわけ。
この辺から人が集まり始めたので、みんなでやりました。
同時進行でライスプディング焼いたり、ハムとキャベツを煮込み始めたり……いそがしいそがし!
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ベーコンとマッシュルーム、さきほどのスープで作ったグレービーソースをかけ、
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いい感じにパイ生地を被せる。
飾り付けは合作です。
このためにウサギのクッキー型も買った。
かわいいでしょ。
そしてこれがこうじゃ。
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味の感想なんですが、
めっちゃうま〜い!
お肉や野菜の旨みが詰まってて美味。
ウサギ肉自体は鶏肉のようにあっさりとしたお味だった。
ベーコンの塩気や生地のしっかりさとのバランスが大変よし。
ウサギ肉には内臓も一部ついていたので、これは解体時に除去して塩胡椒で焼きました。
ハツ、脾臓、レバーなど。
まんま焼き鳥みたいだった。
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ライスプディングは何度試作してみても「激マズ甘米」にしかならなくて頭抱えたんだけど、
これはレシピを無視して自分の美味しいと思う方向性で料理することで解決。
コメの形無くなるくらい煮込んでから、オーブンで焼きました。
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ライスプディングは『アルカディア』の中で、ちょこっとだけ重要アイテムとして登場します。
ジャムを混ぜて食べた。混沌のピンク。
一番好評だったのが、じつはハムとキャベツの煮込み。
これはアイルランド料理らしい。
塩漬けハムのハーブと肉の旨みが染み出したスープで、煮込みに向いてるちりめんキャベツを煮る。
そりゃあうまいわけだ!
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そんな感じで、総勢10人の俳優たちと、イギリス料理を作り食べる会をしてみたのでした。
お酒飲んだりお話ししたり、最終的にはなんかみんなで『キングスマン』みてた。楽しかった。
ひとりじゃとてもできなかったことだから、わたしの思いつきに乗っかってくれる人がこんなにいて、嬉しかったです。
これがわたしの戯曲読解だ!
イギリス貴族の生活なんてわからん!
と思いつつ、読んでいくとだんだん彼らの人間臭さが見えてきます。
『アルカディア』は2年前に出会って以来、日本語版も英語版も何度も読み、関連書籍でイギリスの庭園についてや貴族の生活についても探りました。
わたしが実際に貴族として生活してみるのは無理だし、イギリスにいくのも簡単ではないので、おうちでできる「料理」という形でこの戯曲にまた深みを持たせられたのはとてもよい体験だったと思います。
ちなみに、Playroom講師の黒澤世莉さんに
「ウサギパイ焼きました!戯曲読解ってたのしいですね!」
と連絡したら
「節子、それ戯曲読解ちゃう!」
としっかりツッコミをいただきました。あれれ。
(のちに「まあそういうのも読解としてありか……」ともコメントくださいました)
いやあ、それにしても演劇の長期ワークショップに2年ほど参加して、最終的にウサギを捌いてパイを焼くとは、はじめに参加した時のわたしは想像もしなかっただろうな。
戯曲メシの再現、とても楽しかったのでおすすめです!
海外の調理の時間感覚などが体感でき、不思議な気持ちになりました。
※センシティブ画像ゾーン
さて、上では省略しました、ウサギさんをみていきましょう。
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今日は発泡酒じゃなくてビールにしようって思えます。