O-MENZ投稿動画感想~【O-MENZ】UNDEAD / YOASOBI 踊ってみた
2024年12月8日投稿。3分4秒。
動画概要
お面を付けた5人組ダンスグループ「O-MENZ」(オーメンズ)より、おかめ、隈取、狐の3名が、YOASOBI『UNDEAD』に合わせてO-MENZオリジナルの振り付けで踊る動画。
※O-MENZについてはこちら
演目「UNDEAD」について
初出は2024月12月7日 百戦錬磨-賽-@東京 上野公園下町ハイカロリーフェスのフリーライブ。「今日は新しい踊ってみたをやりたいと思います」という前フリで突然披露された。曲目も踊るメンバーもこの時に初めて発表されたものである。ちなみに、この3人のメンバーで踊る演目は初。
※当日のセットリストは以下を参照
その後、TikTokへのショート動画投稿、12.14.百戦錬磨-賽-@仙台イービーンズでの披露などを経て、初出より20日後にYoutube動画が投稿されたという形になる。
楽曲「UNDEAD」について
2024年7月リリース。YOASOBIが歌う、2024年のアニメ『〈物語〉シリーズ オフ&モンスターシーズン』のエンディングテーマだ。
『〈物語〉シリーズ〉』は西尾維新によるライトノベルで、『化物語』をはじめとした作品群は次々にアニメ化され人気を博した。非常に深遠で示唆的な作品である上に、筆者は当シリーズを未履修であるため多くの言及は控えたいが、『UNDEAD』を少しでも理解するために最低限調べたことをメモしておく。
まず『UNDEAD』(ゾンビや霊など、死後も活動し続ける存在)というタイトルは、「死体の付喪神の怪異」である斧乃木余接(おののき よつぎ)を指していると思われる。公式MVのサムネイルに登場している青緑色の髪の少女が斧乃木余接だ。歌詞中の「ピースピース」は斧乃木余接のセリフ。横ピースやダブルピースをしながら口にすることが多い。
ほかに歌詞の元ネタとなっているであろう斧乃木余接のセリフは、
「不幸に甘んじて満足するなよ 幸せになろうとしないなんて卑怯だ」
↓
「不幸でい続けることは怠慢だし、幸せになろうとしないことは卑怯だよ」
「目指せハッピーエンド」
↓
「不幸なくらいで許されると思うな。ハッピーエンドを目指すべきだ」
などがある。
「Past and future」は、『UNDEAD』の原作小説となる西尾維新書き下ろし短々編『なでこパスト』『しのぶフューチャー』からであろう。(YOASOBIの楽曲が小説をモチーフとしていることはご存じかと思う。)
この短々編の主人公は斧乃木余接で、彼女が『オフ&モンスターシーズン』の主要人物となる千石撫子(せんごく なでこ)と忍野忍(おしの しのぶ)のカウンセリングを行うという内容になっている。
YOASOBIのAyaseは『〈物語〉シリーズ〉』の大ファンとのこと。ほかにもまだまだ仕掛けがあるらしいのだがこれくらいにとどめておく。
振付■ハウスステップを基軸とした軽やかなコレオ
サビのスピーディな足さばきと、アクセント的に挿し込まれるフロアワークが印象的。ダンスのジャンルとしては「ハウスダンス」とのことだ。ただ、一般的なハウスミュージックのテンポはBPM120~130程度らしい。『UNDEAD』はBPM144だそうなので、だいぶテンポが速くなってしまっている。これがフットワークがスピーディになっている一因ではないだろうか。
振付はおかめが担当。「地味に難しくて疲れる振付を作ってしまった」とコメントしている。ほかにも「足元に注目が集まる振付にすることで、今後大きなステージで踊る際に映えるような構成を目指した」と語っていたと記憶している。
ちなみにおかめはYOASOBIが好きだという話なので、選曲もおかめである可能性が高い。
動画解説■1番
動画に合わせて順を追って見ていこう。衣装はメンカラシャツに黒ベスト・黒パンツだ。
0:00「悩める人の子よ」
冒頭はジャッキングから始まる。センターに立つ隈取がまず動き始めると、それを見てちょっと驚くようなそぶりを見せる狐とおかめ。かわいらしい。
0:08「目を逸らした過去も」
さっそく8分音符でスピーディにステップを刻む足元が映し出される。ワイルドさが見える隈取、キレよくさばく狐、リーチが映えるおかめと、揃ったステップであっても個性が出ているところがO-MENZの良さだ。
0:23(間奏)
狐・おかめが画面外に消えると、曲のガラスが割れるようなSEに合わせて隈取が勢いをつけて画面を殴ってくる。
0:33「過去の自分 自分 自分 自分と」
Aメロ歌い出しはセンターで踊っていたが、ここから画面右手に寄っていき、ステップしながら左手に移動していく。広いステージで映えそうな、横幅を利用した動きだ。
0:39「残念?もう居ないのに」
ジャンプドルフィン(飛びシャチ)から後ろに這いずってスコーピオン。突然のフロアワークが鮮やかで、ライブで披露した際の沸きどころでもある。おかめはドルフィンの後フレームアウトし、隈取・狐の「筋肉組」のパートに入る。
0:46「ナンセンス 消えないレッテル」
筋肉組のブレイキン。6歩からのLA、横向きでのスコーピオン(技名、合っているだろうか)。ブレイクダンスは一般にパワフルな印象だが、このパートはシックなツヤのある衣装も相まって実に美しい。
0:54「まだ離れない在りし日の自分」
おかめがセンターに割って入り、ふたりを追い払うようなしぐさを見せる。強者感。
0:59「Undead 死んじゃいない お前とお前の連鎖」
サビ。しっかりと揃ったステップを押し出していく振付だが、手元を見ると三者三様の動きをしておりこれはこれでおいしい。
1:16「次は鬼が出るか蛇が出るか」
片足立ちで半回転した後、手のひらを前に突き出す。ひそかに人気のあるパートだ。おかめと隈取は右手を出して左手で右手首を掴んでいるところを、狐は両手のひらを重ねて顔を隠すような角度で出している点が筆者のお気に入りポイント。
1:26「Past and future Can't change the past」
クルリと振り返りお尻をフリフリ。かわいい。
動画解説■2番
1:33「カ カ カットイン」
隈取がジャンプドルフィンのように斜めに飛び込む姿勢を取るが、瞬間的に右手で体勢をキープし左手でポーズを決めている。技名がわからなかったがかっこいい。
2×8カウントで隈取のソロ。得意ジャンルであるブレイクダンス。チェアを決めておかめ・狐の「ポッパー組」に引き継ぐ。
1:40「もう随分生きている 既視感とテンプレで食傷」
ポッパー組ふたりのポップダンス。クールな振付が歌詞ともマッチしている。
1:46「残念 積んだ経験の因果」
おかめソロ。タットのような手の振りで魅せる。「要は刺激が欲しいんだ」で顎に手を添える仕草が艶やか。メンカラである紫の照明にお面の陰影が濃く映る。
1:53「なんて 整っていくガイダンス」
おかめが足の間から背後にいた隈取を引きずり出し、そのままおかめの前に座った隈取とふたりで踊るパート。座り込んだ隈取がテディベアのようでかわいらしいと評判だ。おかめの手の振りと隈取の足の振りがシンクロしていて操り人形のよう。これは斧乃木余接が人形のふりをしている設定と関係がある……かは不明。
1:59「吸い尽くして あれもこれもどれも 同じ味がする」
センターに割って入った狐のソロ。2×8に満たない短いソロだが、コードが目まぐるしく変わり落ちサビに繋がるブリッジに合わせて細かくヒットを刻み、ピリッとしたアクセントになっている。
2:07「Undead 死んじゃいない お前とお前の連鎖」
落ちサビ。照明が落とされ、バックライトに3人のシルエットだけが浮かぶ。
2:18「Undead 死んじゃいない お前に言っているんだ」
ラスサビ。1番と振りは同じ。「古今東西 一切合切 森羅万象 ピースピース」の畳みかけには、負けじと素早いステップで応えている。
「ピースピース」ではおかめの横ピースも見ることができる。意外にも、この映像中でピースをしているのはここだけ。サムネイルでは全員ダブルピースをしているが本編映像にはない。
2:55「人の在る所に何時も憂い事 生き抜けこの化け物ばかりの物語」
隈取→狐→おかめの順に4カウントずつソロを踊り、最後は曲に合わせてパンパンとハンドクラップをして締め。
ライブの『UNDEAD』との比較
2024.12.7. 百戦錬磨-賽-@東京 上野公園下町ハイカロリーフェス
先述の通り、これが初出時の映像。ステップのシンクロ感や立ち位置にまだやや粗い面が見える。O-MENZは披露回数を重ねるごとに演目の細部をブラッシュアップしていくため、まだまだ進化できることがわかる。さらに、何度か披露した後は当該演目を見慣れた客が驚くようなアレンジを加えてくることもあるため、今後が楽しみだ。
また、Youtube踊ってみたではわからない、各メンバーのソロの後ろでほかのメンバーがどのような動きをしているかを見ることができるのもライブならでは。おかめソロではおかめの後ろに2人が控えていることが確認できる。
2024.12.30.ファンミーティング「ワルダクミvol.10」ミニライブ@浅草花劇場
戦国衣装で登場したミニライブで、『UNDEAD』も披露された。この時からイントロが追加される。「Past and future Can't change the past」の部分のループが8小節。以降のライブではこのスタイルが取られている。原曲のままだと曲が始まって4カウントで踊り出さないといけないため、イントロがあった方がスタンバイしやすいのだと思われる。
ちなみにYOASOBI本人もライブでは類似したイントロを使用しているようだ。
2025.1.11.百戦錬磨-賽-@千葉 イオンタウンユーカリが丘
隈取と狐が「残念?もう居ないのに」でスコーピオンで起き上がる部分で、おかめもスコーピオンをしているのだが、画面左手にいる般若がおかめを引っ張り上げるような手振りをしているところがおちゃめ。そのすぐ後、「まだ離れない在りし日の自分」でおかめもふたりを引っ張り上げる仕草をしている。
上記のイオンタウンユーカリが丘、そして2025.1.26.百戦錬磨-賽-@千葉 イオンタウンおゆみ野はステージが狭く、奥行きが十分に取れなかった。そのため、奥行きを使うパートが若干変更されている。
①1番Bメロの隈取・狐デュオのパート終わり
通常:おかめがセンターに入り一緒にスコーピオンで起き上がる
ステージが狭いパターン:ふたりが起き上がってからおかめがセンターに入る
②2番Bメロの3人が縦に並ぶ箇所
通常:おかめソロで、おかめの後ろにいた狐が隈取の後ろに回ってしゃがむ
ステージが狭いパターン:おかめの後ろから抜けた狐は縦に並ばずややずれた場所にしゃがむ
こうした細かなアレンジは、現場に入って場当たりをしながらステージの広さや形状などによって決めているのだろう。リハーサルの重要性を感じさせられる。
O-MENZ以外の『UNDEAD』踊ってみた動画との比較
まず改めて本家MVを確認すると、サビでキャラクターがタットやモンキーダンスなどのダンスをしている箇所がある。
アニメEDも含め、これ以外の公式振り付けは存在しない。そのため、Youtubeに上がっているダンサーオリジナルの踊ってみた動画を見ると、以下の要素を取り入れているものが多い。
公式MVより、タットとモンキーダンス
斧乃木余接のポーズより、ピースサイン
「UNDEAD」というワードから、ホラー要素
だが不思議なことに、O-MENZはこれらの要素をほぼ含まずに踊っている。ダンス一発で勝負するという意味なのだろうか。
RAB ESPICE
O-MENZと同じ事務所のRAB ESPICEの踊ってみたは、上記のポイントをすべて盛り込んでいる。エンタメ色の強いRABらしい作りだ。
澤村光彩
TikTokでよく見る振り付けのひとつ。いかにもTikTokerらしく手振りが中心だ。
YUTO
シャッフルダンサー・YUTOの振り付け。YOASOBI本人が再投稿したことでバズり、踊ってみた動画も多数アップされている。高速ステップが肝となるコンセプトがO-MENZのものと似ているように感じるが、そもそもシャッフルダンスというジャンルがステップを中心としたダンスだそうなので偶然だろう。ちなみに投稿はO-MENZが先。
まとめ~人成らざる者からのメッセージ
先ほど、「この踊ってみたではホラー要素を取り入れていない」と書いたが、O-MENZはお面を付けているという時点で怪異の要素を十分に含んでいるということに気づいた。100年生きながら命も感情も持たぬ斧乃木余接と、古来より伝わるお面で素顔を隠したO-MENZ。どこか「人成らざる者」の怪異性という共通点を感じる。
だが、その怪異は「生きていることとは変わり続けることだ」と叫ぶ。決して表情を変えないマスクをかぶりながら、軽やかに舞い、見るごとに形を変えていく姿は、人智の及ばぬ高みからの生へのメッセージのようにも感じる。
筆者はO-MENZが踊るまでこの曲を知らなかったが、「幸せになろうとしないなんて卑怯だ」というフレーズが特に心に刺さった。「どうせ私なんてこんなもんだ」と諦めて生活していることを見透かされたような気持ちだった。少しずつでも前に進み、進化を続けるO-MENZとともに、彼らが目指すハッピーエンドにいつかたどり着きたい。
最後に余談。Youtubeチャンネル「オーメンズの日常」では踊ってみたプレイリストを公開しているが、2025年2月2日現在、『UNDEAD』はこのプレイリストに入っていない。ひとつ飛ばして、後にアップされた『お願いマッスル』が先にリストインされてしまっている。どうか仲間に入れてやってください。