O-MENZ投稿動画感想~【狐&阿形】「はいよろこんで/こっちのけんと」踊ってみた
2024月12月1日投稿。1分31秒。
動画概要
2024年12月に毎週投稿されると予告があったYoutube動画の1本目。5人組ダンスグループ「O-MENZ」(オーメンズ)より、狐と阿形の2名が、2024年のヒット曲「はいよろこんで/こっちのけんと」に合わせて踊る動画。
※O-MENZについてはこちら
曲の長さはワンコーラス。当該曲には公式の振付があるが、当動画では元の振りのエッセンスをわずかに残しつつもほぼオリジナルのダンスとなっている。(※公式の振付でおかめ・狐が踊る動画もTiktokに存在する。以下参照)
演目「はいよろこんで」について
初出はO-MENZ Tiktokセカンドチャンネル「オーメンズの日常」アカウントによる2024年7月7日の投稿。おかめ・狐・阿形の3名で、サビのみだがYoutube動画と同じ振りで踊っている。
その後、8月12日 百戦錬磨-昇-チッタの夏祭りや、11月8日AREAROCK凱旋フリーライブ イオンタウン成田富里などで狐・阿形の2名によって披露されている。(2024年9-11月の全国ツアー「AREAROCK」で踊られたかは確認できていない)
フリーライブの際のこの演目の映像は公式から動画投稿されており、ファンの間ではすでにおなじみであった。今回のYoutube動画は満を持しての踊ってみた投稿となる。
楽曲「はいよろこんで」について
2024年5月リリース、SNSでの再生回数140億回。こっちのけんとは、2024年末の紅白歌合戦への出場が決まっている。
「ギリギリダンス ギリギリダンス」のフレーズが耳に残る当楽曲は、崖っぷちで生きる辛さを歌った曲だ。「はいよろこんで」とつい期待に応えてしまうが、心の中ではSOSを叫んでいる。キャッチーな曲調に対してビターなテーマを抱えた歌である。
ロケ地■街で踊る「ダンステロリスト」
「ダンステロリスト」とは、O-MENZが長年肩書きとしているワードだ。お面をつけた集団が突如街なかに現れ、ダンスをして、立ち去っていく。O-MENZの原点ともいえるスタンスだ。当動画は駅前のデッキ上で撮影されており、まさに「ダンステロリスト」らしい絵面となっている。ちなみに撮影は般若で、一発撮りとのこと。
ロケ地はこちら。
品川駅港南口の2階デッキを出てすぐ。背景の楕円形のビルは品川インターシティ。影の向きからすると、撮影時刻は午後~夕方頃と推察される。
振付■阿形に花を持たせたロックダンス
今回の振付は、阿形が得意とするロックダンスを全面的に採用している。そのため、ところどころに阿形のソロダンスを挿し込み、花を持たせる構成となっている。
阿形のロッキンといえば、切れ味の良い高速音ハメが特徴だ。O-MENZフルメンバーでロックダンスをすると、同じ振付で踊っても阿形は頭一つ抜けた動きを見せてくれる。大会で世界一になったこともあるという実力だが、その阿形に狐がしっかり並び立っている点がこの動画の大きな見どころである。
狐は得意ジャンルはポップダンスであるものの、どのジャンルも器用にこなすオールラウンダーだ。とは言え、超プロ級の阿形の動きに一糸乱れずついていくのは並ではない。しかも、阿形に合わせて若干食い気味にリズムを取り、シンクロ率を上げてきているように見える(先ほど紹介した初出の動画では、阿形は食い気味、狐はジャスト、おかめはやや後ろ気味でリズムを取っている)。おそらくだが、狐が阿形のクセを研究し、合わせにいっているのではないだろうか。それを見て阿形もそれとなく寄せていっている、と想像する。
O-MENZの魅力は5人それぞれ異なるダンスを踊る点にもあるため、今回のようにビタビタで合わせてくることは少ないのだが、この動画からは「やろうと思えばできますが?」という並々ならぬプライドを感じる。
動画解説■冒頭~サビ前
さて、ここからは動画を見ながら時系列に合わせて解説していこう。
0:00「はい喜んで」
狐が向かって左、阿形が向かって右。この演目はこれ以降終始立ち位置が入れ替わることはない。背中合わせでスタート。2小節ずつ交互に踊る。
0:15「あなた方のために」
狐が、背中を向けた阿形の肩に手を掛ける。この振りの意味をしばらく考えていたが、結論は出なかった。ただ、「はいよろこんで」の楽曲としてのテーマを思うと、崖っぷちに立つ誰かをそっと引き戻す手にも見えてくる。決して、正義仕立てで差し伸べられた手ではないはずだ。
0:16「差し伸びてきた手」
Aメロ。手技が主。さっそく、阿形の高速トゥエルに狐がビタで合わせていく様子が見られる。
0:22「わからずやに盾」
首の振りもピッタリ。
0:24「はい喜んであなた方のために」
次はステップを見せる。8分音符で刻む高速ステップ。
0:30「あと一歩を踏み出して」
ポイント(指差し)のまま1小節フリーズ。ここまでスピーディーな振りで見せてきたため、ここで止め絵を見せるのは英断だ。緩急がたまらない。ちなみにロックダンスにおけるポイントをする際は、背中を丸めるのが基本とのこと。ふたりともキレイに決まっていて美しい。
0:32「嫌なこと思い出して」
狐のみやや腰が入っているところがポッパー。
0:34「奈落音頭奏でろ」
向かい合わせで左右対称の振り。顔を見合わせる様子がかわいらしい。
0:38「もう一歩を踏み出して」
前蹴りをする際、阿形の靴下がメンカラの赤だということが確認できる。狐は黒だろうか。
0:39「嫌なこと思い出して」
狐が差し出した手を阿形がパンッと叩く。こういうちょっとしたやりとりにファンは弱い。
0:40「鳴らせ君の3~6マス」
ターン。ここで狐の軸がややぶれたため、プレミアム公開時筆者は「これはベストテイクではないな?」と感じた(後に一発撮りと知る)。
動画解説■サビ~ラスト
0:41「・・・ーーー・・・」~「ギリギリダンス」
サビ始まりの2小節が阿形ソロとなっている。サビで、というところが思い切りが良い。本職阿形の自信が見える。おそらくこの部分のみ、楽曲公式の振付を若干取り入れている。
狐は後ろを向き阿形を引き立てるが、「こいつを見な」と親指でクイクイ指しているところが良い。お面の紐を直す仕草も良い。この後ろ姿をきちんとフレームに入れている般若、さすがである。
0:45「踊れ」
阿行がノールックのまま指先で狐を呼び寄せると、狐は「いえいえ、みなさん阿形を見てくださいね」とばかりに阿形を指し示す。この関係性。
0:49「ギリギリダンス」
ここで狐は手を開いて特に人差し指を伸ばして踊っているのだが、これを見て筆者は「きっつん、それは高岩成二の手!」と気づいてしまった。これについては長くなりそうなのでまた別の機会に書こうと思う。
0:56「慣らせ君の病の街を」
2小節阿行ソロ。はつらつとしていて良い。ジャケットがはだけている瞬間があるのであぎょ担は要チェック。ここでもまた阿形を指さして引き立てている狐も良い。
0:59「隠せ笑える他人のオピニオン」
同じく狐ソロ。狐のロックダンスの魅力は、筋力でピタッと止めて形をキレイに残せる点だと感じる。ここも振付としてはロックダンスだが、阿形に合わせる必要がないため、狐の個性がよく出ている。
1:03「うっちゃれ正義の超人たちを」
ここから歌終わりまで、8分音符を全部刻んだ息もつかせぬ高速ステップで攻める。一瞬どちらかが走ってしまうタイミングもあり、まるでふたりで短距離走を競っているかのようだ。
1:09
Bメロと同様に、ポイントでフリーズ。緩急!
阿形の方が1小節早く動き始めるが、ここから阿形は何度も狐の方を見てくる。狐も自分の踊り出しのタイミングで目を合わせているが、阿形は狐よりも多く目線を送っているため阿形の片思い感が強い。これは同曲をライブで踊った際も同様の傾向がある。
1:22
ラスト、右手を胸に、左手を後ろに回し、左足を引いて深く一礼する。ここまで一貫して阿形のダンスで魅せてきた動画だったが、最後に狐の固有ポーズである胸に手を当てたお辞儀を入れたところが憎い。ただし、狐の礼は右手ではなく左手を胸に当てるため左右反対。
1:25
冒頭と同じ、背中合わせの立ち位置で終わる。これはこの動画だけの演出ではなく、ライブでもここまでが振付のうちにあるようだ。なぜこの立ち位置に戻るのかは不明だが、横を向いたまま阿形だけがサムズアップをして立ち去るところが良い。阿形の軽やかなキャラクター性が、この一瞬で感じられる。
ライブやTiktok動画の「はいよろこんで」との違い
先ほどから何度か触れているとおり、この演目はTiktokのために踊った動画もいくつか存在するほか、ライブでも披露されている。動画を紹介しつつ、Youtubeの踊ってみた動画と比較していこう。
2024年7月7日 Tiktok「オーメンズの日常」
この振付の初出。おかめ・狐・阿形のいわゆるダンスホール組の3人。端からゆるりと踊っているおかめはともかく、この時点では狐もそれほど阿行の高速ルーティンについていってない。ここから阿行に合わせにいったと思うと相当な努力だ。(もちろん、この動画はこの動画で各々の個性が出ていて良いものである)
2024年7月15日 Tiktok「おかめ【O-MENZ】」
オーメンズの日常の動画と同様、ダンスホール組でサビのみを踊る。こちらでは、先ほどの動画よりも全員がそれとなくノリを合わせているようにも見える。ラスト手前のターンはおかめが優雅に、狐がスマートに回っているのに対し、阿形は2周している。スピードキング。
2024年8月19日 Tiktok「オーメンズの日常」
時系列としては次に紹介するチッタの夏祭りの後。Aメロのみ。「スタイリッシュコンビ」との説明書きがあるが、ライブとは異なりクールに踊るさまは確かにスタイリッシュだ。
2024年8月12日 百戦錬磨-昇-チッタの夏祭り
ここが初出しかどうかは確認できないが、ワンコーラス丸ごと踊っている動画を拾えた範囲では最も古い。
Youtube版との大きな違いは「慣らせ君の病の街を」からのソロ部分。阿形はポップダンスを、狐は(Youtubeとは違う)ロックダンスをしている。互いの得意ジャンルを交換して踊っているところが粋だ。なぜこれを踊ってみたで残さなかったのか。ちなみにこの阿形のソロを煽る狐の仕草が、Youtubeよりもオラついているところがライブらしい。
また、ファンとしては冒頭「あなた方のため」で阿形がジャケットのボタンを外すシーン、狐が「うっちゃれ正義の超人たちを」でジャケットの前身頃をつまんでヒラヒラさせるシーンが見どころだ。
2024年11月8日 AREAROCK凱旋フリーライブ イオンタウン成田富里
個人的にはこれがベストアクトではないかと思う。ツアーを終えたばかりで脂が乗った状態でのダンスはやはりキレが違う。ひとつ前のチッタの動画と比較しても、さらにシンクロ率が上がっているように感じる。そして、これはチッタの動画も同様だが、O-MENZは踊ってみた動画よりもライブのパフォーマンスの方が圧倒的に質が高い。やはり客目があった方がダンサーとしてテンションが上がるものなのだろう。
さて、冒頭だが、ふたりの距離が非常に近い。交互にゆらゆらと踊るルーティンはまるで絡みあうかのようだ。狐が阿形の肩に手を掛ける場面では、顔を覗き込めるほどの近さにいる。
この時の衣装は、ツアー用に作製された未来衣装、サイバー衣装などと呼ばれている服だ。ジャケット着用時よりも腕の動きがはっきりと見えるため、ふたりのテクニカルさをより繊細に感じることができる。
ソロ部分はチッタとはまた違う振りになっているが、やはり互いの得意ジャンルを交換している。
そして最後に背中合わせに立った際、阿形は投げキッスをし、狐は手のひらを上に向けて指で歓声を煽っている。ここまでカメラに収めてくれたスタッフに感謝しかない。
まとめ~宇宙組は太陽と月
華やかに駆け抜ける阿形と、それに影武者のように寄り添う狐。踊っているだけの1分31秒の動画から、ふたりの関係性まで透けて見えてくるような気がした。
狐と阿形のコンビを通称「宇宙組」と呼ぶ。踊れば稲妻ロッキンボーイな阿形だが、しゃべり出すと悪ガキ丸出しの男子高校生のような、誰にも止められないキャラクターをしている。そして普段はクールな敬語キャラを崩さない狐も、阿形としゃべると様子のおかしい天然猪突猛進キャラが顔を出してしまうのだ。その暴走ぶりにはリーダー般若も手を焼いているらしく、「ふたりでしゃべっていると宇宙」ということで「宇宙組」と名付けられたらしい。
なんでも、ふたりは10年来の付き合いなのだそうだ。それならば、息の合ったダンスにも合点がいく。
明るく熱く照らす太陽のような阿形と、静かなまなざしで見つめる月のような狐。ふたりが巡る宇宙には、まだ見たこともない景色が広がっているに違いない。その景色が見たいから、これからもふたりの背中を追っていきたいと思う。果たして、追いついていけるだろうか。